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お伊勢さんは伊勢丹じゃないよ

「そういえば、伊勢神宮に行ってないなかった」「私は、家族で行ったよ」たわいもない会話から、お伊勢さんの話が誕生した。もちろん、伊勢丹へ買い物に行く訳じゃない。謙也が神奈川初詣ランキングのサイトを覗いていたら、1位川崎大師 2位寒川神社 3位鶴岡八幡宮 4位大山阿夫利神社 5位伊勢山皇大神宮が出てきた。

伊勢山皇大神宮は、関東のお伊勢様と呼ばれる神社とコメントされていた。「何か神奈川にもお伊勢さんがあるらしいよ。行きたいんだけど」と謙也の発見でコロナ時期なので、近場で済ませられる伊勢参りに行くことになった。

フットワークの良さだけが特徴の夫婦だから、横浜の野毛近くにあることが判明。早速、週明けの月曜日に相模鉄道で横浜まで出て、根岸線に乗り換え、桜木町まで行った。JR根岸線を使ったのは、JRの方が東横線より安かったためだ。優子のアドバイスに従ってそうした。

「ちょうど、お昼だから、いつもの和食に行こうよ」と謙也は、横浜ジョイナスの地下2階にある創作和食の「えん」に行くことにした。いつものと言うのは、横浜に来ると必ずと行っていたというほど「えん」で会食していたためだ。特に、夜は上品な居酒屋になるので、好んで優子が行きたがった。

「本日の魚料理は、鮭のポン酢と豆腐、菜の花、芋、赤味噌の味噌汁、ご飯が付きます。味噌汁とご飯はお代わりできまうので」と背の高い美人の店員が勧めてくれた。どうしてマスクをしているのに美人かというと、謙也は澄んだ瞳で分かった。もちろん、謙也は味噌汁とご飯をお代わりした。

そして、食事時が終わって帰ろうと外に出た時、笑顔で佇む彼女が来て、「お忘れ物です」と椅子の近くに忘れたマスクを持って着てくれた。何かラブレターでも貰ったような感覚だ。高級店はサービスがいいと改めて思った謙也だった。

トイレに行っていた優子に笑顔で事情を説明すると「何をにやけているのよ」と見透かされてしまった。黒のロングスカートに黒のタートルネックとチェックのマフラーに濃紺のウールのロングコートが似合う優子は、ライカ製レンズのルミックスのカメラを首から下げている。スタイリシュだと思う。

店でほうじ茶を飲んだので、喉の渇きはなかったので、そのまま根岸線に乗って次の駅の桜木町で降りた。「伊勢山皇大神宮」は、天照大御神を御祭神とし、「関東のお伊勢さま」と親しまれる、明治3年(1870年)に国費を以て創建された神社だが、駅構内には、その名は見当たらなかった。

一番先頭車両に乗ってしまったので、紅葉坂まで行ったら、案内板が見つかった。初めて、そこで「伊勢山皇大神宮」の名前を見た。結構な坂道を登っていくとお伊勢さんがあった。大きな鳥居が出迎えてくれた。石段を登ると二つ目の鳥居を潜ると本殿があった。

スマホを片手にバシバシを写真を撮る謙也とコンパクトカメラを構える優子は、まるで林家パー子とぺー夫婦のように、夢中でシャッターを押していた。御朱印やお札、神社グッズを避け、おみくじだけ買うことにした。

今時のおみくじもおしゃれになっていて、八角形のデザインの中におみくじ、チャームなどが収納されているので驚いてしまった。「福銭」のチャームが付いてきた謙也。金運アップのご利益があるそうだ。「今年は、金運に恵まれているので、お金がざくざく入ってくる予感がする」と喜んでいると「私は、人間関係や愛情豊かな生活ができそうだわ」と優子がおみくじを見て言った。

愛情と金運を秤にかければ、愛情だろうが、二人でミックスすれば、最高の運勢だと思う。全てを神頼みにしてはならないが、あと押してくれていると思うと心つよくなる。人間は完璧じゃないから、神に祈る。「神様だって、こんなにコロナで人が参拝に来ないのだから、上がったりな筈」給付金が欲しいに決まっていると思ってしまった。それこそ神からの神頼み。

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