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白色のコラージュ

アッサンブラージュ作品を作るアーティストといえば、ジョセフ・コーネルがいる。

アッサンブラージュは日用品や廃棄品などを寄せ集めて作る藝術作品で、小宇宙の形成する。
コーネルの小宇宙も、私は以前、大津市の美術館で現物を拝んだことがあるが、静かにその場に存在していた。
使われているものは、どこにでもあったもの、あるものである。然し、どこにでもあるものの中からフェイバリットを組み合わせて作品を作るのは、センス/感覚がものを言うのだろう。天性の仕事である。

日本人の芸術家、勝本みつるのアッサンブラージュ作品の美しさは『白』を多様しているからかもしれない。ジョセフ・コーネルとはまた異なるが、これもまた、一つの小宇宙である。

白は神聖な色であり、この上位には禁色、即ち紫が該当するが、何の汚れもない白は、不可侵の聖域である。
白に落ちた血の一滴は薔薇姫のように映えるが、然し、それは真紅の為ではなく、白色が彼女を胴上げしているからに他ならない。

白色があるからこそ世界は輝くのであって、これに対抗できるのは黒色しかない。白と黒の相克はそのまま宇宙の生誕にまで遡る。

白色、或いはミルク色、乳白色、そういったスゥイートな色は、私達を童心に立ち戻らせるし、心を穏やかにさせる。
勝本みつるのアッサンブラージュは淡い色合い、そして白色が多い。
白やピンクは女の子の色だ。そのような言葉は、今はうるさい世の中だから、わーきゃーと言われることも多いだろうが、それならば、白やピンクは美しい人の色だと言い換えたい。即ち、だから結局は女性たちの色であることに変わりない。美しい男性や、穏やかな男性にも似合いの、素敵な色だ。

そして、アッサンブラージュというものはどこまでも思い出に寄りかかっているように思える。日用品や廃棄されたものは、過去の思い出であり、それらが紡がれて、立体の思い出が立ち上がる。思い出の入れ物であり、トランクである。

思い出が淡いのは、それらが全て白やピンク、乳白色の穏やかさ、つまりはお父さんとお母さんとの色だからでもある。或いは、自分自身の、一番に可愛かった時代。

その愛らしかった時代を、この箱たちに触れていると、自然に思い出されてくる。その感情こそが本当の藝術であって、作品はそれを喚起させる媒介であり、装置でしかない。それを備えているものが、素晴らしい作品である。

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