2015.10.31 和装前撮り【中編】

思いの外長くなってしまったので、3回に分けることにしました。
前編はこちらです。

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私のメイク・ヘアセット・着付け(更に夫の着付け)はSさんという女性が担当してくれた。年齢は私と同じくらいで、これぞ美容のプロ!という感じのスタイル抜群美人であった。
スタジオのブライダルフェアや契約の書類を貰いに行った時にも、メイク道具を携えて受付とブライズルームを忙しそうに行き来しているのを見かけたので、この人きっと「デキるスタイリスト」なんだろうなー、と思っていたのだ。

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Sさんはまず私と母を衣装部屋に案内し、ここでレンタルできる白無垢のカタログを見せてくれた。

ランク別に6着あり、最もシンプルなものは私たちが申し込んだ【和装基本プラン】内でまかなえるが、あとの5着は素材や装飾のランクが上がるごとに費用が1万円ずつプラスされていくという、驚愕のシステムであった。

「ちなみに、入り口のマネキンが着ているのが一番上のランク(プラス5万円)のものでして、襟や裾のところに紅色が入るんです。紅白でおめでたいですし、人気なんです♡見てくださいっ、かわいいでしょう♡」

Sさんはにこやかに説明してくれたが、私はプラン内で充分かなーと思っていた。全く、ブライダル業界の人たちときたら、揃いも揃って笑顔で恐ろしいことを言うんだからっ!
それに、実際の衣装を見せてもらうと、いわゆるランク上位のもののほうが、安っぽく感じたのだ。細部は確かに凝っているけれど、何となく写真映えしないように見えた(母も、撮影が終わってスタジオを出た後、同じようなことを言っていた)。
結局私は、プラス1万円の衣装を選んだ。打掛は純白でなく若干生成色をしていたが、婚礼衣装定番の鶴の文様が一番美しく見えたのがそれだった。支払額は増えてしまったが、こんなこともあろうかと、見積もってもらった金額よりも2〜3万余分に持ってきてよかった…。ホッ。

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そうと決まれば、早速ブライズルームでのメイクとヘアセットが開始された。母も私の支度を後ろで見学することになった。

最初にヘアカタログを渡されて、髪型のイメージを聞かれたが、私は特に好みはないので、無難なアップスタイルにして欲しいと告げた。
Sさんは私の髪をしばらく観察してから「かしこまりました。でも、新婦さまの髪の長さでは、アップに結い上げるのがまだちょっと難しいようですので、付け毛を使いますね」と言った。
私は長年ショートボブだったが、結婚を前提に同棲を始めた昨春から髪を伸ばし続けている。自分史上最長じゃないだろうか。もう既にかなりの長さになって、どんな髪型でもできるのだと思い込んでいたが、どうやらまだまだのようである…。

準備のため一旦部屋を離れ、様々な器具を手に戻ってきたSさんは、私の髪に素早く5,6個のホットカーラーを巻きつけ、その後顔に下地とファンデーションを施し、アイメイクを始めた。機械のような身のこなし。
ここのスタジオは、撮影予約を一時間刻みで受け付けているため、スタッフの方々は常に時間との戦いなのだ。ドジでのろまなカメの私には、絶対無理な仕事だよな。

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Sさんは私の顔と髪を作り上げながら、「お式のご予定は」「どちらの式場ですか」「ウエディングドレスはもうお決まりですか」などと色々聞いてくれた。

私「あの、ドレス、まだ決まってないんですけど、そろそろ見に行ったほうがいいですよね…」
Sさん「そうですねえ、お式、来春でしたら、そろそろ行きましょうか(苦笑)」
ひいいっ、苦笑いされたっ。

世間には、挙式の日取りと場所が決まった瞬間からドレスショップを巡る人もいるらしいから、やっぱ私って出遅れてるんだなぁ。まあ、世間とやらに合わせるつもりは毛頭ないからいいんだけど、この前撮りが終わったら、式当日の衣装のこともやり始めないとね。

などと考えてる間にも、スタイリストマシーンSさんはテキパキ手を動かし、メイクと髪のアップが完成していた。
お嫁さんというよりは、若おかみのように見えなくもないが、心なしかいつもより凛とした顔になっている。
Sさん「いかがでしょうか」
私「はい、充分っス…ありがとうございます」
Sさん「それでは、着付けに移りますので立ち上がっていただきますね。帯を締めるとお腹や腰のあたりがかなり苦しくなります。気分が悪くなったらすぐにおっしゃってください」
この“締め付け問題”に関しては、契約の時に受付のお姉さんにも念を押されたが、脂肪がたっぷりあるので多分大丈夫だと思います(笑)

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実を言うと、着付けをされていた時のことはあまり覚えていない。とにかくSさんが私の周りをグルグル回りながら何かを留めたり結んだり締めたりしていた、という印象だけが残っている。そういえば、途中で他のスタイリストさんが夫用の肌着と足袋を取りに来たかもしれない。気付くと、私の花嫁支度はほぼ完了していた。

仕上げに、再度椅子に座り直して、花の髪飾りを選んだ。白を中心に、私の好きな緑色と、女らしさを出すためちょっとだけピンクも入れてもらった。

ここまで出来上がると、流石に母は少し感極まっているようだった。私も感動はしていたが、人の容姿って短時間でここまで変えられるものなのか…という、スタイリストへの尊敬の念に近い感情だった。

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「はい、お疲れ様でした。では、隣の部屋で新郎さまのお支度をしますので、しばらくお待ちください」
別におべんちゃらを期待していたわけでもないが、お似合いですとかお綺麗ですとか常套句を言う間もなく、Sさんは夫の元へ行ってしまった。彼女は本当にストイックに仕事をしている。かっこいいな。なんとなく派遣で働きながら、うだうだ毎日過ごしている私とは大違いである。

〜つづく(次で多分、終わります)〜

#結婚 #写真 #和装 #結婚準備 #前撮り

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