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【5000字】ワンピースがなぜバズっているのか。マーケターから見た映画『FILM RED』。

はじめに

この夏、ワンピースが本当に盛り上がっているように思います。

いたるところでコラボを目撃し、映画が話題になり、adoさんの曲が流れ…。空島編で挫折していた私も、流されるように夏前にワンピースの最新話まで追いつき、映画を見に行き、ワンピース初心者ながら感動の涙を流しました……

初めまして。「食べチョク」という産直の通販サービスでマーケティングの責任者をやっている松浦と申します。マーケティングにかかわる人間として、この夏の盛り上がりが気になって仕方がない!ということで、簡単にまとめてみました。わーっと数時間で書いたのに5000字超えてしまったので、「いや読みにくいよ!」とか「ちょっとズレてるぜ」とかあるかと思いますが、優しい気持ちで許してください。笑

本当は内容についても語りたい事がめちゃあるのですが(ドロピザさんの考察が好き)、今回はそれをあえてスルーし、宣伝・マーケの観点に絞ってまとめてみました!「こういうのもあるよー」とか教えてくれたらとても嬉しいです。


まとめ

大人の夏の自由研究ということで、ワンピースの盛り上がりがなんで起こったのかを考えてみました!たくさんの要因があるし、色々な整理があると思うけど、ひとつの切り口として、ぜひ流し読みしてほしいです。

手短にまとめると👇

  • 本編が終盤戦に差し掛かったタイミングで、今回が最後の映画になる。映画と本編とで大きな山をつくれるタイミング。

  • 映画での売上の最大化のために、ターゲットごとに狙いを定め、チャネルをまたいで徹底的に張り巡らし、施策を大量に展開した。

  • 具体的には以下の四点をしっかりやり切った。

    • (1)メインターゲットの巻き込み

      • ライト層も入りやすい設計

    • (2)リピートの仕組み

      • キーワードは「鬼滅」と「MV」

    • (3)圧倒的なコラボ数

      • 「単純接触効果」が効く!

    • (4)オンライン&ソーシャルでの仕掛け

      • 動画マーケとUGC(口コミ)施策


どうすごいのか

すごいすごいと言ってきましたが、実際どれくらいのインパクトが出ているのか、ちょっとデータも見てみましょう。

(a)興行収入

とにかく初速の伸びはえげつなく、8/21現在でも数字はかなり伸びていそうです。歴代ランキングを見ると、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が約400億、千と千尋の神隠しが約320億という規模感です。80億時点ですでに『シン・ゴジラ』の82億に迫り、まさに破竹の勢い。

同作は、8月6日に公開され、2日間で興行収入が22億5000万円、観客動員数が157万人を突破。2022年に公開された作品の初週土日2日間の動員数、興行収入で1位の記録となった。15日には、公開10日間で興行収入が70億円を突破し、最終興行収入約68億7000万円を記録した「ONE PIECE FILM Z」(2012年)を超え、シリーズ最高記録を更新したことも話題になっている。

MANTANWEB

(b)話題

「ワンピース」での検索数の伸びも、この5年間では以下のグラフのように直近数か月でかなり伸びています。少し前からの仕込み・盛り上がり感がえげつない!

日本での直近5年間のGoogle検索数のトレンド(Google Trends)
Twitterの投稿数も、映画の公開前後から上昇(Yahoo!リアルタイム検索)


ではそろそろ本題に入ります。なぜこんなにバズっているのか。色々な観点があるし、施策とにかく多いので、私なりにマーケティング施策を整理すると…という感じで、流し読みしてもらえたらと思います。上で書いた四つの観点、順に説明していきます。

(1)既存顧客をしっかり巻き込んだ

アニメ・漫画の映画版ですから、やはりメイン層である既存顧客が一番大事。アニメと漫画のクライマックスに合わせて、これまでワンピース作品に薄く触れてきた人も含め、まずはメインを最大限巻き込みをしていきます。

漫画ではワノ国編で、衝撃の展開・伏線回収がドンドン繰り広げられ、かなりの盛り上がりになっています。初期からの前提がひっくり返るような大きなネタもあり、ファンの中では大いに盛り上がりました。映画はパラレルワールドの出来事で本編に干渉しないという前提が何となくありそうでしたが、ウタの存在をほのめかす一コマもあったりと、漫画でも映画を盛り上げ。

