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2024.03.04 トラック賃金問題 三橋貴明氏

なぜ「2024年問題」が起こったのか?〜未だかつてない物流業界の危機を引き起こした元凶 [ 三橋TV第829回 ]  2024.03.04

高家氏
早速ですが、先生、今回のテーマは?

三橋氏
はい、今日ね、前半ね、その「物流問題」「24年問題」含めてね。
後半はその「解決」として今「法律の審議」がなされてまして、すげえ長いのよ、法律名が。

高家氏
(法律名が)長いんですか?

三橋氏
長いんです、あの3行ぐらいになるんで、覚えようとしたけど無理だったから「物流法改正」ってことでですね、ちょっとそこのお話をしたいと思うんですけど。

高家氏
はい。

三橋氏
まぁ結局、その今の「物流の人手不足問題」、これ、どんどん進行化してんだよね、恐ろしいことに。

これ「運輸、郵便事務の従事者」の「有効求人倍率」なんですけども、元々は低くないよね?「2倍以上」だから。

つまり「求職者」1人に対して「求人」が「2個」ある。

高家氏
はい。

三橋氏
おいしいですね〜。

高家氏
うん。

三橋氏
でも(求職者が)来ないから、人が。

高家氏
はい。

三橋氏
だから、どんどん上がって、

「3.5」に達しようとしてるんですけども、「ここで(さらに)24年問題かよ」っていうことで、めちゃビビってるんですけども。

高家氏
うん、うん。

三橋氏
「なんでこんなことになったのか?」っての、
私、あのトラック業界と結構付き合いが深くて、で「講演してくれ」って頼まれてやってるんですけどね。
まぁ、これ中野さんがこないだ来た時も説明しましたけど、「規制の緩和」ってのが1個です。

高家氏
はい。

三橋氏
これね、「貨物自動運送事業者数の推移」なんです。

高家氏
はい。

三橋氏
元々「90年」の時は「4万車」ぐらいだったのね。ここで「規制の緩和」しました。

高家氏
うん、うん。

三橋氏
具体的には、その、そもそも「運送事業をやりたい」って言った場合は「免許制」だったんですよ、大変ですよね?

高家氏
うん。

三橋氏
「免許」を取らなくちゃいけないんですよ。あの「車の免許」じゃないからね。「事業免許」を取らなくてはいけなかったのが「認可制」になったの。

高家氏
うん。

三橋氏
はい。で、さらに「運賃」については それまで「完全規制」だったの。

高家氏
はい。

三橋氏
はい、あの「価格」というか「価格を、叩いて売る」とかできなかったんです。

高家氏
うんうん。え、「大体このぐらいね」って言われてるってことですか? 

三橋氏
はい。で、それはですね「自由に決めていいですよ」ってなったの。
でも、そん時は、確か「事前に届けてね」と、「いくらにしますよ」という、

高家氏
はい。

三橋氏
という制度に変わったんですね。
でも、それまで何しろ、あの政府が国交省、えっと「運省」かな、「運省」が決めてたのが、それが一応「自由」になったのね。

高家氏
うん。

三橋氏
はい、だから「安値の叩き売り」ができるようになった。

高家氏
うん、うん。

三橋氏
でも、一応あの「事前に申請」しなかないといけなかったんですけどね。
で、最後にあの 新規に参入する際は「トラック」が「20台」必要だったんですよ。

高家氏
前までは?

三橋氏
はい、前までは。すげえ 重いよね、これって考えてみたら。

高家氏
うん。

三橋氏
だって トラックって「1000万」ぐらいしますよね、最低でも。じゃあ「2億円」ですよ、だから。

高家氏
ほぅ。

三橋氏
うん。それで確かに「新規参入」がほとんどなかったんで、だからバブルが膨張して「需要」はあるんだけど「トラック業者」が「数が少ない」、そもそも。

高家氏
うん。

三橋氏
ということで、で「運賃が上がっていった」
「じゃあ、規制緩和だ」ってことになったんだけど、「規制緩和」した途端に「バブル崩壊」したんですよ。

高家氏
はい。

三橋氏
最悪のタイミングでした。

高家氏
うん、うん。

三橋氏
はい、で、規制緩和によって何が起きたかというと、ま、ここからですねブワ〜っと(運送会社の新規参入が)増えてきました

高家氏
新規参入が?

