“量産できないもの”を作るのがクリエイター。動画編集者が唯一無二の存在になるためのマインドとは
私の仕事は、誰にも引き継げない――そう語るのは、数々のインフルエンサーやファッションブランドのYouTubeの編集を手がける池田友梨奈。
一見ネガティブな言葉に聞こえるかもしれませんが、マニュアルやフォーマットを用意しても再現することができない「唯一無二の仕事」をしているのだと語ります。
「替えのきかない存在になりたい」という池田が持っている、唯一無二の存在になるためのマインドとは――。また、彼女が業務委託メンバーとして所属するbuggy株式会社との信頼関係についても語られました。
本企画は、クリエイターのプロデュースなどを手掛けるbuggy株式会社の代表を務める関根(@mu41208)と、buggyに関わるさまざまなメンバーが対談。現役で活躍する人たちにプロデュース術や仕事にかける想いをお聞きします。
クリエイターとして「替えがきかない存在」になりたい
関根:友梨奈はパッと見て落ち着いた雰囲気だけど、こだわりを持った強い一面を持っているよね。俺はそれがすごく素敵だと思ってる。
池田:ありがとうございます!これまでアパレルブランドの運営や動画制作をする中で、「どうせできないだろう」と言われることも多かったんです。
だから、「良いものを作っていると説得できるクオリティの作品を作ろう」という反骨心がこだわりに繋がっているのかもしれません。
関根:なるほどね。他に仕事をする上で意識していることは?
池田:今の働き方を続けていくためでもあるのですが、替えがきかない存在になりたいんですよね。
他の人にもお願いできることは私の強みじゃないと思っています。だから人に教えるのも苦手で...。
関根:教えようと思ったことはあるの?
池田:フォーマットを作って、人に仕事を任せたこともあるんですけど、ダメでした。
動画編集の仕事は感覚的な部分も多いので、イメージしてたものと違うアウトプットが出てきちゃうんですよね。もちろん私の伝え方が悪かったというのもあると思うんですけど。
関根:難しいよね。
池田:修正を繰り返していたら納品が間に合わなくなってしまう状況もたびたびあったので、かなり悩みました。今は人に教えたり任せたりすることがないので、すごく気持ちが楽です(笑)。
毎回動画のオープニングを変えたり、もらった素材からクリエイティブを決めたりするので、そもそもフォーマットを作ることが難しいんですよね。
関根:ビジネスをスケールさせるには量産することが基本だけど、友梨奈は“量産できないもの”を作るからクリエイターだなと思う。
バイトを辞めて、フリーランスの「池田友梨奈」で仕事をすると決めたときからクリエイターとしての覚悟が決まっていたんだろうね。
「小さな違和感」の裏に隠された、大きなエラーを見逃さない
関根:1年前くらいにbuggyに動画の案件が大量にあったから「友梨奈の動画編集スキルを、Vlogが得意な3人に引き継げないか」と相談したけど、すごく大変そうだったもんね。
友梨奈に限らず、クリエイターは悩む人が多いから、俺は経営者として“病むタイミング”を把握しなきゃいけないと思ってる。
池田:関根さんは本当に的確なタイミングでLINEしてくれますよね。しかも会っていないときなのに。
関根:顔を見なくても、テキストや友梨奈に関わっている事業部の雰囲気から、なんとなく伝わってくるんだよね。ちょっとした違和感は何か大きなエラーが隠れている証拠だから、個別で連絡するようにしてる。
池田:関根さんは常にいろんな人と連絡を取っているイメージがあるのですが、それでも一人ひとりを気にかけてくださるのはすごいと思います。
関根:LINEのグループ数が上限に達してるから、毎日友達に「関根をグループに追加できない」って言われる(笑)。
池田:本当にすごいです。正社員のことも考えなきゃいけないのに、私のような業務委託メンバーのことまで気にしてくださって本当にありがたいです。
関根:正社員と業務委託の線引きはないかも。一般的に、会社と業務委託は金銭と能力のやりとりだからドライな関係になりがちなんだよね。
でも業務委託メンバーと良い関係を築いて長く一緒に働くためには、“感情”に入り込むことが大事。俺もフリーランス経験があるからわかるけど、フリーランスは誰からも褒められないし孤独じゃん。
池田:そうですね。だからこそ、たくさん人数がいる中でも一人ひとりのことをきちんと見たり寄り添ったりしてくださるのは嬉しいです。
関根:もちろん、俺が見えないところでみんなが支えあったりごはん行ったりもしてると思うけどね。buggyはみんなで支え合える状況を作っていきたい。
もしかしたら合わなくなっちゃう子とか辞めちゃう子がいるかもしれないけど、それも経験の資産になると思ってる。
案件ごとに目標を立てて、ひとつずつクリアしていく
池田:関根さんがメンバーと接するときに意識してることってありますか?