また、アニメでは映画連動版のストーリーも放映されており、アニメも映画を前面に出しています。(TVerで見れます)

今回の映画では、「シャンクス」という一巻から登場している大物がかなりストーリーの根幹に入ってきそうということで、最近離反しているライト層も十分に興味を持てる内容だったというのも大きいかと思います。

事前に登場人物をチラ見せして、懐かしいキャラクターも出していくことでちょっと知っているファンからしても見に行きやすくなりそう。

さらに、このタイミングでカードゲームも発売し、橋本環奈さんのCMも公開。これもまたブースト材料。

(2)何度でもリピートしてもらう仕組み

現時点で国内の興行収入ランキングトップを見ると、もし仮に一回見て満足される設計では、なかなかあの数字は達成できなそうです。何かしら複数回通いたくなる仕掛けを作ることが、数字を底上げすることになりそう。

(2-1) 特典マーケティング

今回の映画では、特典も大きな話題になりました。私も第一弾の特典はちゃっかり入手しているのですが、ここでしか得られない情報があったりと、とにかく気になる…!!

「鬼滅の刃」など、直近の爆伸びしたアニメ映画はこの施策を取り入れているようです。これが欲しいがために複数回見に行く大きな動機付けになります。何より、「限定」「先着」というみんな大好きワードをフックに、しかも全国でチャンスはある、というのが良い塩梅。

(2-2)「音楽」を主軸にしたストーリー展開

今回の映画の主軸を「音楽」に据えたのは、天才だと思いました。

ストーリー自体がとにかく魅力的で「え!びっくり!」系だと、1回で満足してしまいます。最近は手元にスマートフォンという最高のデバイスがあるので、コンテンツのために「わざわざ映画館に行く」という行為はかなり難しいと思っています。ストーリーがネタバレ読めばわかるのなら、その必然性も弱くなってしまいます。

今回の映画はもちろん「シャンクスという大物のヒントがあるのかもしれない」「シャンクスや赤髪海賊団の活躍を見たい」という部分がメインにはありつつ、一度見た人はわかると思うのですが、「映画館の大迫力の音響や映像で、ウタ(adoさん)の歌を聴きたい…」というのも大きな動機付けになっています。実際にSNSで、「MV」としてまた見に行くだけでもペイするよね、という声も結構目にします。

(3) 圧倒的なコラボ数

とにかくあらゆる領域でタッチポイントを作りまくる、「音楽」を切り口に新規顧客を開拓する、「すごい!」と思いました。

それぞれの施策がどのターゲット群向けに意図されたものなのか考えるだけでひと記事いけそうなくらいです。

(3-1)adoさんと楽曲

コラボというか、前提というか、まずはやはりadoさん。主要キャラクターの「ウタ」の楽曲を歌い上げる歌姫。本当にウタがadoさんで良かったという声もたくさん聞きます。「うっせえわ」のイメージが強いですが、今回の映画ではしっとり系の曲も本当にうまく歌い上げていて、全部で7曲を聴かせてくれました。

この動画だけでもYoutube上でかなりの再生回数になっています。

そして、7組の豪華アーティストたちが同作のために楽曲提供。中⽥ヤスタカ・秦 基博・Vaundy・Mrs. GREEN APPLE・FAKE TYPE.・澤野弘之・折坂悠太。このチョイスもうまくできているなあと思いました。それぞれのファン層にもしっかり届いていそうです。

また、このウタつながりでロッキンにも進出、グッズを発売してブースがありました。実際にフェスの会場ではワンピースのものを身に着けた人をちらほら見かけました。

ちなみに、ゲストとして山田裕貴さんや霜降り明星の二人を起用したのも素敵だなって思いました。

(3-2)ゲームとのコラボ

また、コラボ施策としては、6つの有名ゲームアプリとのコラボも見逃せません。公開日もしっかりズラして、有名どころとどんどん組んで、スマホゲームやっているという嗜好性もあり、ワクワクします。実際にここはプレイして確認したわけではないので、今後ちゃんと勉強せねば。

(3-3)あらゆるジャンルとのコラボ

他にも、コンビニ・お弁当・下着・銭湯・メディカル系・お菓子などなど、何個あるの!?という怒涛のコラボ。とにかく接触回数が多い!

