見出し画像

「なぜ重力を発見するに至ったのか?」に対する回答

なぜ、重力を発見するに至ったのか?」という質問が届きました。

とても良い質問ですね。これは中世の時代までの天文学の歴史とも密接に結びついたテーマです。

天文学の歴史は古く、少なくとも今から2000年前には古代ギリシャで、天体の運動について論じられていました。さて、古代ギリシャで論じられた天体の運動とは、「地球を中心としてその周りを太陽が周っている」というものです。いわゆる天動説ですね。この考え方はその後、16世紀−17世紀まで続きました。地球の周りを太陽が周っているというのは、朝、太陽が東の空から上り、夕方に西の方に沈むことを考えれば、実はごく自然な発想ですよね。そのため、天動説は多くの人に支持されていました。しかし、一方で天動説では説明が複雑な天文現象(例えば、惑星の逆行運動)などもありました。

そんな中、15世紀から16世紀にかけてコペルニクスという天文学者が出てきて、こう考えます。「宇宙はもっとシンプルに理解できるのではないか」と。そして、「地球ではなく、太陽が中心にあり、その周りを地球やその他の惑星が周っている」と考えました。今で言うところの地動説です。天動説から地動説への転回は、発想がガラリと変わったので、現在では、発想がガラリと転回することを「コペルニクス的転回」と表現したりします。

コペルニクスの死後、ティコ・ブラーエというデンマーク出身の天文学者が出てきました。彼は20年以上に渡って、肉眼で天体の運動を観測し、その記録を残します。ティコ・ブラーエの残したデータを引き継いだのがドイツ生まれの天文学者ヨハネス・ケプラーです。彼はティコ・ブラーエの残したデータを解析した結果、惑星の運動は3つの法則にまとめられることを発見しました。今日、ケプラーの法則と呼ばれるものです。

ケプラーの法則は以下の3つです。

第1法則 惑星は太陽を一つの焦点とし、惑星によりそれぞれ決まった形と大きさの楕円軌道上を公転する。
第2法則 太陽と惑星を結ぶ線分は、等しい時間には惑星ごとにそれぞれ等しい面積をおおいながら公転する。
第3法則 惑星の太陽からの平均距離の3乗と公転周期の2乗との比は、惑星によらず一定である。

https://astro-dic.jp/keplers-laws/

それぞれの法則の意味は割愛しますが、ティコ・ブラーエの残したデータを分析した結果、惑星の運動はわずか3つの法則に集約されることを発見しました。

さて、ケプラーの法則はデータに基づいて「経験的」に導出されたものであり、「何故、この法則になるのか?」は説明できません。この様な、経験的に法則が導かれる事を「帰納的アプローチ」と言います。逆に、何らかの原理を設定し、そこから現象を説明したり、予言したりするアプローチのことを「演繹的アプローチ」といいます。

ケプラーの後、ニュートンが現れます。ニュートンはまさに演繹的なアプローチでケプラーの法則を説明しようとします。その際に、考えた基本法則が「ニュートンの運動法則」と「万有引力の法則」です。これらを基本法則に据えることによって、ケプラーの法則を導出することができることをニュートンは示しました。万有引力の法則は、

$$
F=G\frac{Mm}{r^2}
$$

の様に、「重力は距離の二乗に逆比例する」形として表されます。高校でこの式を習った方は、「どうして二乗なのか?」と思ったかもしれません。これは、「二乗に逆比例すると考えれば、ケプラーの法則を説明できる」からが理由です。

ニュートンは落ちるりんごを見て、万有引力の法則を発見したという逸話が有名ですが、その逸話の真偽はさておき、この話で重要なのは、「地球上で働いている引力が宇宙をも支配しており、引力によって惑星が運動している」と、引力という概念の適用範囲を宇宙に広げたことです。これはまさに想像力を飛躍させたと言っても良いのではないでしょうか。地球にいながらにして、宇宙まで想像を広げて、万有引力を宇宙を支配する法則として考えたわけですから。そして、さらに大事なこととして、このアイデアを考えれば演繹的にケプラーの法則を証明できることを示したわけです。

理論は実験や観測によって検証されなければなりません。万有引力の法則だってあくまで一つの仮説にすぎないのです。しかし、少なくともケプラーの法則を説明したり、その他の天体の運動も説明でき、さらに観測的にも検証されているので合理的な仮説として受け入れられているのです。しかし、ニュートンの重力理論では説明できない現象も出てきたので、修正が迫られます。そしてその修正を行ったのが、ニュートンから約250年後に現れたアインシュタインなのですが、その話をしだすと話が止まらなくなるので、この辺で話を終えたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?