関根:最近意識してるのは、仕事を通じて何が得られるかを具体的に伝えること。「この仕事はこのくらいの規模感で、こんなスキルが身について、会社にはこんなメリットがあって、こんな未来に繋がっていく」と説明してる。逆に言わないときもあるけどね。
池田:言わないときは、考えさせるってことですか?
関根:そうそう。それで違和感や「これは何の意味があるんだろうな」と思うことがあれば、どんどん聞いたほうがいい。経営者は1を言ったら10が伝わるような効率の良い人が好きだけど、そうなるまでの経験や失敗が楽しいからどんどん聞いてほしい。
池田:なるほど!
関根:例えば、子どもの頃に「テレビを見てはダメ」と言われたら泣いたり家出したりして行動を起こしてたじゃん。でも、そこで行動を起こせないと病んだり引きこもりになったりしちゃうんだよね。
そういうマイナスの火種は、会社の中にもめちゃくちゃ潜んでいて。
朝オフィスに来て挨拶したときに、みんながパソコンから顔を上げて「おはようございます」と言っていれば病まないと思う。でも挨拶もせずにデスクに着いたら、何かしらのエラーが起きてるのかもしれない。そういうときは「挨拶しなよ」って言うだけで良い。
窓を開けてもらったら「ありがとう」って言うとか気軽なことでいいんだけど、一言気にかけるだけで心が豊かになるんだよね。
池田:たしかに。関根さんは、本当に細かいところまで見てくださってますよね。
関根:俺は大雑把で適当だよ(笑)。昔知り合いに教わったんだけど、良し悪しの線引きがつかなくなったときは、一旦全部OKにしてみる。何があっても許すようにするんだけど、そうすると「これだけは譲れない」というポイントが出てくるんだよね。
それが自分の中のこだわりになるから、細かいことは気にしないけど、譲れないことに対してはちゃんと追求するようにしてるかな。
関根:友梨奈は今後実現したい夢とかあるの?
池田:仕事で成し遂げたい夢は持ってないんですよね。「夢を持て」とよく言われますが、夢は努力したら大体叶うし、叶ってきました。
だから「この動画制作は購入に繋げよう」みたいに、案件ごとに目標を立てています。それを一つひとつクリアしていけば絶対に良い方向に進むと思っているので、「何年後にどうなっていたい」という目標も掲げてないです。
関根:なるほど、いい考え方だね。これからも動画制作よろしくお願いします!
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今回は動画クリエイターとして活躍する池田友梨奈に、唯一無二のクリエイターでいるためのマインドを聞きました。
量産が良しとされるビジネスの世界だからこそ、“量産できないもの”を作ることが大切なのですね。
また「少し違和感から、“大きなエラー”を見逃さない」と語る関根のスタンスが、多くのクリエイターと信頼関係を築けている理由だとわかります。
次回はどの人とどんな話が繰り広げられるのでしょうか。ぜひお楽しみに!
<撮影協力>
今回の撮影は渋谷駅より徒歩6分の所にあるカフェ「Beans Garage Coffee」にご協力いただきました。夜はBARにかわり、お酒も提供しています。
<ふたり広報:取材・多葉田愛/執筆・伊藤美咲/編集・えるも/写真・琴>
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