あらゆるターゲットに対して、「単純接触効果(ザイアンス効果)」を高めることができていそうです。

ザイアンス効果とは、最初は興味がなかった物事や人でも、何度も接するうちに、好きになっていく心理的現象のことを指します。別名「単純接触効果(mere exposure effect)」「熟知性の原則」とも呼ばれます。

例えば流行の歌はラジオ、テレビCM、友人知人とのカラオケなど、生活におけるあらゆる場面で流れるため、望まなくても何度も聴くことになります。

そのため、初めは全く興味がなかろうと、そのうち自分もカラオケで歌うようになるほど、その歌を気に入ることがあります。これがザイアンス効果です。

ザイアンス効果(単純接触効果)とは?マーケティングに利用できる心理学を分かりやすく解説


(4)オンライン/ソーシャルでの戦い方

(4-1)動画でのマーケティング

今回、個人的に気になっていたのが動画でのマーケティング。他にもたくさんオンラインの施策は走っていましたが、ここでは動画に注目しました。

まずはYoutubeチャンネル。ここがすごいことに夏前に気が付きまして、そこから私も漫画を読みなおすことになりました。

チャンネル登録者数を見ても、夏前から加速し、映画公開に合わせ150万を突破

youtubeチャンネルの登録者数の推移

コンテンツとしては、過去のストーリーのまとめ動画やクイズの動画などでファンの気持ちの底上げをしていきつつ、映画向けにもかなりたくさん仕込んでいた印象です。ストーリーの中の世界と現実とをつなげるようなウタの「配信」のコンテンツや、尾田先生描き下ろしの絵のShort動画など、刺さる施策を続々投下。

また、adoさんのアカウントとも連動し、楽曲を時差で少しずつ公開していく作戦を展開。Youtube内ではかなりいろいろ施策が走っていました。

(4-2)UGC・口コミの最大化

また、冒頭で説明しましたが、SNSでの投稿数はとにかくかなり多くなっています。「考察動画」などYoutubeでファンが様々な動画を上げたり、各種レビューサイトで感想が生まれたりと、様々な口コミもあふれています。

その中でもここでは、映画そのものではなくUGC(ファンや視聴者からの発信コンテンツ)が生まれる仕組みも発見したのでご紹介です。

TikTokが大きなトレンドの震源地であるため、ウタによる振付動画をTikTokとYoutubeのShortで公開。思ったよりは大きな波になってない気もしますが、こういう仕込みはとっても大切。

@onepiece.staff.official

新時代、みんなで踊ろー! サビの振り付け動画を公開したからダンスチャレンジしてみてね! #OP_FILMRED #ウタ #ONEPIECE

♬ オリジナル楽曲 - ONE PIECE official - ONE PIECE official

また、電車などのジャックは王道ですが、しっかりUGCを生める施策。Twitterでも実際に投稿多数!
https://twitter.com/search?q=%E9%9B%BB%E8%BB%8A%E3%80%80%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%B9&src=typed_query

電車内には赤をキーカラーにした映画の告知広告に加え、広告のQRコードを読み込むことで、原作1話目を読むことができるポスターを掲示されています。

今回、情報の発信や波の作り方はすごく巧妙にやっていて、世界同時配信の番組を展開し、世界中で盛り上がれるようにした施策も面白いなあと思いました。

このUGCを生む施策は他にも結構仕込まれている印象で(カードとかリアルのモノを打ちまくってるのも然り)、この辺はもっと色々見てみたいなって思いました。もちろん、Twitterのこの👇仕込みも。


終わりに

ということで、本当にかなりの数の施策打っているワンピース。映画単体でも相当ですし、本編の盛り上がりの山と掛け合わせで大きなトレンドになっています。

映画の最大化のために、ターゲットごとに狙いを定め、チャネルをまたいで徹底的に張り巡らし、とにかくやることちゃんとやるぞ!という気概を感じました。

そして、いよいよ最終章も近づき、「ワンピースファン」とはさすがに恥ずかしくて言えない私でさえ、ちょっと寂しい感じとワクワクとが入り混じる複雑な感情です。これだけ多くのファンに届く作品って本当に素敵だし、漫画やアニメの力・音楽の力ってすごい!

私は「食べチョク」というサービスのマーケティング責任者をしていて、今回色々見る中で、本当に刺激を受けました。世の中にもっともっと届けられるように、頑張るぞ~!

ここまで読んでいただきありがとうございました!!

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