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怒りだって僕の大事な心だ

 みなさん最近怒ってますか?怒りだって大事な僕たちの感情なんです。

 僕が5年ほど前、元妻に追い詰められ、自殺未遂をし、ICUから退院して僕は終わらぬ仕事と、リハビリと、離婚協議の真っ最中だった。
 その日も遅くまで残業をして夜道の中、足を引きずってとぼとぼと帰った。季節は真冬で、外は大雨が降っていた。凍える寒さと、身が引き裂かれるような孤独感を感じていた。
 真っ暗で広い誰もいない家に帰り、雨に濡れた服を脱ぎ、給湯器のボタンを押し、お風呂でシャワーを出した。ノズルを回し、42度のお湯に設定ししばらく流し、そろそろいいか、と全身にシャワーを浴びた。

 「冷たいいいい!!」しばらくたったはずのシャワーからはなぜか氷水のような冷水が流れた。なんども手で温度を確かめたけれども、それでもお湯は出なかった。
 ふと気づいた。ガスの契約は元妻がしていたことを。そして契約を一方的に解除したのだ。真冬なのにガスは完全に止められていた(せめて一言いってほしかった)。
 僕はあきらめて冷水でシャワーを浴びることにした。銭湯を探そうかとも思ったが、外は大雨でもう真夜中だった。

 「寒い寒い寒い死ぬ!!」叫びながら僕は冷水シャワーを浴びた、心臓がバクバク音を立てていた。少しパニックになり、涙がでてきた。
 しかししばらくすると、だんだん寒さにも慣れてきて、ハイになってきて、急に悔しくなってきて、僕は全力で叫んだ。
「何をしたってんだよ!僕が!うああああああ!!」

 それまで怒りの感情はなかった。哀しみとか後悔とか孤独感とか。自分に向けた自傷的な感情ばかりだった。そこで初めて僕は大声を出した。真冬の冷水シャワーをきっかけに怒りの感情があらわになった。

 ひとしきり大声で叫んだあと(完全に近所迷惑でした)、だんだん笑いが込み上げてきた。だいぶイッちゃってたと思うけれど、僕はその時少し生きる気力を取り戻した。自分の気持ちに素直になれた。僕はそう、ずっとずっと悔しくてしょうがなかったんだ。元妻に、ブラックな職場に、理不尽な世の中に怒っていたのに、きっとそれをぐっと我慢していたんだ。

 僕はその日からほんの少しだけ元気になった。何かが解決したわけでもないけれど、僕は僕に素直になれた。前に進むことができた。

 怒りの感情って世間的には我慢しなきゃいけないもので、人を傷つけることの多い、粗野な感情だけれど、自分を守るための大切な感情なのだと思う。
 そしてその感情には逆境を跳ね飛ばす、強い生命力が宿っていると思う。(僕らのような大人しい人間は、怒らせる方が悪いことが多い、たまには思い知らせてやった方がいいと思う。)

 だからみなさんも怒りを感じたときは、素直に出してみましょう。カラオケに行って大声で歌ったり、公園で全力疾走したり、バッティングセンターで思いっきりバットを振ってみたり。死にそうになったらもういっそ職場でもどこでも大声を出してしまいましょう。死ぬよりましです。
 
怒っているあなたも大事なあなたの一部なんです。それにこんな理不尽な世の中だもの、怒っていいんです。
 そんな感情たちと共に、生きていきましょう。

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