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誰が為のおしゃれ~マスクの下の口紅~

たとえば、冬なのにペディキュアを塗るだとか、靴から見えもしないのにキレイでかわいい靴下をはくだとか。

そういった「見えないおしゃれ」を理解できなかった。


私はただ「見られて恥ずかしくないように」服を選ぶし、化粧をする。そして、他人から見えない部分はとことん手を抜く。

その例が冬場のフットネイルや靴下である。
(冬場は無法地帯になったズボンの下の毛も追加されるのだが・・)


見えないところも手を抜かない人たちに対し、
マメな人だな~という尊敬の念(決して嫌味ではない)を抱くとともに、きっとこの人たちは恋人がいて、裸足になるような関係だからきちんとしているんだろうな~・・それに比べ私は・・・と、頭の中では行きすぎた被害妄想さえも繰り広げる始末。

それは私自身の自尊心までもをひどく傷つけてしまっていた。



そんな、見えないところの身だしなみは徹底的にサボる私。このコロナでの在宅勤務や外出時のマスク着用もあり、それはもう快適で怠惰な日々を過ごしていた。



出掛けるときは眉毛だけに手を加え、他は何もしない。

下地やらファンデーションやらは約2ヶ月触らなかった。


高校を卒業してからというもの、人前ではとりあえず顔にパウダーをはたいていたため、いきなり訪れた非日常に戸惑いつつ、これぞ自然でナチュラル、ありのままの私なのだ!楽でいいわ~、という気分だった。


ある日、スーパーまでの道すがら、ガラスに映る人影をみた。

その人は猫背で髪はボサボサ、おまけにくたびれた服を着てのそのそと歩いていた。


・・まあ、これは私自身だったわけなのだが、緊張感もなく、鏡に向かって顔がマシになることに喜びと満足感を覚えることもなくなると、人はこうも一気に老けるものなのか!!!と驚愕した。


ためしに、帰ってからお気に入りのブラウン寄りの赤い口紅をのせてみた。

すると、明らかに心がウキウキして、自然と鏡の中の自分は笑顔になっていたのである。


ああ、すごい。

いつもはメイクは他人に見せるだけの、面倒くさいだけのものだと思っていたけど、そうじゃないんだ。

これは自分の気分を上げてくれるし、自信を持たせてくれる。自分による自分のための自尊心とテンションの爆アゲツールなんだ!


それから私はマスクをしていても口紅だけは必ずつけるようになった。

もともと口紅が大好きで、アイメイクは全くしないのに唇にはパキッとした色をつけるような人間なので、この作戦は心を良好に保つために効果的に働いたのだろう。


「自分」が手をふくためにハンカチを持つように、メイクも「自分」が幸せな気分で過ごせるようになるためのツールの一つなのかもしれない。


22年間、「メイク」はずっと私の「面倒くさいもの」の上位に君臨していたが、このコロナによって見直されたのである。



世の中には「男ウケするメイクとは~」のように、他人に対して自分を良くみせるためのハウツーが溢れかえっている。


もちろん、それで自分のことを好きになれれば何も問題はないし、素敵なことだと思う。

だけど私は違った。


メイクは男ウケのためにするもので、それを顔面偏差値の低い私がしたところで鼻で笑われるのではないか・・
だけどスッピンだと社会ではNGな雰囲気だし、だらしない人と思われてしまうのではないか・・
など、自意識過剰なうえに、とんでもなくネガティブになってしまっていたのだ。


女性も男性も、自分自身がハッピーでいられるならどんなメイクをしてもしなくてもいい。

TPOはもちろん大切だとは思うけど、「社会人のくせに」とか「男のくせに」とか言う人たちに惑わされないで。


あなたを本当の意味で幸せにできるのはあなたしかいないのだから。


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