#天国までの百マイル #浅田次郎
事務所の方に薦められましたので、手に取ってみました。
現代小説はあまりよんでいなかったので、恥ずかしながら……本当に恥ずかしながら浅田次郎さんと赤川次郎さんを混同しておりました(ฅฅ*)💦ひゃー
この物語は1997年-1998年に連載されていて、1998年に単行本化されました。
私が7歳くらいの頃ですね。
物語の冒頭は草臥れた中年男性のモノローグ。
あぁ、ときめかない( ᷇࿀ ᷆ )笑
しかし私も良い歳なので主人公 城所安男の気苦労が少なからず分かるところもあり、ぐいぐいと感情移入させられてしまいました。
私もよく財政難に陥っていたので。笑
電車賃がなくて10キロ歩いたり
お給料の未払いで1文無しになったり
色々あったなぁ……
今だから笑えます。
ですが私は若くて(しかも見た目も良い!笑)女の子でしたので、城所安男ほどは切迫していなかったと思います。
不思議と自分が貧乏をしている分には辛くないんですよね。
けれど女房子供や、仕送りなければいけない両親がいたりして、自分の貧乏が第三者に影響を与えて不幸にしてしまうかも?という恐怖が1番辛いんですよね。
私はそう思います。
そして人間というのは意図的か否かは置いておいて、お世話になった事は忘れてしまうのです。
息を吸えるのは当たり前じゃないですか。
周りからの好意も同じくらい当たり前になっていって、感謝どころかデフォルト装備の様に思ってしまうんですよねぇ。
作中 安男が『俺が贈ったロレックス』とか『俺の金でいくら飲んだか忘れたか?』など成功していた時とは手のひらを返した態度をとる相手に対して内心で恨みを吐く描写がありました。
安男の気持ちも分かる。
相手の気持ちも分かる。
みんな みんな馬鹿じゃないので分かるもの。
だから手のひらを『返された』安男が、嫌な人間にだったんだろうな。というのが容易に創造出来て
でもしてあげたことには変わりないんだから!みんな酷いね!
と思う気持ちと
無意識に見下していたんだから陶然の報いだよ。
と思う気持ちが入り交じりました。
当時の豪遊の詳細がないのに
どんな飲み方をして
どんな目付きで
どんな接し方だったかが
相手の対応でここまで分かるなんて。
浅田次郎さんの人物描写が凄い。
・兄弟について
安男以外の兄弟3人はみんな成功しています。
そして連携がとれています。
安男という共通の敵がいるからでしょう。
そうでもないと繋がっている意味が無いもの。
貧乏な家庭から上流へと這い上がった人達からしたら、恥ずべき過去で思い出したくないことだから。
きっと出自に関してふんわり誤魔化してきたんだろうなぁ。という現在までの過程が想像に容易い兄弟達。
出自というコンプレックスはお母さんが亡くならない限り消せない。
冷酷で悲しい、酷いやつらだ!と思うけれど
そこまでのし上がった彼らの努力を思うと非難し切れないし
誰しも自分の人生に夢中で親の事など忘れるものです。
最後まで読み終わっても、兄弟達は変わりません。
その事が私を少し安心させました。
なぜなら急にみんなが駆け付けて励ましや感謝の言葉などを口にしようものなら台無しになってしまうと思ったからです。
彼等の美学をねじ曲げると思ったからです。
最後まで付き添った優しい安男と冷たい兄弟という薄っぺらい対比ではなく
これが現実なんだ。
こんな現実をどう生きていくか。
という最初に読み手に課せられたテーマが再び提示されたような気がしました。
この物語に悪い人は出てきません。
みんな生活があって家族があって人生がある。
この先を生き抜いていかなければならない。
という先の見えない恐怖とみんな みんな向き合って黙って戦っていますり
だから 嫌な奴だな。とは思っても非難は出来ないのです。
兄弟達について嫌悪を覚えているけど自分はどうだ?
と胸に手を当てて考えさせてくれました。
・マリについて
褒められた関係では無いけれど、世の中奥さん以外に癒しや救いを求めている男性は沢山います。
マリはそういう世間に後ろ指をさされる側の女性です。
ですが、うーん。
居る?こんな女性?
って思ってしまいました。
ファンタジーが過ぎると。
これは私が女性だから感じるのかしら?
そういう部分も否定は出来ません。
最初からずぅーっと安男を受け入れ癒し支えて励まし活力を与えて最後は幸せのために身を引くって……
男性からしたら女性の神秘性も相まって慈悲深く崇高な良い女なのでしょうが
(容姿を悪く描かれている分、余計に真の美しさとは。という純粋性を強調されているように思いました。)
都合良すぎません( ᷇࿀ ᷆ )???
