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"General theory of relativity"(Dirac)を読む8

過去の記事はこちら。

chapter7ではクリストッフェル記号を導入して、曲がった時空での平行移動を与えた。chapter8ではgeodesics(測地線)、曲がった空間での軌道を取り上げる。

ある座標$${z^{\mu}}$$を考え、軌道に沿って運動する場合を考える。この時、その軌道の変化じゃパラメータ$${\tau}$$を用いて、$${dz^{\mu}/d\tau=u^{\mu}}$$と表せる。

$${u^{\mu}}$$は$${x^{\mu}}$$の方向を向いたベクトルであり、$${u^{ \mu}}$$に沿って平行移動していき、全軌道は出発点とベクトル$${u^{\mu}}$$が与えられれば決定される。出発点を$${z^{\mu}}$$とすると、ベクトル$${u^{\mu}}$$によって平行移動した新しい点は$${z^{\mu}+u^{\mu}d\tau}$$となる。これを繰り返すことによって全軌道が決定される。この様にして決定された軌道の事をgeodesic(測地線)という。

もし、ベクトル$${u^{\mu}}$$がnull-vector(絶対値が0のベクトル)なら、軌道中ずっとnull-vectorであり、この様な軌道をnull-geodesic(ヌル測地線)という。また、ベクトル$${u^{\mu}}$$が時間的(すなわち、$${u^{\mu}u_{\mu}>0}$$)の場合は、軌道中ずっと時間的であるし、空間的($${u^{\mu}u_{\mu}<0}$$)の場合も同様である。

式(7.11)で得られた平行移動の式で$${B^{\nu}=u^{\nu}}$$とし、$${dx^{\sigma}=dz^{\sigma}}$$とすると、測地線方程式が得られる。

$$
\frac{d u^\nu}{d \tau}+\Gamma_{\mu \sigma}^\nu u^\mu \frac{d z^\sigma}{d \tau}=0\tag{8.1}
$$

あるいは、

$$
\frac{d^2 z^\nu}{d \tau^2}+\Gamma_{\mu \sigma}^\nu \frac{d z^\mu}{d \tau} \frac{d z^\sigma}{d \tau}=0 .\tag{8.2}
$$

とも表せる。

時間的な測地線の場合($${u^{\mu}u_{\mu}>0}$$)、パラメータ$${\tau}$$の尺度を調整すれば、$${u^{\mu}u_{\mu}=1}$$となる場合を選ぶことができる。すなわち、$${u^{\mu}}$$の絶対値が1になる。この条件を満たすように調整された$${\tau}$$を$${\tau=s}$$とし、この時の速度を$${v^{\mu}=dz^{\mu}/ds}$$とすると、測地線方程式(8.1)は

$$
\frac{d v^\mu}{d s}+\Gamma_{\nu \sigma}^\mu v^{\nu} v^\sigma=0\tag{8.3}
$$

となる。尚、$${\tau=s}$$の時、$${s}$$は固有時である。また、$${v^{\mu}=dz^{\mu}/ds}$$は四元速度である。相対性理論では、時間も座標系に依存するので、ニュートン力学での速度や加速度の定義とは異なり、ローレンツ変換に対して不変である固有時を用いて、速度や加速度を定義する。

あるいは、式(8.2)は

$$
\frac{d^2 z^\mu}{d s^2}+\Gamma_{\nu \sigma}^\mu \frac{d z^\nu}{d s} \frac{d z^\sigma}{d s}=0\tag{8.4}
$$

となる。

「重力以外のいかなる力も受けない場合、質点の軌道は時間的な測地線である」という仮定を導入すると、ニュートンの運動方程式は式(8.4)に置き換わる。また、光の軌跡はヌル測地線であると仮定すると、測地線方程式は式(8.2)となる。ただし、この時、$${u^{\mu}}$$がnull-vectorなので、$${ds^2=0}$$となってしまうので、測地線方程式は固有時以外のパラメータ$${\tau}$$を取らなければならない。

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