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海の日

海の日だから、海のほうへ行こう。

どちらからともなくそういう話になって、夫と私はお昼前に自転車で出かけた。

途中、ラーメン屋に寄って腹ごしらえをした。
二人ともお腹がぺこぺこで、夫はラーメンとライスと餃子のセットを、私はラーメンとライスと唐揚げのセットをがつがつと食べた。
私達の隣のテーブルで、作業着姿のお兄さんが二人、同じようにがつがつとラーメンを食べていた。現場仕事の休憩時間のようだったけれど、片方のお兄さんが堪えきれなくなったのか、ビールを注文した。店のおばさんは「えっ、大丈夫なの?」と言いながら、瓶ビールを差し出していた。
女性客に配慮してか、スープよけの前掛けもあり、大らかな店だった。また行くと思う。

たらふく食べた後、しばらく南へ自転車を走らせると、橋と運河が見えてきた。
橋の上から運河を眺めたが、周りは工場と倉庫ばかりで、風情はあまりなかった。
「向こう岸に渡ったら、砲台の跡があるらしいから、そこへ行ってみよう」
夫はそう言った。

橋を渡り、うろうろしていると、古い商店街に出くわした。
祝日なので、ほとんどの店は閉まっていたが、小さなスーパーが開いていて、スポーツドリンクを買った。
スーパーを出てまた少し行くと、駄菓子屋があった。入り口の前にガチャガチャの販売機が置かれており、店の中には長テーブルと椅子があって、三年生くらいの女の子が数人談笑していた。駄菓子屋はいつの時代も小学生の社交場なのだ。なんだかとても懐かしかった。

レトロな商店街を過ぎ、夫のスマホのマップを頼りに、また走り出す。いざ砲台跡へ…と思ったのだが、そこへは、海沿いの工場群の中の複雑な道を通り過ぎて行かなければならないことが判明した。
夫と私は、おそるおそる工場のある方へと入っていった。

祝日も汗水垂らして働く工場のおじさん達が、突如現れた自転車の二人組を見て怪訝そうな顔をしている。
行けども行けどもメタリックな工場の建物しか見えないし、もしかしたら不法侵入してしまっているのかもしれない。

時刻は14時。一番日が高い時間帯で、体力の消耗も激しい。さっき手に入れたばかりのスポーツドリンクももう残り少ない。結局、砲台跡は諦めて帰ることにした(後日、この砲台跡は○菱重工の持ち物であり、見学予約をしないと入れないことがわかった)。

海の日だから、海のほうへ行ったけれど、海は見られなかった。
でも、私達夫婦はこうやって当て所なくぶらぶらするのが大好きで、たまに連れ立って出掛ける。
偶然入った店がとても面白かったり、思いもよらない光景に出会えたりする。今回の収穫は、あの古い商店街。ひなびた感じがぼんやりとよかった。
これからもぶらぶらは続けていきたい。

ラーメン屋でビールを飲んでいたお兄さんは、果たして午後から真面目に労働できたのだろうか。

#海の日
#散歩
#自転車
#夫婦

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