【キャリア】「大手はレールから外れた人材を嫌う」という先入観が完全に間違っていた話

こんにちは。ぶちと申します。珍しく今日はキャリアについての話をします。

僕は少し前まで、よくある「ベンチャーは多様な価値観やレールから外れた人材を受け入れているし、大手企業は古臭い価値観で凝り固まっていてレールから外れた人間を嫌う」という二元論的先入観を持っていました。まぁ先入観といっても、ガチで強くそう重い込んでいたわけではなく「なんとなくそういうものなのかな」程度のものですが。

今回、転職先を探していくうちにその偏見が完全に真逆のものであるということがわかったので記事に書き起こしてみようと思った次第です。そして最後に、今回の経験に基づいて、キャリア戦略に関する示唆を述べたいと思います。

1.自己紹介

その前に軽く自己紹介をさせていただきます。というのも、この自己紹介の内容がかなり今回の話に関わってくるからです。結論、僕が「少し特殊な経歴の持ち主である」ということだけ念頭に置いていただければと思います。

僕は2018年4月に理工学部を卒業した後、2020年3月までSIとかコンサルをやってる企業に在籍していました。アクセンチュアとかの競合というふうに捉えていただいて差し支えありません。

その後2020年4月に、転職するのではなく大学院に入学しました。課程としてはMBAと呼ばれる経営学修士課程になります。

ここ数年でこそ、社会人の大学院での学び直しがちょっとずつ増えてきましたが、それでもまだ日本では社会人大学院生はマイノリティですし、そもそも20代でMBAを取りに行くというのも珍しいです。

そんなわけで、M1からM2に進級したこの春ごろから「そろそろ転職先探すか」という感じで就職活動を始めたわけです。ちなみに前職はわりとテクノロジーサイドのポジションでしたが、ビジネスサイドのポジションを志望していました。

2.意外な戦績

就職活動を始めた当初、僕は「日系大手企業からしたら、自分は扱いづらい人材だろうな」と考えていました。

新卒として選考に臨んでも、他の子たちより年齢が高いし、既卒だし、他の企業の手垢がついてしまって自社色に染め上げることが難しいからです。

中途として選考に臨んでも、ビジネスサイドの業務は未経験で即戦力になれないからです。

そこで僕が転職先として視野に入れ始めたのがベンチャー企業でした。ベンチャー企業に対して僕はなんとなく「特殊な経歴の人にも寛容」というイメージを持っていました。だから、大手を受けるよりベンチャーを受けた方が内定獲得しやすいのではないかと考えたのです。

結果的に僕はベンチャー(メガベンチャー含む)20社と東証一部上場企業5社の計25社を応募候補企業として絞り込みました。そして、各社の問い合わせフォームに、自分のバックグラウンドを簡単に説明して自分に合うポジションがあるかどうか問い合わせました。そこで好感的な回答を頂けた会社に応募しようと考えたわけです。

結果は、面白いくらいに割れました。

ベンチャー20社ほぼ全てから門前払いを食らい、東証一部5社からはトントン拍子で選考が進み5社全てから内定を頂きました。

つまり、事前の自分の見立てとは真逆の戦績になったのです。

なぜこのようなことになったのか?僕は以下の3点が大きな理由なんじゃないかなと思っています。

3.時間軸という求める人材スペックの違い

第一に、新卒・中途問わずベンチャーと大手では求める人材スペックが明確に異なることが挙げられます。それは、採用に長期的な視点が入っているかどうかです。

ベンチャー企業が早急に確保したい人材というのは、目先の業務をこなせる人材です。創業間もない企業の場合、目先のアウトプットを犠牲にしてまで20年30年先を見据えて将来の経営者になれそうな人材を選別している余裕はなく、目下直近のビジネスに必要なスキル・知識を持った即戦力的人材を求めるのです。そもそもベンチャー企業においては、社長が若いカリスマ経営者という場合が多く、次世代の経営者を育てようという意識はまだ低いフェーズにあるのだと思われます。若いカリスマ経営者の下に、専門性の高いエンジニアやマーケターが集う、というのがベンチャー企業の図式な気がしていて、将来の経営者になりうるゼネラリストは、計画的に育てようというよりも、エンジニアなどの専門職社員が偶発的に経営リテラシーを身に付けてくれたら幹部登用しよう、みたいなノリなのではないでしょうか。

ですから、1年以上実務から離れて学生生活を満喫している(ように見える)僕は、ハナから使い物にならないというわけですね。

もちろん、即戦力を求めるというのは大手企業も同じです。しかし、大手企業にはそれに加えて、長期的に人材を育てようという目線が加わります。そうなると「入社直後の実務にはベストフィットしてはいないかもしれないけれども、長期的に安定してそこそこの活躍をしてくれそうだ」と判断されれば採用対象となり得るのですね。

僕の場合、MBAで即効性のある実務知識は学んでないけれども、経営戦略やファイナンスなど管理職以上になったときに花開くスキルを学んでいるため、これに該当したのではないでしょうか。

これが1点目の考察です。

4.離職リスクへの耐性

第二に、社員一人が早期離職した場合の痛手は大手よりもベンチャーの方が大きいということです。

まずそもそも、僕のような「新卒で入った会社を早期離職して、あろうことかその後学生に戻っている」なんて人材、離職リスクの塊なわけです。

単純に、毎年300人採用している大企業と、毎年5人しか採用していないベンチャー企業では、新入社員1人が辞めた際のダメージは後者の方が圧倒的に大きいです。

よって、ベンチャー企業は離職リスクの高い僕を敬遠し、大手企業は「珍しい人材を採ってみて、早期離職されたらそれはそれでそこまで痛手ではない」という考えで僕に内定を出したものと思われます。

ちなみに、一般的には企業が外部環境の変化に適応して新たな戦略を創出していくためには、質と量の両面で従業員のバッファ(余裕)が必要だと言われています。

量のバッファとは、今の事業をやるには2000人従業員がいれば回るけど、緊急時や新規事業創出のために一応2100人雇っておく、という考え方です。

質のバッファとは、ウチの会社はチームワークが大事だから協調性の高い人材を基本的には採用しているけれど、仕事内容をガラリと変えざるを得なくなった時のために自己主張のハッキリしている人材も少しは雇っておこう、という考え方です。

そして、質のバッファを備えた人材のことを、HRMを研究している守島(2004)は「異端児」と呼んでいます。

僕が内定を頂いた大手5社のうち、実際に就職すると決めた会社の最終面接で言われた言葉で、印象的なものがあります。

「溝渕さんは、弊社に染まらないでいいからね。会社に迎合せず常に自分のキャリアを考えて楽しく働いてください」

僕は性格的には異端児でも何でもないですが、会社からは異端児としての役割を期待されて内定を出されたようにも思います。

5.性格

第三に、そもそも僕の性格がベンチャーに不向きで、大手に向いていたという点です。それだけ。はい。

6.提案

最後に、レールを外れて彷徨ってる人や、転職を考えている人に僕なりの視点を提供してこの記事を〆たいと思います。

大手企業は、レールから外れた人間を嫌う頭でっかちだとか、そういう風に思ってる方もいるかもしれません。

でも、裏を返せば、事業規模が大きく資金力のある大手企業は「レールから外れた人材を試しに採ってみる余裕がある会社」とも言えます

もちろん、安易な「大手-ベンチャー」の二元論は危険ですが、大手は自分には無理かもしれない、と思わずに応募するだけしてみたらどうでしょうか。今回はそういうお話でした。



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