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第3回 フン・食べあと・ケモノ道

発売以来、高い評価を得てきた『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(熊谷さとし:著/安田守:写真)が、増補改訂版となって1月下旬に刊行されます。ムササビやニホンカワウソ、ツシマヤマネコの情報が追加され(8ページ増)、貴重な生態写真も複数種で刷新しました。
「哺乳類のフィールドサイン?」という方の興味・関心・疑問に応えるため、ブンイチnoteでは本書の巻頭部分を一部抜粋し、3回にわたって公開します。第3回では、「フンや食痕、ケモノ道、ねぐらと巣」を紹介します。

フン

フンはどんな場所にあるか?という基準はあまりなく、林道、ケモノ道、水辺、やぶ、餌場を見て回れば目につくことが多い。
この本では、典型例と特徴的なフンを紹介しているが、野生動物も人間と同じで、季節や食べ物、体調によってフンの形や色はさまざまだ。とくに雑食性の動物のフンには、これといった決め手がない。
そのため、まず大きさや色、形から候補を絞り、さらに、内容物やニオイ、一緒に見つかる足跡など他のフィールドサインも考慮して、推定する必要がある。

ためフン。家族で利用するタヌキのためフン場(写真)が有名だが、
同じ個体が決まった場所でフンをして、ためフン状になる場合も指す。
アナグマ、イノシシ、カモシカなど。

食痕

動物食の動物の場合、食痕そのものが残りにくく、また、残っていても食痕からだけでは、持ち主の特定が難しい場合が多い。それに比べて植物食の動物は、種の特定につながる特徴的な食痕がいくつかある。また、残された食痕から植物の種類や部位がわかると、持ち主の重要な手がかりになる。

ニホンリスがオニグルミの果実を食べた痕。
殻が 2つにわかれ、合わせ目沿いには溝状のかじった痕が残る
ドブネズミは先端からかじって穴を空ける
ムササビは松ぼっくりの鱗片をはがしながら種子を食べるので、軸が残ってエビフライ形になる。ニホンリスやタイワンリス、クマネズミも似たような食痕を残す。

ケモノ道

野生動物が頻繁に通る道のことで、やぶの中に踏み固められた道が続いている。ケモノ道は腰をかがめ、彼らの目線になって探すのがコツだ。野生動物は林道や登山道、ハイキングコースも利用するので、道脇を探索すると、ケモノ道が見つかる。

降雪直後のケモノ道

ねぐらと巣

地面に掘られた穴、樹洞、岩の割れ目などさまざまだ。動物はいくつかの休み場をもち、それを順番に渡り歩きながら利用することもあり、そういう場所を「ねぐら」と呼ぶ。巣とは、基本的に「繁殖・子育て」をする場所で、ねぐらや休み場とは構造的に違っていたり、見つけにくい場所にある。

横長のアナグマ(左)と、縦長 のキツネ(右)の巣穴。出入り 口は体形に似る


『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド 増補改訂版』(熊谷さとし:著/安田守:写真)では、日本の森や里山で観察できる35種の野生動物を取り上げ、足跡や食べあと、フン、ケモノ道などのフィールドサインを掲載。フィールドサインの読み取り方や持ち主にたどりつく方法を紹介します。
哺乳類のフィールドサインについてより詳しく知りたくなった方は、ぜひ手に取って図鑑ページをご覧ください。

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