三橋氏
「4万」だったのが、「2 万」新規参入したの、(合計「6」万車)はい。
しかも、ほとんど「中小」でしょ?大きいとこ、入んないですよね。

高家氏
え、何台からオッケーになったんですか?

三橋氏
5台

高家氏
5台? おお、随分(「新規参入」)楽になりました?

三橋氏
になりました、になりました。
まぁ「5台」でも「5000万」ぐらいかかるから高いんだけど、それまで(20台 2億円)と比べたら全然楽ですよ。
で、さらに「小泉内閣」の時に「2003年」「規制緩和」が行われまして、

高家氏
はい。

三橋氏
それ、「運賃」については、あの、もちろん「自由」なんだけど、今度ね「事後届出制」になったんですよ。
これ、結構重要なんですよ?

高家氏
「事前」と「事後」どう違う?


三橋氏
「事前」ってのは客に「見積もり」出す前に「許可」は得なくていけないでしょ。

高家氏
ああ〜。

三橋氏
はい「事後」ってのは「出しちゃって」、「後で届ければ良くなった」からもう「事実上の、完全自由化」なんです。

高家氏
う〜ん。

三橋氏
そうするとですよ、当然競争は激化します、「(トラック)業者」こんなに増えてんのに。

高家氏
みんな、安く売り始めるってこと?

三橋氏
ぶっちゃけそうです、ぶっちゃけそうです。
で、結果、どうなったかというとですね、これで「荷主側」、いわゆる「荷物を送る人」側の立場がめちゃめちゃ「でかく」なったところにですね、

もう1つ「デフレ」あるいはその「グローバリズム」あるいは「競争激化」っていう問題が入ってきちゃったんですね。
あとね、「ジャストインタイム」

高家氏
あぁ。

三橋氏
えっとね「2022年」でしたっけ、「半導体」が不足した結果、日本含めて世界中の自動車(会社)が車作れなくなったんです。

高家氏
うんうん。

三橋氏
覚えてます?

高家氏
覚えてます。

三橋氏
はい、あれ「なんでか」というと まさにこの「ジャストインタイム」のせいなんです。

高家氏
うん、うん。

三橋氏
つまり「需要に応じた生産を行って、在庫は持たない」と。

高家氏
うん

三橋氏
「原材料」とか「その時に買う」と、「必要なだけ買う」という発想になったのね。

高家氏
うん。

三橋氏
同時に、その我々の「消費者」の方も、ちょっとなんか、あのまぁ「買い物の発想」が変わりまして、「多品種少数」の買い物をするようになったの

高家氏
うん。

三橋氏
だから「同じ商品大量〜」じゃなくて「他品種でちょっとずつ」って感じで、その「陳列棚に置いて欲しい」ように思うように(消費者が)なっちゃったんですよ 

高家氏
ううーん。

三橋氏
はい、思考の多様化っていうんですか、そうでしょ?
多分高家さんは、その「バブル前」の「商品の棚」とかって全然知らないでしょうね?

高家氏
う〜ん、見たことないです。

三橋氏
生まれてないですからね。

高家氏
え、すっごい同じ物がブワ〜ってあったんですか?

三橋氏
そうそうそう。その方が物流的に、めっちゃ「効率的」でしょ?

高家氏
そうですね。

三橋氏
はい、「それじゃダメだ」っていうことで「他品種少量」になったんですよね。
で、さっきの「ジャストインタイム」と、「消費者の思考」の多様化によって、その運び運ぶ人たちは「多品種小ロット」になったんです。

高家氏
ほぅ。その「ジャストインタイム」っていうのは?

三橋氏
これ「トヨタ」が始めたんですけど。「トヨタ」「かんばん方式」ってやつですね。

高家氏
はい。

三橋氏
なんか「必要なものを、必要な時タイミング」で。で「在庫を持たない」と。

高家氏
はあ。

三橋氏
で、さっきの「半導体」の話で言うと「半導体」について、えっと「2020年のコろナ」でその需要がなくなっちゃったから「半導体」余ってたのね。

高家氏
うんうん。

三橋氏
それで「自動車会社」側は、あの(半導体購入を)「キャンセル」したんですよ。

高家氏
はぁっ。

三橋氏
そしたらね、「需要回復した」と思ったらですね、あの、なくなっちゃったの。
それで「(半導体)くれ」って言っても「え、ちょっと今言われても困ります」みたいな、「TSMC」とかね、なっちゃって、
まぁ「トヨタ」の場合は「デンソー」だな、「デンソー」が「半導体」出してますから。
そういうことになっちゃったから、「車」作れなくなっちゃったのね。

高家氏
はい。

三橋氏
つまり「ちゃんと、在庫を取っとく」であったり「需要を平準化させる」って発想がですね、これが「ダメだ」ってことになったの。

高家氏
なんで、在庫抱えるのがダメなんですか?

