「 未定 」#53 destroyer of this world

 イズコの使い魔である青い鳥のチェロは、長く空を飛んでいた。色々と情報収集をしてイズコに届けるためである。雨が降り始めたので森の木の枝で羽を休め雨宿りをすることに決めた。木の枝に止まり休んでいると1頭の狼が横たわる鹿の肉を噛みちぎっているのを見かけた。

「やぁ・・・食事中かい」鳥は狼に話しかけた。

狼「あぁ、でもそろそろ満腹だな。ここのところ獲物を仕留められず空腹だったが、ようやくありつけて幸せだぜ」

チェロ「それは、良かったね。鹿には気の毒だけど・・・ところで知ってるかい、ここからは離れているけど、町や村でひどい疫病が流行っているんだ。沢山の人間が死んでいるらしいよ」

狼「あぁ、それなら俺も知っているさ。この森の近辺に住む動物はだいたい知っているはずだ。とてもいいことだな」

チェロ「え?なんでだい。可哀想だとは思わないの?」

狼「はぁ?あの人間だぞ。狼に限らずこの森に住む動物たちが、どれだけ人間の行いの被害を受けてきたのかわからないのか?森は破壊され川は汚されて俺たちの住む場所はなくなっている。際限なく必要以上に俺たち狼や食べ物になる小動物を捕まえては殺している。奴らは限度を知らない。加減を知らない。俺たち狼も生きるためには生きているものを殺す、そして喰らう。生きていく必要な分だけだ。しかし彼らは全てを奪い尽くし破壊し尽くして金というものに変えているのさ。本当にクレージーな生き物さ。人間はこの世界で力を手にした、そして王に君臨して人間以外のものはすべて彼らが自由にしていいものとなった。オレたちの大事な住処や命までも・・・奴らはな、奴らは傲慢で強欲な悪魔でこの世界の破壊王だ!この森に住む動物たちはそう思っている。なるほど、、、お前、人間に使われているようだな、お前は一体、どちらの味方なのだ!!!」

チェロ「そ、そんな、、僕は誰の味方とかじゃないよ」

狼「ふん、、人間が疫病で大勢死んだおかげで俺たちは少し息を吹き返している。俺たちの気持ちを少しは理解すればよいのだ。しかし彼らが目にも見えないような病に殺されているとはねぇ」

チェロ「・・・・・」

狼「そうだ、お前は人間と話すことができるのだろう?ならば伝えてもらいたい。大勢の人間が病に殺されているように、俺たちは今まで散々絶滅しそうなくらいにお前たちに殺されてきたのだと。これを機会に考えを改めてほしいと、そう伝えて欲しいのだ。・・・たのむよ、じゃあな」
そういうと狼はゆっくりと暗い森の中へと消えていった。


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