カラサキ・アユミ 連載「本を包む」 第3回 「同じ顔」
なんてギラついたカバーだろう。貪るように本を読む人々の表情に思わず視線が吸い込まれる。しかも描かれている全員が同じ顔……。
背には前の持ち主によってペンで小さく〝異邦人〟と書かれていた。本の名札(連載第2回「本の名札」をご覧ください)として長らくお役目を務めていたのだろう。日焼けによる色褪せ具合に年季が入っている。
このカバーには、過去の記憶を思い起こさせるのに十分なキーワードが揃っていた。燻したような茶色、競い合うように本を手に取る表情、似た顔つきの人々……。