あなたの“推しアリ“がきっと見つかる! 「アリハンドブック増補改訂第2版」の楽しみ方
「アリ」という虫を知らない人はいないと思います。教科書にも出てくるし,キャラクターのモチーフになることも多いし,アリをテーマにした物語や映像作品も少なくありません。
だいたいの人がもつアリのイメージは「黒くて,小さくて,たくさんいる」でしょう。でもアリの世界は驚くほど多様です。そんなアリの世界の扉を開けてくれるのが『アリハンドブック』です。”小さなアリを大きく見せる”をコンセプトにしたこの本は,たくさんの支持を受け「初版」→「増補改訂版」→「増補改訂2版」と刷を重ねるたびにどんどんパワーアップしました。ここでは最新の増補改訂2版の見どころを紹介していきましょう。
見どころ①観察と撮影のノウハウを惜しみなく公開
今回の改訂では旧版より24ページも増えているのですが,その大半を占めるのが観察のノウハウを伝える「アリを探す」,撮影テクニックを紹介する「アリを撮影する」の2コ—ナーです。
図鑑は種類を見分ける(識別する)ことが主な使い道ですが,識別したい・観察したいアリを探すのにもコツがいります。個々の解説の【分布】や【生態】から調べるのも手ですが,「アリを探す」のコーナーでは,「花の上を探してみよう」とか「餌でおびき寄せてみよう」など,解説担当の寺山さんがいろいろな種類のアリを見るための使えるノウハウをまとめて紹介しているので,観察の前にまず読んで欲しいページです。
また,この本でよく聞く読者の声が「どうやって撮影しているの?」です。確かに数mmしかないような極小のアリでも,載っている写真は顔や脚の構造までしっかり見えるくらいの高解像です。近年画質が向上しているスマートフォンでも,さすがにアリサイズの撮影は苦手とされます。「アリを撮影する」では,多くの本に生態写真を提供し,数々の受賞歴をもつ写真担当の久保田さんの撮影テクニックを機材写真付きで紹介しています。簡単に真似できるものではないかもしれませんが,撮影現場の裏側を見られるのはなかなか興味深いものです。
見どころ②魅力を増した生態写真
今回の改訂では,50点以上の生態写真を差し替えました。掲載しているアリは約80種ですから,半分以上の種で写真が新しくなっていて,旧版を知っている人でも「あれ?この写真新しくなったぞ」とすぐわかるくらいです。撮影機材が進化して,よりクリアな写真が撮れるようになったことも確かですが,それ以上に,2人の著者が日々の膨大な観察経験を情報交換し,トライ&エラーをくり返してはじめて,アリのいきいきとした姿を撮影できたという,観察技術の向上のほうが大切なポイントです。図鑑なので識別のための写真という面もありますが,巣で子育てに励んだり,他種のアリと争ったり,食物を探したり,アリのユニークな生態の一部を切り取った,アリの生活写真という面でもぜひ注目してほしいです。
見どころ③アリの“最新情報”もフォロー
ヒアリパニックが記憶に新しいですが,最近アリの関するニュースは外来生物に関するものが多いと感じます。アリのような小型の昆虫は,貿易に伴う物資の移動にまぎれ込みやすく,特に港湾地域やその周辺で外来アリが見つかるニュースはよく聞きます。ただ,外来アリはすべてが定着して爆発的に増えるのかというと,そうでもなく,人の手で根絶されたり,在来アリとの競合で衰退するなど,侵入した地域の状況によってその運命はさまざまです。このため,アリに限らず外来生物の情報はより新しく,かつ正確なものが求められます。
今回の改訂でも,新しく外来アリとして日本への侵入が確認された3種に加え,ヒアリやアカカミアリ,アルゼンチンアリといったすでに入った外来アリについても,分布域などの情報をアップデートしています。外来アリの定着を防ぐには,在来アリが多様であることが大事だといいます。身の回りにどんなアリがいるかを知っておけば,外来アリの存在にいち早く気づくことにつながります。
ふだんの生活の中で,アリを意識することはほとんどないかもしれません。でも私たちの足下では,実に多様なアリの世界が広がっています。「黒くて,小さくて,たくさんいる」だけじゃないアリの世界へ,『アリハンドブック』を持って出かけてみませんか?
3月15日(金)19:00からオンライン講座を開催!
ハンドブックの著者の2名による対談が実現。アリ観察のおもしろさや,アリを中心とした昆虫撮影のノウハウを紹介します。
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