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コミバスでお風呂へ


久々に家族で市内のお風呂屋にコミバスで出かけた敦一家。スマホでバスの時間を調べていたら、9時46分と出ていたので、慌てて息子を起こした。「後15分で行ける」「眠いし、無理無理」と言われ、じっくり画面を見ていたら、逆方向だった。
かしわ台行きは、10時15分発だったが、その間に、実家からさつま芋や里芋を持ってきたりしたので、その対応におわれ11時46分発に変更した。昼の時間帯のコミバスは、ガラガラだった。

途中から、母と二人の娘の親子が乗車した。どこに行くのだろうかと気になった。終点のかしわ台駅は、風呂屋の近くにある。何も持っていない親子が向かった先は、ファッションセンター「しまむら」のようだった。まだ小学生らしい女の子は、チエックのショートパンツにトレーナーを着ていた。中学生らしい女の子は、ジーンズにレース襟のブラウスの上に、白いニットを着ていた。白系でまとめたコーディネートをしていた。親子が統一感のあるおしゃれな感じだ。何故か、商売柄、目で追ってしまう。

「おふろの王様」は、スーパーと隣接している。ATMでお金を下ろして、お風呂屋に向かった。「返ってくるのに、百円玉を入れるの面倒臭い」「鍵を持っていってしまうお客さんが多いからじゃない」と瑠璃子が正論を言っている。専用のカードを使えば、割引になるので、カードを差し込んで、大人ボタンを押して、3名のボタンがお釣りの受け口の上にあるのでそれを押した。まだ、他にもカードがあある。貯めると一回タダになるスタンプカードがある。「合計二枚のカードになるので、財布がパンパンになんだよ。お札がパンパンなら嬉しいけど」とくだらない冗談を誰も聞いていないままお風呂のある更衣室に向かった。

ロッカーでまた100円玉を入れる。返ってくるが、キャシュレスの時代に小銭がない客も多く往生する。着替えが終わり、天然温泉、人工温泉、壺湯、ねころびの湯、壺湯、ジェットバス、薬草スチームサウナなど何種類かの湯船がある。聡のお気に入りはドライな高温サウナと炭酸泉の天然温泉だ。特に、炭酸泉はぬる湯で長々と入れるので人気がある。それだけに混んでいるので閉口して仕舞う。

炭酸泉を初めて知ったのは、千葉の保田漁協直営の「ばんやの湯」だった。息子が、まだ小学3年生の頃だから、だいぶ前だ。久里浜からフェリーで金谷に着く。金谷の回転寿司で英気を養ってから、南下して行くと「ばんやの湯」がある。今は、漁港直営の食堂の方が有名になってしまった。温泉でなく、敦は銭湯なのが気に入っている。高濃度の炭酸泉は、関東ではここでしか体感できない。「千葉は、鴨川など温泉の宝庫なのだが、箱根のようなブランド力に欠けている。我々、温泉好きにとっては、良質な温泉に入れて都合がいいけどね」「そう言えば、鴨川の旅館に飛び入りで泊まったね。熱めの温泉が気持ち良かった。忘れられない温泉かも。期待しない分、衝撃的だった」と瑠璃子も絶賛するほどだ。

息子も炭酸泉が気に入ったようだ。ここの施設には、食堂がある。自販機にカードを入れて、生ビールのボタンを2個押した。まだ、瑠璃子が風呂から上げっていないので、先に乾杯をするためだ。揃ったところで、お昼にした。「きのこハンバーグ定食」を瑠璃子、「激辛もやし味噌ラーメン」を息子、「塩ダレキャベツ」を敦が注文した。瑠璃子は、「シークワサーソーダにするわ。百円だもの」とハイボールを追加した敦に当てるけのように笑って言った。

「次のバス何時なの」
「2時15分。次は、4時代かも」
「最悪、歩いて帰ってもいいよ」と飲み足らない息子が言った。
「30分しかないからな」
料理が出来たという知らせのブザーがなった。
一斉に食べ始めた。一向に食べ進まない息子は、辛い、辛いと悲鳴をあげている。
「ファミリー向けの食堂とたかを括っていたのが、甘かった。本当の激辛を出して来たよ。それでも美味い。クセになるくらい美味い」
なんとか、食べ終わったので、残り10分でバスの停留場まで行くという忙しなさに全員が笑ってしまった。

バス停に例の母娘の親子が荷物を持ってバスを待っていた。ダイソーとしまむらの袋が目に入った。何にも会話をしないが、お互いに連帯感を感じてしまう。敦は不思議なものだと感じた。
日曜日の昼下がり、家族で過ごした時間がこんなに楽しいのかと改めて振り返る。遠くに行きことだけが、旅ではなく、近くても充実した時間を過ごせると確信を持った家族であった。「どんな時でも旅気分。」キャッチーな広告みたいだが、考え方次第で旅をしている。安い旅だ。


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