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コロナ禍の中、考えていたこと。及び『文具物語』PDF版の発行について

こんにちは。
「文具の本」だけをそろえる専門書店『文具物語』です。

このたび、オリジナル冊子『文具物語』を発行します。
「紙版」と「PDF版」の2種類です。
「紙版」は自店での販売(イベント出店時等)、PDF版は本屋さん・文具屋さんでお取り扱い頂く予定です。

※『文具物語』PDF版の仕入れをすぐにご検討いただける本屋さん・文具屋さんで、商品情報のみ必要な場合は、③⑤⑥の項目(お時間がありましたらも)のみご確認ください。

1.コロナ禍の中、考えていたこと

実は、5月6日の「文学フリマ」にも少し置かせていただく予定で『文具物語』発行のオリジナル冊子を作っていました。ですが、ご存知の通り「文学フリマ」は中止に。
ただ、手を止めてしまうのは悔しく、締切は変えずに制作を続けました。

ところが、冊子の制作中に、そして現在進行形で状況は大きく変わり――。

私は普段は編集の仕事をしているのですが、進行中の書籍の企画が複数、出版延期になるなど影響は非常に大きく・・・。
出版スケジュールの調整・関係者の皆さまへの状況説明等、「いつもの編集の仕事」ができない日々も増えていきました。

主に、街歩きのガイド書を多く出版しており、毎年暖かくなるこの時期は一番、読者さんに見ていただく機会も増えるのですが、当然のことながらこの状況下でガイド書は読者さんのニーズに合うわけがなく。

先行きが見えない中で「落ち着いたら、ぜひこの本を片手に街歩きを!」なんて、制作側の人間が軽く発信できるはずもなく。

「自粛生活の今、本が売れている!」とメディアで一緒くたに報道される度、大きなギャップに虚しくもなり。

そして、そんな中での休業要請。

苦渋の思いで休業される本屋さん、苦渋の思いで営業を続ける本屋さん。
自分が編集した本を売っていただくという行為それ自体に、命の危険が伴う状況。

一体、何をもって「不要不急」とされるのか。
教科書やドリルを扱っていないと不要なのか。

別に、万人に受け入れられ、必要とされる本を作りたいとも思わない。
本屋さんに行って、何か特別な体験をしたいとも思っていない。

ただ生きるために本を作って、生きていたいから本屋さんに行くのに、その日々の「生」が不要というのか。
自分が唯一、読者さんとの繋がりを持てる場所は、そこしかないのに?


私でさえ、ここ数か月の間、歯を磨いている時も、食事をしている時も、お風呂に入る時も、寝る時も、歩いている時も、人と話している時も、そして本を編集している時も。
ず―――っと、なにかモヤモヤしたものを抱えながら呼吸していた気がしますので、皆さまに至っては一体いかばかりか……と思います。

2.PDF版を販売する目的

そのような中で、『文具物語』発行のオリジナル冊子を作っていたわけで、ただ、そのような状況だからこそ、この冊子をなんだか「自分の店だけで売って、終わり」にはしたくないな・・・という思いが強くなり(もともと、『文具物語』限定で販売する予定でした)。

できれば、何か少しでも助けになるようなこと。
たとえば日頃、お世話になっている本屋さんや文具屋さんのご活動に生かせないだろうか、と考えるようになりました。

とはいえ、私個人ができることは本当に微力で、「助けになりたい」というのもおこがましいというか、相応しくないように思えて。ただの自己満足に過ぎない行為なのでは・・・と、とても悩みました。

ですが、「何もやらないでモヤモヤするよりは、自己満足でもやろう」という結論に至り、今、こうしてnoteを書いているところです。

緊急事態宣言によってオンラインショップを始める本屋さんが増えた中、「オリジナル冊子を生かして今すぐできること」として考えたのは、自店で販売する前に、先行発売としてPDF版を他のお店でお取り扱いいただくことでした。
仕入れの条件面についても、色々考えました(後述します)。

ただ、私は「紙派」の人間で、香りや手触り、ページから溢れ出てくる制作者の思いが感じづらいPDFデータというのは、どうしても無機質なモノののように思えて、個人的には商品として魅力を感じないのも事実で。。。

そこで、そのまま読めるPDFデータだけではなく、読者さんがご自身で台割(ページ全体の構成)を見ながら印刷・製本にチャレンジできるPDFデータも同封し、さらに本冊子の「制作の手順」を簡単にご紹介する特典をつけることにしました。

これは、「 もっと本を身近に感じてほしい」「 本や本づくりに興味を持つ人が増えてほしい」という私の思いを乗せたものです。

『文具物語』の活動にご興味を持っていただく方の中には、「文房具は好きだけど、本はそこまで読まない」という声も多いと思います。そういう方にこそ、ぜひご覧になっていただけると嬉しいです。

そして、『文具物語』オリジナル冊子のPDF版にご興味を持っていただき、本屋さんのオンラインショップをご覧になった方には、その本屋さんで紹介されている他の本の情報にも目を通して、ぜひ気になるものがあればご購入を検討いただきたいのです。

さらには、いずれその本屋さんの店舗に足を運んで、オンラインでは味わえない本との出合いを体感していただきたいです。

『文具物語』のPDF版を販売する最大の目的は、そこにあります。

3.オリジナル冊子の概要(紙版・PDF版共通)

