2015.10.31 和装前撮り【後編】

よろしければ前編中編も合わせてお読みください。

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スタイリストマシーンSさんによる私の支度は90分ほどで終わり、隣の控え室で夫の着付けが始まった。
待っている間、母にスマホで色々な角度から写真を撮ってもらった。結婚式当日までに、日常のスナップ写真を集めたミニアルバムを作ろうと思っているので、プロに撮ってもらう前の気取らない姿をスマホに残しておきたかったのだ。
この時に気付いたが、和装は立ってるより座ってる時のほうが苦しい。腰まわりの負担がかなりキツかった。気分が悪くなる人がいるのも納得だ。

そうこうしていると、「新郎さま、お支度できましたー」とSさんの声がして、羽織袴をまとった夫が姿を現した。お互いの和装姿を初めて見た感想は下記の通り。

夫「新人演歌歌手みたい」
私「なんか襲名した人みたい」

…情緒もへったくれもない。

私たちはSさんに促され、ブライズルームを後にした。いよいよ、撮影の時間である。

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和装用のスタジオは、ブライズルームのすぐ斜め向かいにあった。

「どうもどうも、おめでとうございますー!お久しぶりですね!」
なんと、ラッキーなことに、担当のフォトグラファーは、ブライダルフェアで説明をしてくれたTさんというあの陽気なお兄さんだった。
「いきなりですけど、はじめに新婦さんのワンショットを撮ります。20分くらい、ここで固まったまんまだから、苦しくなったらすぐ言ってね」
と言うが早いか、Tさんは私に扇の持ち方をレクチャーし「じゃ、とりあえずそこに立ってこちらを向いて」と、テストショットを撮り始めた。

と、その時、到着した友人ふたりがSさんに連れられてスタジオにやってきた。駆け寄りたかったが、なにしろ20分くらい固まっていなくてはならないので、突っ立ったまま手を振った(今考えたら失礼すぎるだろ…)。

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予告どおり、私のワンショットから撮影が始まった。これが、なかなかキツかった。身体を斜め横に向けた状態で、顔は正面(カメラの方向)を見なければならない。何度も身体の向きが顔についていきそうになり、その都度Tさんが修正してくれた。Tさん、失礼ながら容貌や口調はかなりイケイケなのだが、私が動いて乱れた着物の裾を直す仕草はさすがプロ、慣れたものだった。

次に夫とのツーショット。向かい合ったり、背中合わせになったり、何かおしゃべりするように、などとめまぐるしく指示が飛んだ。それが終わると、母や友人とも一緒に撮影してもらった。
扇を開いて持ったり、少し目線を外したようなワンショットを再度撮り、《20分固定状態》は終わった。いやー、しかし、疲れたなあ……

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続いて夫のワンショットを撮ると言うことで、私は一旦椅子に座らせてもらった。この時になって、やっと友人たちと話が出来た。綺麗だねと言ってもらえて、なかなか照れくさかった。
夫はというと、緊張もあってか扇や番傘の持ち方がなかなか覚えられず、苦戦していた。彼は左利きなので、一般的な右利きの人が取るポーズが難しいようだったが、Tさんは根気強くレクチャーを挟みながら撮り直してくれた。

そして夫は、まさかの無茶ブリをくらう。

Tさん「それじゃ新郎さん、小道具置いて、アドリブでポーズしてみましょうか」

夫「えっ」

Tさん「自由にね、何でもいいですよ」
夫「自由って言われてもなぁ…」

私は固唾を呑んで見守った。
夫はしばらくギクシャクと手足を動かしていたが、ふと思いついたように「じゃあ、五郎丸ポーズやります」と言った。

全員「(五郎丸!?!?)」

ギャラリーが唖然とする中、夫は突如あのルーティンの構えをとり、Tさんも「おっ、いいじゃない。一歩間違ったらカンチョーになるから、手の角度とか気を付けてね」とか言いながらパシャパシャ撮影していた。
ラグビー経験者でもなんでもない、もっと言えば万年帰宅部だったという夫が、真剣に五郎丸ポーズをしている姿を見ていると、私はなんだかツボにハマってしまい、大声で笑ってしまった。

羽織袴と白無垢という晴れ姿で、不可解なポーズをとる夫と腹を抱えて笑う妻。これが私たち夫婦である…。

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その後は背景をそれまでのえんじ色から金色に変え、様々なポーズで撮ってもらった。背景が変わるだけで、雰囲気が全然違う。
楽しかったのが、海外のウエディングフォトでよくある、大きな木製のフレームを使った撮影。二人で顔を覗かせたり、(恥ずかしかったが)見つめ合ったり密着したり、色々と動きが出て良かった。

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時間はあっという間に過ぎていき、後は今回のメインイベント「折り鶴シャワー」の撮影を残すのみとなった。

和装前撮りの時にも、千代紙のガーランドやボールブーケなど、ハンドメイドの小物を持参する人が多いと聞くが、何せ私はバカがつくほどの不器用。簡単に出来るものはないか…と調べているうちに、小ぶりな折り鶴をたくさん折って、フラワーシャワーの要領で浴びせてもらう、「折り鶴シャワー」にたどり着いた。

そんなわけで、撮影の二週間ほど前から、密かに千代紙を買って鶴を折っていたのだ。
子どものくせに出不精で、家の中で塗り絵や折り紙ばかりしているような幼少期を過ごした私。鶴の折り方は手に染み付いている。夜な夜なテレビを見ながら、50羽くらいは折ったと思う。
ちなみに千代紙だが、100均で1セット、文房具店で2セット購入した。100均のものはやはり質がイマイチで折りづらかったので、文房具店で買うことをおすすめする。

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折り鶴シャワーの撮影は、洋装用のスタジオがたまたま空いているということで、移動して行うことになった。
白を基調とした内装で、壁にツタが絡まっていたり、 床はタイル張りになっていたりと、私好みのナチュラルな空間だった。洋装も撮ればよかったかなあ…などと雑念がよぎったが、それは挙式の時のお楽しみ!

折り鶴は、母と友人たちが投げてくれることに。鶴を投げる角度や私たちの目線などTさんの指示を受けて、いよいよ本番。
私たち夫婦の身長差が30cm近くあることもあり、やはり投げる角度が難しかったようで、投げる側はかなり苦戦していた。TAKE5まで撮って、やっと私たちもTさんも満足いく折り鶴シャワーの写真が撮れた。
夜なべで折った甲斐があったよ…(ちなみに、夫は二羽折って飽きてた)。そして、母と友人たちに感謝感謝である。

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Tさん「それじゃ最後に、結婚指輪のアップを撮りましょうか」

きたっっ!指輪のアップ!!

シャワーで使った折り鶴を床に散りばめて、それをバックに撮ってもらった。指の産毛を剃っておいて本当によかったと思った瞬間である。

ラスト一枚は全員で集合写真を撮ってもらい、和装スタジオ撮影の全スケジュールが終了したのだった。

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撮影データは一週間しないうちに自宅に届けてもらえて、現在アルバムの完成待ちです。

式当日はウエディングドレスしか着ない人も、もし和装(もしくはカラードレス)を着たい気持ちがあるのなら、前撮りをするのは割と合理的だなと、私は思いますよ。
スタジオにもよると思うけど、極端な話、仕事帰りにサクッと撮れたりするしね。

余談ですが、夫の五郎丸ポーズ。データ納品の際に見てみると、ラグビーボールの画像をコラージュしてくれてました。Tさんの粋な(?)計らい。一生残るんだなあ、これが…。

#写真 #結婚 #和装 #結婚準備 #前撮り

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