三橋氏
「利益が減るから」です。

高家氏
利益が減る?

三橋氏
そう。まぁ、これあの前回の「株主資本主義」の話ともからむんですけども、前前回か、要は「利益最大化する」ってことになった時に「在庫リスク」なんか持ちたくないんですよ、誰も。

高家氏
うん。

三橋氏
はい。でも「欠品」も困るんですよ。「欠品リスク」もいやなんですね。
「なんか、ちょっと需要増えました」つって「あ、でも、今在庫ないんだけど」、これも困るから、そこは「今、必要な量を、今のタイミングで、持ってくれるようにしてもらおうじゃねえか、運送業界さん?」ってやったの。

高家氏
ああ〜、「自分の会社で(在庫を持っておく)じゃなくて」じゃなくて?

三橋氏
そう。

高家氏
えぇ〜。

三橋氏
ええ。だから「多品種小ロット」になっちゃったんですよ。

高家氏
え、じゃ そこ(のリスク分を)運送会社が全部、なんていうか、

三橋氏
(運送会社が)「負った」(負担した)。 
しかも反対側で、こんなに(運送会社)数増えてんですよ?

高家氏
はい。

三橋氏
「競争激化」してるから、多少無茶言われても、

高家氏
頑張っちゃう?

三橋氏
頑張っちゃうというか、いや「ちょっと、できません」って言うと「あぁ、じゃあもういいよ、お前んとこ。あっちに頼むから」ってことになっちゃうでしょ?

高家氏
うん。

三橋氏
(ライバル(運送会社)の)「数」増えてんだから。

高家氏
うん。

三橋氏
という複合的な要因でですね、それでどうなったかというと、

(オレンジ)大型トラック運転手(所得)

えぇ、まずえこれ「大型トラック」の方々の「所得」

(グレー)中小型トラック運転手(所得)

「中小型トラック」の(方々の)「所得」

(青)全産業平均(所得)

「全産業平均」(の「所得」)。
(トラックの運転手)結構大変な仕事だと思うんだけど、「給料」安いんですよ。

高家氏
うん。なんか思ってたより(安い)です。

三橋氏
でしょ?はい、で、これ「労働時間」

(青)全産業平均(労働時間)

これ「全産業平均」(の「労働時間」)。

(オレンジ)大型トラック(労働時間)

これ「大型トラック」(の「労働時間」)、

(グレー)中小型トラック(労働時間)

これ「中小型トラック」(の「労働時間」)、

ってことで、人よりもたくさん働いてるにも関わらず「給料」が安いんですよ。
誰も(仕事につきたいと思って)行かないよ、そんなとこ、

高家氏
うん。

三橋氏
ってことになっちゃったのね。

高家氏
うん。

三橋氏
はい。
で 、そこに「24年問題」ということになったわけなので、ここだから全面的に、なかなか自由資本主義の国だから、変えにくいんだけど「こういう問題ありますよ」ってのを理解しとかないといけないよね?

高家氏
うん。

三橋氏
本当だからあれだよ、私、なんか、ほら「港区江南」に住んでるから「海岸通り」走るわけ。

高家氏
うんうん。

三橋氏
そしたら「品川」のね、「埠頭(ふとう)」かな、「大井埠頭」かな、もうトラックがぶわーって待ってるわけですよ。

高家氏
ああ。

三橋氏
見かけるでしょ?あの辺で。

高家氏
はい。

三橋氏
あれはあの要は「荷待ち」です、あと「荷置待ち」です。

高家氏
はい、え「積み下ろし待ち」ってことですか?

三橋氏
積みおろしもやんなくちゃいけないし、そもそも入れないから外でずっと待たされるわけ。

高家氏
ああ。

三橋氏
はい、なんか中野さんに聞いたら、5時間待たされるとこあるって言ってた。

高家氏
5時間?

三橋氏
しかもあの、出ないからね、賃金

高家氏
お給料が、その間?

