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ワクワクする旅行を提案する「旅倶楽部」

東京・三鷹を拠点に旅行業を中心に展開する株式会社旅倶楽部。代表の金子晃は、旅行業のノウハウを活かしながら「三鷹オーガニック農園」を運営し、都市部では他にない体験プログラムを多く提供しています。2021年には「三鷹オーガニック農園」内に、ぶどう棚を活用した「あつまれ!!
ぶどうの森グランピングフィールド」をオープン。ますます旅と農の融合が生まれ始めています。
これまで会社の情報発信はInstagramを中心に行っていましたが、会社や施設のことをより深く知っていただき、これから多くのお客さまにお越しいただくために、この度自社のnoteを開設しました。第一弾の記事は、三鷹市出身のライター・山本梓さんに取材・執筆いただきました。自己紹介の代わりとなる記事になったかと思いますので、最後までお読みいただければ幸いです。

東京・三鷹駅からバスに揺られて約10分。閑静な住宅街のなかを歩き、向かったのは「三鷹オーガニック農園」。園内には畑のほかにぶどう棚が広がっていて、ぶどうの葉は紅葉している。なんだか日本じゃないみたいだ。長年三鷹に住み、地元と称している筆者も「こんなところにこんな素敵な場所があったなんて……!」と驚きとともに、これまで知らなかったことを悔やむ。

三鷹オーガニック農園のブドウ棚。 

旅行会社「旅倶楽部」とは

無農薬、有機栽培にこだわりをもつ「三鷹オーガニック農園」。面白いのは、この農園を運営しているのが「旅倶楽部」という旅行会社の代表であること。
代表の金子晃さんが迎えてくれた。

「旅倶楽部」代表の金子晃さん

金子さん(以下、金子) 旅行業に進むきっかけですか? ……ちょっと変わってるんですよ。学生時代に家庭教師をしていただいた女性と、家族ぐるみで仲よくしていたんですね。「先生」のお父さんにもかわいがってもらっていまして。「将来は旅行関係か警察官になれ!」ってよく言われていたんです。お父さんはどちらにもあこがれを持っておられたみたいです。会うたびに言われるものだから私もすっかりその気になって、旅行会社か、フランス軍の外国人部隊かで悩んでました。……なぜかフランスでしたね(笑)。
で、旅行会社を受けることになり、面接で「特技はけん玉です!」って答えたら、そんな人はいなかったんでしょうね。面白いっていうことで旅行業の世界に進むことになりました。
せっかく入ったんだから、一生懸命やろうってことで、人の3倍仕事しました。営業をやっていたんですけど、3か月でトップセールスマンになりました。そこからますます必死に働いて、年間で億単位の売上を出せるようになって。「稼いだ分をください」って社長に言ったら、君が社長になれば? と言われて、3年目で独立して、その会社のフランチャイズになり「旅倶楽部」をつくりました。……こんな話でいいんですか?
 
こちらの好奇心を埋めるには十分すぎるほどのエピソードをいきなり披露してくれた金子さん。やはりタダモノではなかった……!
「旅倶楽部」のことをさらに聞いてみることに。
 
金子 もともとは、旅行業を専門にやっていました。大学生の合宿や団体旅行ツアーを販売したり。今のような農園を運営するスタイルになったきっかけは、2011年の東日本大震災です。関東もかなり揺れて、これまでの旅行に対する需要の変化があると感じていました。そんなときに、そういえば実家(うち)、畑あったなと思い出して。僕がやらないと誰もいないので、ゆくゆくは継ぐつもりではいたんですけどね。
 
金子さんの実家は、江戸時代から代々漢方薬の問屋を営んでおり、農園に隣接する倉庫も、かつては漢方薬を管理するための蔵の名残りであるという。当時は、畑で漢方薬に使う植物の栽培をしていたそうだ。
それにしても、農と旅行がどこでクロスしたのだろうか?

