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「あつまれ!!ぶどうの森グランピングフィールド」を体感する

東京・三鷹を拠点に、旅行業のノウハウを活かしながら「三鷹オーガニック農園」を運営し、2021年には「三鷹オーガニック農園」内に、ぶどう棚を活用した「あつまれ!!ぶどうの森グランピングフィールド」をオープン。ますます旅と農の融合が生まれ始めている中、note第三弾の記事は、三鷹・武蔵野エリアの可能性や地域と連携していく展望についてお話をさせていただいています。

三鷹市上連雀。太宰治の足跡をたどることができる下連雀からほど近くにあり、現在は閑静な住宅が立ち並ぶ上連雀に、実はブドウがたわわに実るグランピング施設があるという。
東京でキャンプ?焚き火?BBQ?……なかなか想像できないから、実際に体験してみることに。

友人たちと三鷹駅で集合し、バスに揺られること10分。件のグランピング施設は、「三鷹オーガニック農園」の中にあった。畑を抜けると、そこには一面に広がるブドウ棚が待っていた。葉っぱは黄色く色づいている。幻想的なこの空間こそが「あつまれ!! ぶどうの森グランピングフィールド」である。

農園スタッフの亀本さん

「メエ!」……いきなり3頭のヤギがお出迎え。スタッフの亀本知美さんが、案内をしてくれる。

亀本さん(以下、亀本) この子たちは、草刈り隊のヤギたちです。滞在中、みなさんを見守ります。よろしくお願いします。まずは、ご一緒にテントを張りましょう。そのあと、畑に野菜を採りに行きませんか?BBQで使う食材を収穫できますよ。

無事にテントを設営した一行は、畑へ。ここは普段、貸し農園やシェア畑、農業スクールなどの実践の場となっている。軍手をはめて、おっかなびっくり畑の中へ。うわ、土がふかふかだ……。
キタアカリ、アンデスなる品種のジャガイモと、黒大根を収穫。柔らかい土をはらうと、すぐに野菜が顔を出す。

畑から戻ると、BBQの準備がされていた。あちらでは、薪割りに挑戦する友人。こちらでは、BBQのために火を起こす人も。意外とそつなくこなすのね。友人の新たな一面を見る。

BBQの食材には、吉祥寺の有機レストラン「Taihiban(タイヒバン)」で扱う牛肉も!乳酸菌たっぷりの飼料で育った健康な牛の肉で、香りがいい上質な赤身。ときめきが、止まらない。

畑で収穫したばかりのキタアカリ、アンデス、在来種の黒大根がプレートに並ぶ

BBQも終盤に差しかかった頃、亀本さんがピザづくりセットを持ってきた。

こだわりの素材を使ってピザ作り。本格ピザ窯で焼く、までを一貫して体験できる。

焚き火にあたっておしゃべり

お腹も心もいっぱいになったところで、焚き火にあたる。ずっとわたしたちをサポートしてくれた亀本さん。彼女のルーツを知りたくなって、特別に仲間入りをお願いする。

亀本 東大阪の都会で育ったので、田舎がなかったんですよね。以前の仕事はアパレル業界で、東京で服屋の店長をしていました。常に右肩上がりを求められることにちょっと疲れまして。サスティナブル(持続可能)なことをしたいな、と思ってたんです。
そんなとき「三鷹オーガニック農園」が、ボランティアで農業応援隊を募集するっていうのをインターネットで見つけました。いまから5年前(2017年)くらいかな。そこから、農業スクールに入って、貸し農園で野菜を育てて過ごしていたら……いつの間にかスタッフになっていました(笑)。

火を囲んでいると、話が深くなっていくのはなぜだろう。亀本さんの佇まいから、心の中に灯る生き様を垣間見たような気がして、彼女のことをもっと知りたくなっていた。

亀本 循環しているものに惹かれるんです。ここはゴミが出ないんですよね。みんな土に還るというか。虫や微生物が働いて、分解してくれます。普段は見えにくいものでも、空気の中にも水の中にも菌や微生物がいて、みんなつながってるんだなって。ここに来てから思うようになりました。
やだ、しゃべりすぎましたね……。

そう言うと、亀本さんは片付けをしに行ってしまった。

誰かが「あ、今夜は満月!」と叫んだ。どれどれ、と皆で空を見上げる。東京の空も、広いんだねえ……。

「あつまれ!! ぶどうの森グランピングフィールド」ができるまで

翌朝、テントから出るなり、ヤギと目が合った。
「おはようございます、よく眠れましたか?」と声をかけてくれたのは、オーナーの金子晃さん。

金子さん(以下、金子) グランピングをやってみようと思ったのは、農園の新たな可能性や活かし方を考えていたときでした。東京都の、自然を生かした新たなツーリズムを開発するプロジェクト「Nature Tokyo Experience」を知り、助成制度に挑戦しました。2019年、モデルプロジェクトに選んでいただき、この施設の基礎ができました。

もともと金子さんは「旅倶楽部」という旅行会社を営み、三鷹の地で江戸時代から続く実家である農園を受け継いだ。農園開発と旅行・観光という独自の考えから生まれたのが「あつまれ!! ぶどうの森グランピングフィールド」だ。
(金子さんの農園開発×旅行・観光の考えは、ワクワクする旅行を提案する「旅倶楽部」を参照)

金子 都市農園にはもっとできることがあるはずだと思うんです。たとえば、防災キャンプ。火起こしや屋外で過ごすキャンプに慣れておくことで、有事の際の不安を減らせるんじゃないかと。
あとは、食べ物がどこから来るのかを子どもたちに知ってもらいたいですね。野菜づくりはもちろんのこと、ゆくゆくはニワトリが鶏肉になるまで、なんていうことを学びながら自らチャレンジしてもらいたいです。

都市農園という立地を活かしつつ、農業の新しいスタイルに挑戦し続ける金子さん。このグランピングフィールド、どんな人が利用する未来が見えているのだろうか?

金子 同じように都市農園をお持ちの方に、どんどん視察に来ていただきたいですね。うちがやっている農業スクールには、毎週末遠方から通ってくる方も少なくない。日本中探してもここにしかないことをやっている自負はありますので、誰でも、どこからでもぜひ来ていただきたいですね。

***

長年住んだ三鷹の地でまさかキャンプをすることになるとは、わたし自身思ってもみなかった。けれど、都市と自然のバランスがいいまち、三鷹の心地よさを改めて実感。まちを新しく捉え直すには十分すぎる体験をさせてもらった。
日常と非日常が交わった、不思議な時間だった。
チェックアウトを済ませ、グランピングフィールドをあとにした友人たちも、温泉に入ったあとのような、すっきりとした凛々しい顔をしていた。

(概要)
あつまれ!! ぶどうの森グランピングフィールド
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀9-16 「三鷹オーガニック農園」内
メール:info@budonomori.com
Instagram:@budonomori_glamping_field

Text by Azusa Yamamoto
Photo by Taro Ikeda
※この記事は東京観光財団「Nature Tokyo Experience」のプロジェクトの一環で制作いたしました。

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