分からない。
分からないのは私がまだ愛を知らないからなのか???
人間は幸福を求めると『無償で与える』という境地にたどり着くらしいです。
マリは聡明で思慮深い良い女です。
それは否定していません。
ですが、自分を愛していない男性と寝食を2年も!メンタルを病むことなく共に出来ますか?
私には出来ない………( ᷇࿀ ᷆ )
病むぅー……( ᷇࿀ ᷆ )
愛のカタチは人それぞれですし、私には無理でもマリには出来た。それだけの話なので否定をしているつもりではありませんが
私は器が狭いので『君の幸せというものは僕の隣のはずだよ』と言ってしまいます。笑
マリには幸せになって欲しい。
自分が身を引くことが幸せのカタチだと思わない日がいつか来て欲しい。
・英子について
離婚した後でもお義母の面倒をこっそり見てくれている出来たお嫁さん。
最初はマリ同様『こんな出来た女性いる!?』とおもいましたが、後半に出てくる英子とお義母さんのやり取りをみて感情移入してしまいました(単純)
私もお別れをした男性より、その男性のおばあちゃんと連絡が取れなくなるのが辛かった経験があるので。
離婚した女性が『母』と『女』の狭間で苦悩がなんとも言えない侘しくて。
色々と相談もしていたんだろうなぁ。
女としての幸せと母としての幸せを求めるのは、欲張りなんだろうか?
実際に自分がその立場になったらどういう決断をするんだろうか?
と重ね合わせてしまう部分が多いキャラクターでした。
・100マイルの道のり
タイトルが『天国までの百マイル』でしたので、百マイルの過程以外と短い!っと思ってしまいました🚗³₃
頼りないと思っていた内科の先生の熱い患者さんへの思い
思わず手渡してしまった現金
お店の人が汗だくになりながら励ましてくれた食堂
【生命の灯火】を前にしたら、誰もが『頑張れ!』とエールを送ってしまのかもしれませんね。
それが本能なのかも。
生命を繋ぐ100マイルの道のりは思っていたより短く感じたけれど(私が勝手にロードムービーの様なお話を想像していたので。笑)
安男とお母さんにとっては命懸けの100マイル
もう二度と会うこともない人達からの思いやりと励ましが
身内に頼らないと決め、孤立奮闘していた安男と
それを知っていたお母さんにとって
どんなに力になったことか!!!
生命に価値はない。
生きている。それだけで素晴らしい。
そんな生命の原点を思い返させてくれました。
地位や名誉、財産やフォロワーなどは、全てまやかし。
あなたが生きている。その事実は何者にも変え難い素晴らしいものなんだと
お母さんへの安男の思いを通して、私まで励まされました。
・お母さん
私はマザコンですし、家族が大好きなので
お母さんものは本当に、、、弱いです。
『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』でも感じましたが、母の愛に勝る愛ってあるのかしら???
無償の愛を惜しみなく注いで、子供たちを送り出しておきながら
老後は迷惑をかけないように1人で救急車を呼ぶなんて。
悲しすぎる。
でも心のどこかでお母さんというものはスーパーヒーローになっていて根拠の無い『お母さんなら大丈夫』という思い込みが
放ったらかしにしていても『大丈夫』という甘えに繋がってしまうのでしょう。
耳が痛い。
それらを全て分かっていて、受け入れて、1人で過ごしていたお母さんはどんな思いだったのだろう???
考えると余りに悲しい。胸が潰れてしまう。
子供を持ったら悲しいだけじゃない気持ちが分かるのかしら?
私にはまだ分かりませんが、お母さんにとっては子供たちが貧乏から脱却して【成功】した暮らしをしている事が何よりの幸せなのかもしれませんね。
それが自分のアイデンティティになっているのかも。
どうしてお母さんって
いつも【真理】を分かっていて
いつも導いてくれるのだろう?
本当に不思議。
だから何歳になっても居なくなられると怖い。
出来れば永遠に生きていて欲しい。
・まとめ
惨めな思いをしながら、頭を下げて生きているのは私だけでは無いのだというナゾの安心感と
そんな安男が一念発起してお母さんを助ける底力に勇気をわけて頂きました。
一瞬しかでてこないようなキャラクターでも、歩んできた人生が垣間見える描写は流石✧*。
ですので、この本に出てくる人物に捨てキャラなし!なのです!
絶対にどこか重ね合わせてしまう部分があります。
幸せとは
生き続けるとは
今日を生き抜くファイトと
明日を生き抜く希望に出会える
そんな本でした。
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