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タリーズでフラれた翌日の話

この記事はタリーズでフラれた話の続きになります。

突然泣き出すようになる

彼女にフラれたその日、私は落ち込むどころかむしろテンションがハイになっていました。タリーズを去り、一人になった後も、どこか非現実的な気分で車を運転し、帰路につきました。

自宅に車を停めた後、私はそのまま車の中でSNSのボイスチャットを始めました。匿名で、誰でも出入り可能な通話アプリとでも思ってください。
そこで「フラれたばかりの男」みたいなタイトルの部屋を作り、ことの顛末を話しました。とにかくすぐ、誰かと会話しなければならないと感じたのだと思います。
そこで話を聞いてくれる数人を相手に経緯を物語ると、徐々に非現実に過ぎなかった事実が重みを持ち始めました。

もう彼女と一緒に出かけることはないのだと。
彼女と予定していた色々なことは何一つ成し得ないまま、全ては終わったのだと。
彼女といて嬉しいと思うことは今後一生、二度と感じることがないのだと。

ボイスチャット中、「幸せになれるかもしれないと思ったのに」と自分の口から出た言葉に自分で悲しくなって、その時初めて涙が込み上げてくるのを感じました。とはいえその後他の人の話を聞いているうちに悲しみに打ちひしがれる暇もなく、チャットを数十分続け、それから眠りました。

翌朝、自分の人生で経験したことがないほどの鬱々とした気分を味わいました。
テンションが低いとか、やる気が湧かないとか、そういった次元ではない感覚でした。
人ひとりがギリギリ通れるかどうかの地下洞穴に身体を捩じ込み、暗闇の奥底に向かっている途中で、身体がぎゅっと狭い隙間にはさまって、前にも後ろにも進まなくなってしまったような感覚でした。(映画『127時間』的なシチュエーションを想像してください。)突飛に聞こえるかもしれませんが、遠回しな比喩ではないと思います。
別に今はまだ生命活動を続けていて、生きているけど、もう死んだようなものなんだという感覚。このまま何もしないでいると、本当に死んでしまうんじゃないかという恐怖に頭の中が支配されました。

ああ、やばい、何もしないでいると、死ぬかもしれない。

漠然としたそういう危機感で頭がいっぱいになったのです。
気を紛らわせたくて、すぐに色々なことに手をつけてみました。しかし、音楽を聞いても何も感じないし、YouTubeや映画やアニメを見ても何も感じない。この世界に生きている価値がどこにもない。
もちろん、自分自身にも価値がない。

仕事があるのでいつも通りに車に乗って運転していると、突然、あくびが出そうな感覚と、吐きそうな感覚を混ぜたような身体感覚がやってきました。最初それがなんなのか分からず、社内で吐きそうになったら、どうしよう?とダッシュボードの中にあるビニール袋のことなどを考えていたのですが、そのうち、ボロボロと涙が出てきて、嗚咽が止まらなくなりました。
泣きたい気分より先に身体感覚として涙が出ることがあるんだ、と初めての経験に他人事のように驚きながら、車の中でずっと泣きました。
会社に着くと切り替わったようにスッといつも通りの状態に戻りました。

ただ、完全に自分が精神的にアンコントローラブルな状態にあることは間違いなく、今はまだ平気かもしれないが、本当に引き返せないところまで壊れてしまう可能性を帯び始めたと思いました。
私は、仕事中にも関わらず、スマホで色々なことを調べました。
失恋後の回復の仕方とか、女性が別れたくなる理由とか、復縁の可能性とか、そんなことです。chatGPT4に精神的に回復する方法を尋ねたりもしました。

それからSNSで病んだ投稿をしまくり、私の数少ない知人などにLINEを送ったりしました。
さながら沈んでいく船の中でまだ空気があるところを探して船内を泳ぎ回るような様子であったと思います。

その後も運転中や、ふと一人になった瞬間、考え事をする瞬間に、発作的な涙が出ました。『容疑者xの献身』の堤真一のラストシーンくらい声を出して泣くこともありました。

少しずつ崩れ始めた精神がボロボロになっていく中で、別れた彼女に連絡しよう、という考えが思い浮かびました。

つづく

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