見出し画像

図鑑でもハウツー本でもない、野鳥愛にあふれた『野鳥ノート』ができるまで

野鳥が愛しくなる、『ココロさえずる 野鳥ノート』ができるまで


こんにちは。2024年4月に発売された書籍『ココロさえずる 野鳥ノート』の編集を担当した今井悠と申します。

みなさん、野鳥は好きですか?
「そこまで詳しくはないけど、好き!」
「野鳥を見かけると、つい観察しちゃう」
そんな方がいたらぜひこの記事を読んでみてほしいです!

なぜなら、私もそう思ってこの本を企画したから……。

図鑑でもなく、撮影や観察のハウツー本でもない。でも、そのいいとこ取りをした書籍がこれから紹介する『ココロさえずる 野鳥ノート』です。
イラストを眺めるだけでも楽しいし、誰かのまとめノートを読むみたいに、鳥のおもしろい行動やバードウォッチングあるあるがわかる……そして何より鳥への愛にあふれている! 

そんな本がどうやって作られたのか? をかいつまんでお話しながら、「野鳥ノート」の内容をご紹介したいと思います。

発売から1週間で即重版となりました!

衝撃的な野鳥のイラストとの出会い

2022年のある日、Xのタイムラインを見ているとかわいい鳥のイラストが目に飛び込んできました。

野鳥のまとめ画像:キビタキ(画像著作:mililie)
野鳥のまとめ画像:メジロ(画像著作:mililie)

カ、カワイイ……! そして美しい……!さらに、初心者でもわかりやすい、端的な解説がついている。私は、ひとめ見てこのイラストに惚れしてしまったのでした。

ぜひ、書籍にしたい!

イラストの野鳥まとめ画像を更新している「mililie(ミリリー)」さんというアカウントを追っていくと、じつはイラストレーターのYUKI(ユウキ)さんとギタリストの中嶌真平さんのユニットで活動しているご夫婦だと判明。さらにブログを覗いてみると、野鳥観察の様子を写真でたくさんアップされているだけでなく、イラストよりさらに詳しい情報を文章で掲載しています。また、野鳥の生息環境である森林や干潟の状況など、野鳥に関わる自然環境についても熱心に調べられており、このお二人は野鳥(と自然)への愛がとんでもなく深い……! と確信。

善は急げで、さっそくmililieさんのアカウントにDMを送ってみました。「他の出版社からもう声がかかっているかもしれない。でも、ぜひ担当して、このすっごくかわいい鳥のイラストを本にしてみたい!」、「私のような初心者でもとっつきやすく、眺めて楽しめる本ができるに違いない」
そんな思いでコンタクトをとり、翌月には会社で企画書を提出。そうして企画が通り、出版に向けて制作を進めることになりました。

一番最初の紙面案。写真を入れる構成になっていました

しかし! 最初に直面したのは、SNSでの表現そのままに書籍にするのは難しい、ということ。
本というのは開いたときに横長になりますが、SNS用に描かれた画像は真四角。この構成のままだとイマイチ紙の判型に合いません。それに、初期と最近のものでは絵柄が違ったり、手書き文字が多かったり小さかったりして見にくい箇所もあるので、適宜描きかえる必要もあります。

さらに、野鳥のかわいさや実用的な要素を紹介するのはもちろん必要なことですが、それらを楽しむだけでなく、野鳥の生息環境や未来に意識を向けるきっかけの本にもなってほしい……。そんな思いを、自然好きな著者のお二人と私は持っていました。でも、そういった要素入れすぎると、逆に本を楽しんで読むというより、お勉強っぽくなるかも? うーん……。

そうやって、この本のコンセプトをどうするのか? 何に軸を据えるのか? 構成はどうする? といった試行錯誤が続き、長いときは6時間も話し合ったこともありました。

「ノート風」と、「知って、見つけて、愛おしい」をコンセプトに!

