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"General theory of relativity"(Dirac)を読む7

過去の記事はこちら。

前回、曲がった空間での平行移動について紹介した。

曲がった空間での平行移動は次の形で与えられる。

$$
d A_\nu=A^\mu y_{, \mu}^n y_{n, \nu, \sigma} d x^\sigma\tag{6.7}
$$

Chapter7では、Chirstoffel symbolを導入し、曲がった空間での平行移動をよりフォーマルな形で書き直す。

式(6.3)を微分し、さらに添字の上げ下げ($${y^n,_{\mu\sigma}=h^{nl}y_{l,\mu\sigma},y_{n,\nu}=h_{kn}y^{k}_{,\nu}}$$)を行うと、

$$
\begin{aligned}
g_{\mu \nu, \sigma} &=y_{, \mu \sigma}^n y_{n, \nu}+y_{, \mu}^n y_{n, \nu \sigma} \\
&=y_{n, \mu \sigma} y_{, \nu}^n+y_{n, \nu \sigma} y_{, \mu}^n,\tag{7.1}
\end{aligned}
$$

となる。ただし、二階微分を行う時はカンマを省略した

(メモ)

$$
y_{, \mu \sigma}^n y_{n, \nu}=h^{nl}y_{l,\mu\sigma}h_{kn}y^{k}_{,\nu}=h^{l}_{k}y_{l,\mu\sigma}y^{k}_{,\nu}=y_{n, \mu \sigma} y_{, \nu}^n
$$

さらに、式(7.1)で$${\mu \leftrightarrow\sigma}$$と添字を入れ替えると、

$$
g_{\sigma \nu, \mu}=y_{n, \sigma \mu} y_{, \nu}^n+y_{n, \nu \mu} y_{, \sigma}^n .\tag{7.2}
$$

となる。また、同様に式(7.1)で$${\nu \leftrightarrow\sigma}$$で添字を入れ替えると、

$$
g_{\mu \sigma, \nu}=y_{n, \mu \nu} y_{, \sigma}^n+y_{n, \sigma \nu} y_{, \mu}^n \text {. }\tag{7.3}
$$

となる。

式(7.1)+式(7.3)−式(7.2)を行い、さらに2で割ると、その結果は

$$
\frac{1}{2}\left(g_{\mu \nu, \sigma}+g_{\mu \sigma, \nu}-g_{\nu \sigma, \mu}\right)=y_{n, \nu \sigma} y_{, \mu}^n .\tag{7.4}
$$

となる。これを、次のように置く。

$$
\Gamma_{\mu \nu \sigma}=\frac{1}{2}\left(g_{\mu \nu, \sigma}+g_{\mu \sigma, \nu}-g_{\nu \sigma, \mu}\right)\tag{7.5}
$$

ここで導入された$${\Gamma_{\mu \nu \sigma}}$$を第一種クリストッフェル記号という。式(7.4)を見ると、$${\nu,\sigma}$$による二階微分は順序を入れ替えても結果は変わらないので、式(7.5)でクリストッフェル記号の最後の2つの添字に関しては対称性があることが分かる。

また、クリストッフェル記号は似非テンソルである。式(7.5)の帰結として、

$$
\Gamma_{\mu \nu \sigma}+\Gamma_{\nu \mu \sigma}=g_{\mu \nu, \sigma}\tag{7.6}
$$

が得られる。

さて、式(6.7)の平行移動を表す式は、クリストッフェル記号を用いて、

$$
d A_\nu=A^\mu \Gamma_{\mu \nu \sigma} d x^\sigma\tag{7.7}
$$

と書き直せる。平行移動がこの様に書き直せることにより、N次元の高次元空間の添字である$${n}$$が消えていることが重要である。すなわち、平行移動を高次元空間から考えるのではなく、四次元時空で表すことができるようになった!

次にベクトルの平行移動によってベクトルの長さが変化しないことを示す。平行移動後のベクトルの大きさの変化は以下の通り。

$$
d\left(g^{\mu \nu} A_\mu A_\nu\right) =g^{\mu \nu} A_\mu d A_\nu+g^{\mu\nu}A_{\nu}dA_{\mu}+A_{\mu}A_{\nu}g^{\mu\nu}_{,\sigma}dx^{\sigma}
$$

この右辺第一項と第二項は添字の上げ下げ$${A^{\nu}dA_{\nu}+A^{\mu}dA_{\mu}}$$となり、右辺第三項で$${\mu,\nu}$$はダミーの添字なので、$${\mu,\nu}$$の代わりに$${\alpha,\beta}$$を用いると、

$$
=A^{\nu}dA_{\nu}+A^{\mu}dA_{\mu}+A_{\alpha}A_{\beta}g^{\alpha\beta}_{,\sigma}dx^{\sigma}
$$

さらに、式(7.7)で表されるクリストッフェル記号を用いた表式を用いると、第一項、第二項は書き直すことができて、

$$
=A^\nu A^\mu \Gamma_{\mu \nu \sigma} d x^\sigma+A^\mu A^{\nu} \Gamma_{\nu \mu \sigma} d x^\sigma+A_\alpha A_\beta g^{\alpha \beta}{ }_{, \sigma} d x^\sigma
$$