園内には3頭のヤギが

旅行業の視点で農園開発

金子 「ワクワクする旅行を提案する会社」をモットーに旅倶楽部をやってきました。旅行のカタチが変わっていくと感じはじめていたとき、提案そのものを他人任せにしたくないと思うようになっていました。自分で考えて、“自分クオリティ”にとことんこだわったものを提案したいと思って考えたのが、農園開発事業でした。
経験や体験に重きをおく旅行会社としての視点を、農園の開発に活かせると思ったんです。収穫や動物とふれあったり、ピザ窯で焼いたピザを食べたり。たとえば「週末の大人のクラブ活動」みたいに人が集える場所になったらいいなと、農園を整備しました。
 
自分クオリティとは、「どうやったらお客さんにワクワクしてもらえるか?」を、常に考えること。人が必ず使うトイレや水回りが汚いのは嫌だという金子さん。たしかにトイレは新しくて掃除も行き届いていた。自らの「大事」を妥協しないのが、金子さんのクオリティなのだ。
現在、旅倶楽部および三鷹オーガニック農園を経営する金子さんは、自ら旅行業と農業を営みながら、貸し農園やキッチントレーラーでのカフェ営業、農園でキャンプができるグランピング事業のほか、3つのスクール事業を展開している。

グランピング事業の様子

スクール事業①「安全な野菜づくりのカルチャースクール」

旅行業界でキャリアを積んできた金子さんは、「ほんとは自分には、農作業は向いていない」と言う。
「だけど僕がやらないことで、100年続いてきた畑をつぶすわけにいかない。じゃあ、やってくれる人に来てもらえばいいやって思いついたんです。2009年に、オーガニックに特化した農業スクールをはじめました」
 
金子さんが手がけるスクールは、くりかえしタネを取って(自家採種)栽培する「在来種」、「固定種」を使っている。これは、これまで自治体や農協の指導に沿った慣行農法が主軸になっていた農業界では出にくいアイデアだ。
 
金子 種が落ちて、発芽して、木になって花が咲いてまた種ができる。そうやって、昔から農家さんたちが大事に守ってきた種を、分けてもらう旅からスタートしました。京都の丹波篠山、大原、埼玉の飯能、小川町……『種キャラバン』って名付けてね、農家さんのところをまわりました。
 
金子さんの奮闘の甲斐あって、在来種・固定種から栽培する「安全な野菜づくりのカルチャースクール」がスタート。栽培が難しいとされる在来種・固定種での有機農法を学び、プロの農家になるための本格的なスクールだ。
一年をかけて学んだあとは、貸し農園で自分のペースで栽培ができる。スクールの卒業生が貸し農園を使えるというしくみになっている。

敷地には、貸し畑が広がる

スクール事業②「みたか有機やさい塾」

一方で、初心者が有機栽培にチャレンジできるスクール「みたか有機やさい塾」を開催。有機栽培で知られる埼玉県・小川町の「霜里農場」の協力のもと、小川町で長年続く「しもざと有機やさい塾」と同じ内容が受講できる。
 
金子 霜里農場は、有機農家の最高峰です。僕は10年間通って、有機やさい塾のお手伝いをさせてもらっていました。そして、やっと『この塾を三鷹でもやらせてください』ってお願いすることができたんです。
 
長年かけて、思いを伝えつづけた金子さん。その情熱はどこからくるのだろうか?
 
金子 僕は運がいいんですよ。たまたま都市のなかに畑をもつ家に生まれて。それが100年も続いているわけですからね。ここからビジネスとして収益を上げていくことも大事だと思っています。いつも経営するという目線を忘れないようにしています。

スタッフの亀本知美さん。しっかりとやさい塾の運営をサポートしてくれる

スクール事業③「ぶどうの学校」

おまたせしました。やっと、ぶどうの登場です。我々の頭上にあるこのぶどう棚。実に5年間かけて、ぶどう苗の栽培方法や土づくり、ぶどう棚づくりから剪定まで、ぶどう栽培のあらゆることを学ぶのが「ぶどうの学校」だ。
自分たちでつくったぶどうでナチュールワインをつくるまで、という一連を学びの場とするときに、新たなキーパーソンが登場する。武蔵野市・吉祥寺で有機レストラン「Taihiban(タイヒバン)」を営む湊泰樹(みなと・たいき)さんだ。もとは建築設計の世界で、空間のデザインを生業にしていた湊さんだが、地元である富山県でぶどう農家と出会い、どんどん好きになってしまい(ぶどうも、農家のおじいちゃんのことも)、気がついたらぶどう栽培をしていた、というこちらもツワモノだ。

「ぶどうの学校」で選定について話す湊泰樹さん

金子さんが「タイヒバン」の噂を聞きつけ、お店に突撃訪問したことから、湊さんとのご縁が生まれた。
二人が出会ったことで、「三鷹オーガニック農園」がさらに進化していくことに。それはまた、次のお話で。
 
Text by Azusa Yamamoto
Photo by Taro Ikeda
※この記事は東京観光財団「Nature Tokyo Experience」のプロジェクトの一環で制作いたしました。

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