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"General theory of relativity"(Dirac)を読む15

これまでの記事はこちら。

Chapter15は”Einstein's law of gravitaion”.アインシュタインの重力理論の話である。これまでは、測地線方程式の話を除いて、数学的な準備を行ってきたが、いよいよここからは物理的な話に入っていく。ちなみに、これまでの数学の話は19世紀には整備され、任意の次元の曲がった時空に応用される話だった。

時空の次元は、

$$
g^{\mu}_{\mu}=\text{number of dimensions}
$$

で与えられる。

アインシュタインは、空っぽの時空は

$$
R_{\mu\nu}=0\tag{15.1}
$$

で与えられると仮定した。「空っぽ」とは、物質や、重力場を除いて物理的な場が存在しないことを指す。他の物理的な場の存在は「空っぽ」という条件を破るが、重力場の存在は「からっぽ」という条件を破らないのである。空っぽという条件は、太陽系の惑星空間では良い近似を与え、式(15.1)を適用することができる。

平坦な時空は明らかに式(15.1)を満たす(計量テンソルが定数なので、その空間的、時間的微分は0となり、クリストッフェル記号や曲率テンソルが0になるため)。測地線方程式は直線となり、粒子は直線に沿って移動する。時空が平坦でない場合、アインシュタインの法則は曲率に対して制限を与える。そして、このことと惑星が測地線に沿って動くことを併せると、惑星の運動について情報を得ることができる。

ちょっと見たところでは、アインシュタインの重力法則とニュートンの重力法則は似ても似つかない。これら2つが類似的なものと見るためには、計量テンソル$${g_{\mu\nu}}$$を重力場によって記述されるポテンシャルと見なさなければならない。ニュートンの重力理論ではポテンシャルは1個であったが、アインシュタインの重力理論ではポテンシャルは10個((16-4)/2+4)ある。それらは、重力場でけではなく、座標系の記述もしているのだ。アインシュタインの理論では、重力場と座標系は分かちがたく結びついており、一方を欠いたら他方を記述することができない。

$${g_{\mu\nu}}$$をポテンシャルと見なすと、式(15.1)は場の方程式とみなすことができることに気づく。確かに、クリストッフェル記号は1階の導関数を含むので、式(14.2)には2階の導関数が現れ、したがって式(15.1)は2階の微分方程式となっているからである。しかし、これらは線形ではないという点で、普通の場の方程式とは異なっている。非線形であるためにこの方程式は複雑で解を得るのが難しくなっている。

(補足)
ニュートンの重力理論ではポアソン方程式

$$
\Delta \phi=4\pi G\rho
$$

を通して、物質分布と重力ポテンシャルが結びついてる。アインシュタイン自身も一般相対性理論を構築した一連の論文の中で、この事を道標として、場を記述する方程式が2階の微分方程式になる必要があると予想している。さらに、物質分布が計量テンソルを含む2階のテンソルと結びつくだろうという仮説を立てている。では、そういった2階のテンソルがどの様な形になるのか、また、そのテンソルが任意の座標変換に対して共変的である可能性を示唆しているものの、その根拠を持ち合わせていないことも同時に述べており、初期の論文ではそういった2階テンソルを見つけることはできていない。

(参考文献)
一般相対性理論(アインシュタイン)岩波文庫


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