いろいろな議論を経て、三人が出したこの本の軸は、「ノート風にする」「知って、見つけて、愛おしい を軸にする」ということ。
まず、「ノート風」というのは、もともとの発端である「野鳥まとめ画像」が手書きの文字で書かれていたことから、ノートのような体裁にすれば本自体のデザインとしてもかわいいものになるのでは? ということで意見が一致しました。

ノート風の罫線を下地に敷き、右上にはチェックボックス風のあしらいもつけています(じつは絶滅危惧の種類のボックスになっています!)

そして、「知って、見つけて、愛おしい」。
野鳥はまず「名前を知る」「どんな鳥か知る」ことが楽しい生き物です。種数はある程度確保して実用性を保ちつつ、他の本には載っていないバードウォッチングあるあるやかわいい鳥のしぐさや行動などが載っているといいよね、初心者の人と会ったときに同じ目線で話すような書き方だときっと読みやすいよね、という話をしました。
スズメのページ例でいうと、まず左ページで「どんな鳥なのか?」という基本情報が、イラストと短い文章ですぐにわかるようになっています。

「見つけて」の部分は、ただ見つけた種類を増やす、という鳥観察ではなく、一種一種の特徴的な部分やおもしろいところを見つけてほしい、という願いが込められています。これは各鳥の見開きページの右側に表れていて、他の本ではさらっとしか書かれていないような行動・鳴き声などのヒミツや、その鳥ならではのエピソードを、mililieさんの体験とともに描いてもらっています。

この「知って」「見つけて」を実際の野鳥観察で深めていく、あるいはこの本を眺めて疑似体験してもらうことで、野鳥そのものが「愛おしい」になっていく。それが図鑑やハウツー本では出しきれない、この本の良さなのではないか? というのが、野鳥ノートのコンセプトでもあり、読者の方に読んで感じてみてほしいところです。

で、どんな本なの?

『ココロさえずる 野鳥ノート』もくじ

ここまでちょっと長くなりましたが、具体的な本の構成もご紹介したいと思います。

まず、第1章。「野鳥を感じる日々の暮らし」と題して、最初の「我が家の窓から見える鳥 一年を野鳥と過ごす」のパートでは、スズメやシジュウカラなど、家の窓からでも見えるようなごく身近な鳥から紹介していきます。
さらに、家から少し外に出た「わざわざ出かけて出会いたい野鳥たち」、「登山で出会う野鳥たち」というふうに、mililieさんの暮らしやライフスタイルのなかで見かける鳥を紹介していきます。

実際のmililieさんのおうちの窓から見える鳥たち!

一般的な図鑑では鳥を分類順(同じ仲間の鳥順)に並べたページ構成が多いのですが、野鳥ノートでは、みんなが知っている家のまわりの鳥からだんだん郊外の鳥に……という順番で紹介しているので、初心者の方にも「私の知っている鳥がいる!」と安心感をもって読み進めてもらえると思います。

第2章では、「知って見つけて愛おしい野鳥」と題して、著者のmililieさんが「初めて見たとき驚いた鳥」、「鳴き声が特徴的な鳥」、「おもしろい行動の鳥」、「夜のバードウォッチング」というようなテーマで、mililieさん厳選の推しの鳥を紹介していきます。

サンコウチョウ。書籍では2次元コードが掲載されていて鳴き声を聴くことができます!

そして第3章。ここでは1章・2章と少し違う、「人と野鳥の未来のために」という短い章になっており、絶滅が危惧されているコウノトリ・クロツラヘラサギ・コアジサシを例に、なぜ数を減らしたのか? 生息地にどんな問題があるのか? を知ってもらう章になっています。

コアジサシの生息地である、砂浜のような環境(裸地(らち))について解説し、いま行われている保全活動についても紹介しています。

野鳥はとっても可愛くておもしろくて魅力的! だからこそ、数を減らしている鳥や悪化している生息環境があることを知ってもらい、少しでも人間と野鳥の未来について考えてみてほしい……第3章は、そんな思いも込められている章です。

実際に見に行けなくても、ココロさえずる野鳥体験を!