三橋氏
あの「給料(残業代)」は会社が出さなくちゃいけないけど、客が払わないってこと、待たせてる時間。

高家氏
あ〜、なるほど。

三橋氏
はい、それでも「え、やめるんだ、いいよ、別に、他のとこ頼むから」「え、何、5時間ぐらいの荷待ち時間でなに言ってんの?」みたいな感じの態度を取れてたんですよ、実際に。

高家氏
今まで?

三橋氏
今まで。 もう無理だよ、もう無理だよ。
ということで、これ問題だから政府としても「2時間」はあの「最低 2時間」、できれば「1時間」
「2時間」でも長いよね。

高家氏
はい。

三橋氏
あと「金払え」とかですね、あと「荷置き」に「パレット」使えとか、まぁそういう規制が今から入ってくることになるんで、まぁそれはちょっと後半お話したいとは思うんですけども、これ「問題の本質」ですよ。

つまり、その今まで「いい」と思われていたこと、例えば「在庫持ちません」とか、あの「ジャストインタイム」であったりとか「他品種小ロット」ですとか、これが根幹にあるんですよ。

あと、あれじゃない、これちょっと別の問題だけど、まともに高速道路とか「インフラ整備しねえから」ってのもあるんだけども、それに加えて、今言ったような問題がある。

高家氏
はい、確かに「いい」と思ってましたもん。

三橋氏
思ってましたでしょ?
なんか「頼んだら明日来てくれるんだ〜嬉しい〜」

高家氏
はい、「助かる〜」って思ってました。

三橋氏
大量に持ってくんならいいけど、「1個」でしょ?「1個」でしょ?

高家氏
はい、「1個」です。

三橋氏
そういうことを「ユーザー側」がやる、でも、ちなみに「消費者」がですね「イーコマース」とかで買うのって、大したパーセンテージじゃないです。確か「7%」ぐらい。
あと、もうほぼ「B to B」です。

高家氏
へぇ。

三橋氏
だからビジネスがそういう風になっちゃったのね。 

高家氏
企業自体も、私たちと同じ感覚みたいなってことですか?

三橋氏
そうそう。まぁ多分、企業が先だと思うよ?

高家氏
ああ。

三橋氏
デフレで儲かるから「利益を上げるには、どうしたらいいんですか?」、
「在庫持たない」あと「ジャストインタイム」「素晴らしい、効率的だ」みたいな?
「サプライチェーンはグローバルに」みたいなことやって「半導体が来なくなった」「はい、自動車生産ストップ」みたいなね、
「在庫持っとけよ」って話なんだけど、「在庫」なんか、誰も持ちたくないんで。

高家氏
はい。

三橋氏
でね、

(青)世間的な(名目)サービス料の上下

これがね「企業向け 道路貨物運送サービスの価格」なの。

ここが「規制緩和」ね、

見事に下がってたんですよね。
まぁ、それぞれのペースで給料下がってったんだけど、でね、

今ね、ほら増えてるでしょ?

高家氏
はい。

三橋氏
価格上がってんですよ、多少。

高家氏
うん、うん。

三橋氏
ところが、ところがですよ、これ「名目」の価格です。

高家氏
はい。

三橋氏
今、重要なのは「物価」の問題があるから「実質(サービス料)」でしょ?

高家氏
ああ、そうですね。

(オレンジ)本当の(実質)サービス料の上下
(青)世間的な(名目)サービス料の上下

三橋氏
それを入れるとこうなります。

ここ、あのまえ「安倍内閣」「13年」ぐらいから、確かに「名目」の「サービス価格」上がってんだけども、「実質(サービス料)」が ですね、

高家氏
下がってる・・・。

三橋氏
「マイナス」なんですよ。

ここが「0」だよ?ここが「0」

はい、しかも「4%」近く下がりましたからね、「22年9月」とか

高家氏
は〜。

三橋氏
「これじゃあ潰れますでしょ」
と。

高家氏
はい。

三橋氏
つまり、確かに「荷主」側はちゃんともう「値上げ」認めてますよ。

高家氏
うん。

三橋氏
でも、「物価の上昇に追いついてない」っていうですね。
例の、我々の「実質賃金の上昇」と同じ状況になっちゃってるんで、これはね、ちゃんとあの上げてかなきゃ「(トラック運転手の)なり手がいなくなる」っていうか、もう「運べない」っていう時代に突入しちゃうだろうな、と思うんですね。


続きはYouTubeで確認🐈

https://youtu.be/zznoDaIWlRc

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