この式の第一項と第二項を$${A^{\mu}A^{\nu}}$$でくくると、

$$
=A^\nu A^\mu (\Gamma_{\mu \nu \sigma} +\Gamma_{\nu \mu \sigma} )d x^\sigma+A_\alpha A_\beta g^{\alpha \beta}{ }_{, \sigma} d x^\sigma
$$

式(7.6)のクリストッフェル記号の性質を用いると、

$$
=A^\nu A^\mu g_{\mu\nu,\sigma}dx^{\sigma}+A_\alpha A_\beta g^{\alpha \beta}{ }_{, \sigma} d x^\sigma\tag{7.8}
$$

となる。

ところで、$${(g^{\alpha\mu}g_{\mu\nu})_{,{\sigma}}=g_{, \sigma}^{\alpha \mu} g_{\mu \nu}+g^{\alpha \mu} g_{\mu \nu, \sigma}=g_{\nu, \sigma}^\alpha=0}$$なので、これに$${g^{\beta\nu}}$$をかけると、

$$
g_{, \sigma}^{\alpha \beta}=-g^{\alpha \mu} g^{\beta \nu} g_{\mu \nu, \sigma}\tag{7.9} .
$$

式(7.8)の第三項に式(7.9)を適用すると、

$$
A_\alpha A_\beta g^{\alpha \beta}{ }_{, \sigma} d x^\sigma=-A_\alpha A_\beta g^{\alpha \mu} g^{\beta \nu} g_{\mu \nu, \sigma}d x^\sigma=-A^\mu A^{\nu} g_{\mu \nu, \sigma}d x^\sigma
$$

したがって、式(7.8)は0となり、ベクトルの大きさは一定ということになる。特に、大きさが0のベクトルは、平行移動後も大きさは0のままである。

平行移動してもベクトルの長さが変わらないというのは、幾何学的に考えてもわかる。ベクトル$${A^n}$$を式(6.5)に従って接線成分と法線成分の分けると、法線成分は無限小で、かつ接線成分にに直交する。そのため、ベクトル全体の長さは、1次まででいうと、接線部分の長さに等しい。

任意の長さのベクトルが平行移動後に一定に保たれることは、任意の2つのベクトルのスカラー積$${g^{\mu\nu}A_{\mu}B_{\nu}}$$が一定になることを要求する。

例えば、$${C_{\mu}=A_{\mu}+\lambda B_{\mu}}$$というベクトルを考える。($${\lambda}$$は任意の値)

この時、$${C_{\mu}}$$の長さの二乗は

$$
g^{{\mu\nu}}C_{\mu}C_{\nu}=g^{\mu\nu}A_{\mu}A_{\nu}+2\lambda g^{\mu\nu}A_{\mu}B_{\nu}+\lambda^2g^{\mu\nu}B_{\mu}B_{\nu}
$$

ベクトルの平行移動で長さが変わらないということは、(左辺)=一定、(右辺第一項)=一定、(右辺第三項)=一定となるので、$${g^{\mu\nu}A_{\mu}B_{\nu}}$$が成り立たないといけない。

第一種クリストッフェル記号の添字を上げたものを第二種クリストッフェル記号と呼び、頻繁に用いられる。

$$
\Gamma_{\nu \sigma}^\mu=g^{\mu \lambda} \Gamma_{\lambda \nu \sigma} .
$$

第一種クリストッフェル記号と同様、下付きの2つの添字については対称性がある。

式(7.7)を第二種クリストッフェル記号を用いて書き表すこともできる。

$$
d A_\nu=\Gamma_{\nu \sigma}^\mu A_\mu d x^\sigma\tag{7.10}
$$

これは、共変ベクトルを用いた標準的な書き方である。

あるベクトル$${B^{\nu}}$$を考える。この時、上記の議論より、$${A_{\nu}}$$との内積は0になるので、$${d(A_{\nu}B^{\nu})=0}$$となる。すなわち、

$$
A_{\nu}dB^{\nu}=-B^{\nu}dA_{\nu}=-B^{\nu}\Gamma^{\mu}_{\nu\sigma}A_{\mu}dx^{\sigma}=-B^{\mu}\Gamma^{\nu}_{\mu\sigma}A_{\nu}dx^{\sigma}
$$

最後の等号ではダミーの添字の入れ替えを行った。両辺を比較すると、任意の$${A_{\nu}}$$に対して、この関係が成り立つためには、

$$
d B^\nu=-\Gamma_{\mu \sigma}^\nu B^\mu d x^\sigma\tag{7.11}
$$

が成り立たなければならない。これは反変ベクトルに対する平行移動の表式である。

(一言)
6章では曲がった4次元時空での平行移動を考えるために、より高次元空間での平行移動を導入しましたが、クリストッフェル記号を用いると、4次元時空の量で平行移動を表現できるというのがポイントです。

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