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● 内容
鉛筆、ノート、はさみ、万年筆etc.
そこにあるのは、ただ一つのちっぽけな文具だけど、その文具には持ち主の想いやストーリーがあるはず。
そんな内に秘められている「文具物語」を、様々なご職業の方に執筆・イラストを描いていただいています。

● Vol.01の執筆者(五十音順)

・網代幸介/わたしの愛用文具。
画家。国内外の展示で作品を発表し、物語のある空想世界を表現。
2018年に絵本『サーベルふじん』小学館を発行。

・生田目泰孝/ニワトリとクレヨン、髪とハサミ。
美容師。東京・下北沢で『文学堂美容室retri(レトリ)』を経営。
好きな作家さんは森見登美彦・森博嗣・有川浩など。

・落合 博/未来のノート。
本屋『Readin' Writin’BOOKSTORE』店主兼従業員。
新聞社勤務を経て2017年4月23日、田原町駅近くに開業。

・金澤 大/ウイスキーの樽材でできたボールペン。
東京都台東区東上野にあるバー「Bar Bookshelff」店主。
青山・横浜・渋谷・栃木でのバーでの経験を経て、2019年5月開業する。

・北村ハルコ/わたしの愛用文具。
ほっこり系イラストレーター。書籍、グッズ、広告などに携わる。
バードウォッチングと食べることが好きで、時々ふらっと旅立ちます。

・田中典晶/鉛筆の消えない記憶。
広島県福山市の本屋『UNLEARN』店主。2020年1月に開業。
コロナで厳しい局面ですが、笑える日を取り戻すまで粘ろうと思います。

・真木あかり/かっこいいペンを探して。
占い師。学習院大学卒業後、フリーライターなどを経て占いの道に。
著書に『2020年上半期 12星座別あなたの運勢』幻冬舎など。

・ハヤテノコウジ/ハヤテノ・シネマ文具。
IT系会社員とイラストレーターのパラレルキャリア。
独自のスケッチジャーナル手法で、ワークショップや講師等で活躍中。

冊子のデザインは、モ・ベターデザインの中村 健さんにお願いしました。
『文具物語』のロゴデザインも中村さんに作っていただいたものです。

4.紙版について

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● サイズ:文庫サイズ(B6)、44頁、4C+1C
● 価格:800円(税込880円)

糸綴じ・手製本。ロゴ入りの封筒に入れてクリップで留めています。
『文具物語』限定で6月から販売開始予定。

● 紙版オリジナルカバー
PDF版とは異なるカバーデザイン。
チェック柄の凹凸の手触りが楽しめる紙を使っています。

● 中面の紙
クラフトペーパーや色上質など、様々な色・種類の紙を使用。
色・手触りの違いを楽しむことができます。

● 手製本&糸綴じ
1つひとつ、糸で手製本しています。

● ロゴ入り封筒&クリップ付き
本冊子をロゴ入りのオリジナル封筒に入れて、クリップで留めています。

● 店主による「月報」を同封
本冊子の制作について、つらつらと書き綴った店主の「月報」を同封。

5.PDF版について

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● サイズ:約31.1MB
● 価格:300円(税込330円)

PDF版だけのスペシャルな特典をつけて、各本屋さんにて先行販売。
PDF版は、『文具物語』では販売しません。

● PDF版オリジナルカバー
紙版とは異なるカバーデザインです。

● PDF(2種類)
1. read……タブレットなどで、そのまま読む場合はこちらを。
2. print……ご自身で印刷・製本にチャレンジ!という場合はこちらを。

● 特典(2種類・各1頁)
1. 制作の手順……本冊子の作り方をざっくり紹介。
2. ページの組み方……PDF「print」を使って製本する際にご覧下さいませ。

6.仕入れをご検討の皆さまへ

● 仕入れ価格:300円(税込330円)
一度、定価でPDFをご購入いただきます。
以降は何冊、販売いただいても支払いは発生しません。
例)1冊販売=利益0円、2冊販売=利益330円(仕入値50%)、3冊販売=利益660円(仕入値33.3%)

● 仕入れ方法:
お手数ですが、下記メールにご連絡いただけると幸いです。
ご返信メールに、データのURLをご連絡します。

メール:bungumonogatari@gmail.com

※PDF版は、「文具物語」では販売いたしません。
※BASE(シークレット・オンラインショップ)からご購入いただく形となります。
※BASEの商品情報および画像は、貴店オンラインショップの商品情報にも、ご自由にお使いいただければと存じます。
※販売価格は、300円(税込330円)の固定でお願いします。
※中身を確認してから検討したいという場合も、ぜひご連絡いただければと思います。

7.最後に

「コロナ禍の中、考えていたこと」で、つらつらと書いてしまいましたが、これだけモノの価値観が問われ、労力をかけてやって頂くことに危険を伴う今の状況において、「編集の仕事」に限ってすぐにできることと言えば、自分が編集している・これから編集しようと考えている本について、その存在価値=出版する意義を今一度よく考えること、必要とあらば必ず軌道修正すること、としか今は言えません。

大なり小なり、あらゆることにおいて葛藤しない日がない中で、この葛藤とモヤモヤの中で生まれる感情や思い、そして違和感を本づくりに生かすことが、私にできることだと信じています。