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好きな小説、とその古書③ 人魚の嘆き


またまた谷崎潤一郎です。谷崎潤一郎は、ほんっとうに古書の種類が多い。
全部揃えるのに1000万くらいかかるんじゃないのって感じ。
例えば『春琴抄』の桐箱、例えば『細雪』の私家版、例えば、『刺青』や『悪魔』の胡蝶本。例えばこの表題の『人魚の嘆き』…。

『人魚の嘆き』は大正時代の谷崎作品で、比較的初期のものになります。
短編で、非常に読みやすい作品です。この頃の谷崎は耽美派、悪魔派で、書いている内容はどぎついですが、変態性はそこまでない。
『人魚の嘆き』は全ての享楽を経験してきた中国の貴公子が(私はハンターハンターのツェリードニヒ王子を脳内再生して読みます)、人魚に魅せられる物語です。美しい文章、美しい単語で構成されていて、わりかしすっと読める作品なのですが、これの古書がべらぼうに高いんです。

価格は15万円〜30万円くらいです。
春陽堂から大正6年(100年以上前!)発行しているこの本は、いくつかの版があるようで、それごとに価格が違ったり、微妙にデザインが異なるようです。全てのパターン入手している猛者もいることでしょう。
しかもこの本は、当時発禁処分にもされているようで、現代の目から見れば大したことはないのですが、当時はやはり破廉恥だったのでしょう。

併し、この本も大変美しい装丁です。
最近の文庫本で読むのもいいですが、このような装丁で読んでこそ、谷崎の描く耽美な悪魔的世界を堪能できるかもしれません。

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