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文の文 1

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文というハンドルネーム、さわむら蛍というペンネームで書いていた作文をブラッシュアップしてまとめています。
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#京都で会った人のこと

京都で会ったひとたちのこと 6

京都で会ったひとたちのこと 6

最終回

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クラス会は喫茶店を出て、解散になった。と、ここまで書いてなんだか浮かない気分になっている。続きの話もあるのに、なんだか書きたくない。

以前小学校の同窓会があったときはあんなにいっぱい書いたのに.今回はなぜこんなふうなんだろう、と考えた。

ともに過ごした時間の濃度が違うのだろうなと思う。

おばさんになればその場を盛り上げたり、笑いを取ったりすることはできるし、思いの深さ

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京都で会ったひとたちのこと 5

京都で会ったひとたちのこと 5

杜撰な計画といわれた所以は、そのあとの計画を全くしていないからだ。ホテルやレストランで会食だとか大広間で宴会とかいうふうなことを普通は用意すべきものなのだ。

そうはいっても呼びかけ人となったわたしと友人が一応ここで会食をっと算段していたホテルがあったのだが、そこが思いがけず廃業していて、ご破算になってしまったのだ。

そこで「無常ということ」をなんとなく感じてしまったわたしと友人は、計画しないで

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京都で会ったひとたちのこと 4

京都で会ったひとたちのこと 4

自己紹介をした。みな結婚しているので、苗字が変わっている。ありふれた名前、田中とか山田とか山本(ふたりもいた)だとかになった人もいれば、一族だけしかいないというレアな苗字のひともいた。

飾ることなく、卑下することもなく、ちょっと苦笑交じりに語られるそれぞれの言葉を、語られたことと語られないことを計りながら聞いた。

人生はいいことばかりではない、と知ってみればなんとなくわかってしまうこともある。

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京都で会ったひとたちのこと 3

京都で会ったひとたちのこと 3

つづき

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あたしは一応このたびのクラス会の呼びかけ人のひとりである。大学時代の友人ががんを病んだことを聞いて、生きて会えるうちに会っておくべきひとがまだいるなあと思ったからだ。

とはいえ当時の我らのクラスは、自慢にもならないのだけれど、なんともやる気のない、まとまりを欠いたクラスで、いつも何人かの小さなグループ単位でてんでに動いていたのだった。

だれかがなにかを呼びかけてもどうに

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京都で会ったひとたちのこと 2

京都で会ったひとたちのこと 2

つづき

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京都に帰るとタクシーの運転手さんとよく話す。

今日は女子大のクラス会に行くのだというと「そらもう、にぎやかでっしゃろな」と言われてしまう。

「なんでそんなにしゃべることがあんのやろ、とおもうくらい、ようしゃべりますなあ、おんなのひとは。おうたとたんにしゃべりだして、飯食うてしゃべって、コーヒー飲んでしゃべって、また場所変えてしゃべるんですなあ。昔のことやら今のことやら、

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京都で会ったひとたちのこと 1

京都で会ったひとたちのこと 1

東京在住のころ、女子大のクラス会に行ったおりとこと。

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京都駅はいつからかあたしにはよそよそしい場所になった。新しい駅舎はイベント会場のような顔をしてひとを迎えるような気がするのだ。

それはそれでよいのだし、それにもう古い駅舎のことを思い出そうとしてもなかなか浮かび上がってこないし、目の前のスカッと直線的にデザインされた新しい駅舎の空間に過ぎた日々を重ねることはできないのだけれど、

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