最後に一つ、担当編集である私の話を少し……。
独身のころは休日に海や山に行って自然観察をしていた私ですが、子どもが生まれてからはまっっったく! 野外に行くことができず、せいぜい保育園の送り迎えで電線にとまった鳥を見るくらいの日々が続いていました。

ですが、担当した自分自身が『野鳥ノート』でいろんな鳥のイラストを眺めるうちに、外に行けなくてもまるで一緒に鳥を見て・知っていくような気分になり、

「ゴジュウカラは頭を下にして幹を降りれるのか。だったら、この前見たのはキバシリじゃなくてゴジュウカラだったんだな」、「河川敷でのこの声は、『ギョギョシ』の鳴き声がおもしろいって紹介されていたオオヨシキリかも!」

といったように、実際に見に行けなくても、見たことのある身近な鳥を思い出したり、偶然見かけたときの野鳥観察を楽しむことができるようになりました。

オオヨシキリの「ギョギョシ」のページ。やかましいくらいの盛大な鳴き声は、オスがメスに猛アピールするため!

いろいろな事情で、「野鳥を見てみたいけど実際に野外に行って観察するのはハードルが高い」という人も多いと思います。そんな方にも、ぜひこの本で「ココロさえずる」野鳥体験をしてみてほしいなと思っています。

書籍情報

『ココロさえずる 野鳥ノート』

各種書店、Amazon楽天ブックスヨドバシhonto などで好評発売中!
※電子版は 2024年6月17日(月)発売開始予定です

イベント情報


① 2024年 6月 9 日(日) 14:00 〜 15:30(サイン会含む)
湘南サイエンスカフェvol.3 『ココロさえずる野鳥ノート』刊行記念 mililieトーク

著者お二人の活動の背景にある、「日本画」や「自然観察」のお話を交えながら、野鳥ノートの内容について楽しくお話します! イラストレーターYUKIさんの貴重なクロッキーノートも見られます。 参加特典はオリジナル栞セット!

  • 参加方法:オンラインショップ(湘南 蔦屋書店 ヤフー店)にて、対象商品をご購入いただいたお客様がご参加いただけます。

  • 参加費:①イベント参加券(大人) 1,100円、②イベント参加券(小学生以下) 550円、③書籍付きイベント参加券 2,530円(『ココロさえずる野鳥ノート』1,980円+参加券550円)

  • 定員:30人

  • 会場:2号館2階 湘南T-SITEヨガスタジオ

  • 〒251-0043神奈川県藤沢市辻堂元町6丁目20番-1

  • 主催・お問合せ:湘南 蔦屋書店 0466-31-1510(代表)

  • 協力:文一総合出版

  • 登壇:mililie(YUKI、中嶌真平)

② 2024年 6 月 22 日(土) 15:00 〜 16:30
『ココロさえずる野鳥ノート』刊行記念mililieトークイベント「ココロさえずる野鳥トーク」

mililieのお二人の古巣でもある福岡でのトークイベントです。参加特典はスズメのポストカード! 配信でもご参加いただけます。

  • 参加方法:チケット購入ページよりお申し込み(ただいま準備中です)

  • 参加費:会場1,650円(配信1,100円)

  • 主催:本のあるところajiro

  • 会場:本のあるところajiro

  • 〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神3丁目6−8

  • チケット購入ページ

  • お問合せ:ajirobook@gmail.com(担当:田中)

  • 出演:mililie(YUKI、中嶌真平)

著者情報

・mililieホームページ
野鳥情報が満載! 読み応えたっぷりで、各種SNSでの発信や最新情報もこちらから確認できます。

・X:https://twitter.com/mililie_birds/
・Instagram:mililie.birds
・Youtube:https://www.youtube.com/@birdsmililie

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?