第10回 生きた心地もしないままに
第9回「地下世界へ潜るための心構え」でも述べたことだが、地下世界に分け入ってそこに住む生き物を探す調査は、地上での調査活動では到底考えられないような「死に直結する危険」と常に隣り合わせだ。複雑な立体構造の洞窟では、容易に方向感覚を失って遭難するおそれがある。何度か入ったことのある洞窟であっても、ふと「今自分がどっちの方向を向いているか」がわからなくなる瞬間というのがあって、ぞっとするものである。何しろ、ヘッドライトで照らしているとはいっても辺りは漆黒。自らの方向を定めるための