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『愛の不時着』でカタルシスを得た日々。


みなさん、おうち時間はどんな風にお過ごしですか?

わたしはNetflixの『愛の不時着』にハマりにハマり、沼にハマり、先週末に最終回を観終えたというのにまだロスから抜けられずにいる。これはお砂糖並に中毒性がすごい。梨泰院クラスにトッケビ・・・友達が前に進むために色んな韓国ドラマをオススメしてくれるが、未だに次のコンテンツに移れない。


最初は、なんかNetflixのオススメに出てくるなー程度で、積んドラマのひとつに過ぎなかった。けれど2月後半に配信されて以来、「今日の総合TOP10(日本)」に入り続け、今なお総合3位をキープしているんだからおどろき。

『愛の不時着』がどんなお話かざっくりとまとめると、これは現代朝鮮版ロミオとジュリエット。

ソウルの美人財閥令嬢がパラグライダーをしていたら、巨大タイフーンに巻き込まれてうっかりあっさり軍事境界線を越えてしまい北朝鮮の森に不時着、そこで北朝鮮のイケメンエリート将校と出会い、運命的な恋に落ちる・・・というなんとも奇想天外なお話です。

そんなこんなでツッコミどころ満載な設定なんだけれども、そんなの関係ねぇ!!!なほどにいいドラマなのだ。

不器用なふたりは次第に惹かれ合っていくけれど、なんせ休戦中の二国に暮らすふたり。一緒にいるだけで"違法"となってしまう。そんなふたり、また彼らを取り巻く愛すべき登場人物たちの運命に、涙、涙、涙。。。全16話あるうち、6話目くらいからほぼ涙垂れ流し状態だった。

『愛の不時着』がいかにこの時代に生まれるべくして生まれ、最高なドラマであるかという点については、わたしが拙筆でまとめるよりもメディア各所ですんばらしく分析されているのでそちらをご覧くださいっ。

『愛の不時着』が観る人の涙を誘うために、綿密に、ドラマティックに作り込まれていることにきっと間違いはないのだけれど(でも泣かなくたって全然いい)、このドラマがここまでわたしの体から水分を奪い去ったのには、もう一つ理由があったように思う。

大人になってから韓国ドラマはすっかり観なくなっていたけれど、はじめて韓国ドラマを観たのは、まだわたしが小学生のとき、まさに“冬ソナブーム”が起きたときだった。母と一緒に、「止めどきがわからないね!(キャハ)」といい、涙目&眠たい目をこすりながら次の話へ次の話へとビデオを進めた。

当時の趣味といえば、陸上、プリクラ、ピアノくらいだったわたしはソッコー「冬のソナタ ピアノ・ソロ完全保存版」を母に買ってもらい、リビングに置いてあるピアノで日夜エモい曲を弾きまくるという日々を送った。

わたしがピアノを弾くたび、母は「何度聴いてもいいわ~~」と喜んでくれた。(母が一番すきだったのは『イッチマ(忘れないで)』という曲だった)。

一方で、意識高い系の父は拉致問題への関心が高く、"朝鮮"のドラマに熱中する私たちを、やれやれとどこか冷ややかな目で見ていたと記憶している。

(わたしが大学で国際文化学を専攻するきっかけとなった原体験は、ここにあったように思う。連日、”日韓関係の悪化”や”北朝鮮による拉致問題”が報道される中、母と韓国のコンテンツを享受し「ヨン様最高」と言っている。エンタメの中ではこんなにも「すき」って気持ちは最強なのに、どうして小泉ソーリは難しそうな顔をしているの・・・と思っていた。)

だがしかし時は進み、わたしが大学生のとき、ミーのハーである母と、ロマンチスト大臣の父はあっけなくこの世を去ってしまった。

わたしは『愛の不時着』を観ながら、これは母と一緒に観たかった、そう思わずにはいられなかった。

なぜならわたしにとって、韓国ドラマとは、母と一緒に観るものだったから。

ヒョンビンがかっこよすぎてどうしようと、第五中隊がかわいすぎてやばいと、母とはしゃぎたかった。

父に、「すきな人同士が自由に結ばれる社会に、北朝鮮も早くなればいいね」と感想を言いたかった。

母はいうまでもなく、なんだかんだでラブコメとヒューマンドラマが大好きな父も、『愛の不時着』を一度観たらきっとハマって、母にバレないよう涙を堪えていたと思うのだ。

この環境下で、あの家で、ふたりで観ていたと思うのだ。

そしてzoomの使い方を教えて、分厚いパソコンにダウンロードしてもらって、あのシーンがどうのこうのと語り合いたかった。

日頃から信じていることだけれど、改めて、思う。

エンタメは誰かとの記憶を作るし、エンタメは、孤独を救う。

こんな風に心酔できるドラマがなかったら、このおこもりテレワーク期間を乗り切るのはもーっとしんどかっただろうなと本気で思う。

一日中閉ざされた空間でひとりカタカタ働いてシャッターを下ろした後に、愛と涙の物語を見ることは、まさにカタルシス以外の何物でもなかった。

カタルシス・・・舞台の上の出来事(特に悲劇)を見ることによってひきおこされる情緒の経験が、日ごろ心の中に鬱積(うっせき)している同種の情緒を解放し、それにより快感を得ること。浄化。

『愛の不時着』を観て、2020年は過去の母との幸せな時間を思い出したけれど、記憶はアップデートされつづける。

これからは韓国ドラマといえば、世界が不安定だった時に同じものを見て、感想を交わし、結局笑い合っていた女友達を思い出すんだと思う。

※ロス同士で名シーンを振り返ったのが今日の昼下がりでした。

STAYHOMEの状況下でイケイケドンドンなNetflixも、世界各国の映画業界が撮影できる状態でないので、コンテンツの枯渇を懸念しているという。

コンテンツだって、マスクや小麦と同様、無限にあるわけじゃない。

寂しさに負けちゃいそうな夜に、心をあったかく照らしてくれる『愛の不時着』があって本当によかった。

チャレンジングな題材をここまで大作に仕上げてくれた制作陣・キャストに心から感謝であります。コマウォヨ。


不安になるものよりも、希望をくれるものが見たいね。


ちなみに『愛の不時着』は主演の二人はさることながら、アカデミー賞受賞の『パラサイト』の半地下で暮らすあの人(チャン・ヘジン)やあの人(パク・ミョンフン)も出ています・・・!韓国ドラマに苦手意識がある人もだまされたと思ってぜひ!

それではひきつづき、すてきな週末を。



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