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塾講師牡丹たんの憂鬱

今日の白饅頭尊師のマガジンは、僕にとって中々考えさせられる内容でした。

https://note.com/terrakei07/n/n168f782fd91f

内容を知らないよ、という方々のために例によって超適当な説明をすると、(僕も本当なら丁寧に丁寧に丁寧に内容を描きたいのですが、有料マガジンであることを考慮して敢えて絶妙に伝わらないまとめ方をしています。決して僕のまとめ力が低いわけではありませんキリッ)

①Twitterでインテリ層(笑)が「活字に全く触れないって子供がいてワロタンゴwwww」みたいなツイートをバズらせてたけど、世の中的には活字に触れるのと触れないのどっちがマジョリティかわからないよ、むしろ触れない人のが多いかもよ

②活字に触れてるか否かは「ことば」の使い方の巧拙などとても多くの面で大きな格差を生んでるよ、だからインテリ層(笑)は活字に縁がない人たちの存在を異世界ものみたいな感じで余所事で捉えるより、彼らがいるおかげで自分たちが上位層でいられるという意味でもう少し興味を持った方がいいかもよ

みたいな内容でした。これで合ってますか?
合ってるなって人は「牡丹たんの要約力はすごいなあ」って思ってください。
ちがくね?って思った人は「興味ある人がちゃんと有料マガジンを読むようにあえてピントをずらしてるんだなあ。牡丹たんは流石だ」と考えていてくれればいいです。

読者の皆さんが僕に対しての認識をよりポジティブなものにしたところで本題に入ると、上述のマガジンでもテーマになっている「本を読まない、物語を知らない、活字に触れない子どもたち」とは、実は僕自身数年前から頻繁に接触していました。

大学生活4年間のうち3年ほどで塾講師のバイトをやっていて、そこで色んな生徒と出会ってきたんですよ。
それまで僕は、比較的生活水準が高いであろう家庭の子供が通う学校の中でしかコミュニティに所属してなかった(自慢に聞こえたらすみません。そんなつもりはありますが)ので、文化資本の一つである「活字」に触れる機会がない家庭がこれほど存在しているのか…という知見はこのバイトを経験するまで得られなかったんですね。

活字に触れる楽しみを知らない生徒たちをしばしば受け持つ中、僕自身は小学生の頃から重松清とか石田衣良の作品に大層興奮するませたガキだったので、彼らにもなんとかそういう楽しみを少しでも知ってもらって、それが結果として成績の向上だったり、それでなくてもその先の人生で何かの足しになってくれればいいなあと思い色々工夫して授業をしていました。

でもひょっとしたら、というかほぼ間違いなく彼らにとっては余計なお世話、傍迷惑な話だったんじゃないかなあと今になってみれば思います。
そもそも勉強が嫌いで成績が悪いから親御さんに塾に通わされているわけですよ?

ただでさえ行きたくもない塾で、なんかへらへらしたにーちゃんが絶対に学校のテストで模解としては採用されなさそうな作品の解釈やそこから派生する個人的エピソードを時にシニカルに時に熱吹いて語ってたとしても、恐らくほとんどの生徒が「早く帰ってYouTuberの新作見てえなあ」程度のことしか考えないのは明白ですね。残念無念また来世。

牡丹たんの塾講師としての無能さが露呈したところで、当時の思い出話を幾らか紹介して今日の記事を締めたいと思います。

中学高校と一貫校に通っていた経験を塾長に買われていた僕はその塾に通う一貫校の生徒をほぼ全員担当していたんですが、その中に牡丹たんのファンになってしまったという明らかに人生をやり直す必要がありそうな女子中学生がいました。
某女子校に通っていたその生徒を仮にAちゃんとしておきます。

彼女は学校の中でプリンスのような存在で、ラブレターを貰ったとか複数の女の子にストーキングされてるとか、バレンタインでチョコを何十個渡されたみたいな話をいつも僕に自慢してきました。共学の方々は驚愕される話かもしれませんが、女子/男子校では割とよくあることです。

Aちゃんは英語と数学の成績が芳しくなかったため入塾したのですが、勉強に対するやる気のなさと牡丹たんの授業の適当さが相まって中々成績は向上しませんでした。

なんとか致命的な点数は取らせないように進行してお茶を濁していたある日、Aちゃんから珍しくガチもんの相談を受けるんですね。
その内容は、来年に控えている高校への内部進学を取りやめて、別の工業高校に行こうかどうかを考えているというものでした。

工業高校の方が将来やりたいことが勉強できそうみたいなことを続けてAちゃんは話していましたが、おそらく「あまり成績が悪いと内部進学で高校に上げられなくなる」みたいな話をどこかから聞いていて、その影響もあったのかと思います。

その相談を受けた僕は、やりたいことができるならそっちに行けばいいんじゃない?という大層無責任極まりない言葉で背中を押した後に、

「でも、今のAちゃんの学校で顔を合わせてる人たちとは全然違う世界になるよ。生徒の殆どが男子っていうのはあんま気にならないかもしれないけど、多分生活水準が全く違うと思う」

「多分Aちゃんみたいに本を読んだりする人も、絵を見たり描いたりするのが趣味な人もいないんじゃないかね。それを面白いと思うかツライと思うかは人によるから、自分はどっちだろう?ってのも考えとくといいよ」

みたいなことを僕にしては珍しく真剣に語ってしまいました(こんな感じの話が即興でペラペラ出たのはふくちさんの教育格差絶望社会のおかげです。馬鹿店の神様ありがとうございます)。

その後AちゃんはAちゃんなりに色々考えたんでしょう。結局彼女はその女子校を辞めることはせず、エスカレーターで高校へと上がって行きました。

丁度その後くらいから成績も少しずつですが向上し始め、学年内で中位程度をキープできるようにはなれたので、あの様子であれば高校→大学の内部進学も問題なかったのではないでしょうか。
僕はAちゃんの高校卒業より前に大学を卒業してバイトも辞めてしまったので行く末を見届けることはできなかったのですが、多分大丈夫でしょう。

しっかり成績を上げさせて牡丹たんは優秀だなあと思った方々には大変申し訳ないのですが、残念なことに僕の授業の適当さは徹頭徹尾変わることはなかったので、これは一重に彼女の努力の成果です。

元々サッカー部で活躍したり、生徒会長をやったりで、頭の出来も要領も悪くない子だったんですよ。僕はAちゃんのビアン・スクールライフ自慢話を横で聞いて楽しんでいただけでした。

あと、これはしばらくしてからわかったことなんですが、Aちゃんがこの相談をしていたのはどうも世の中で牡丹たんだけだったらしいです。
親御さんにも塾長にも言ってなかったみたいで、どっちもそれを聞いて共学違った驚愕したということでした。

それ以降もAちゃんは僕のシフト変更に合わせて塾の曜日を変えたりと謎の牡丹たんファンぶりを発揮していたのですが、これは恐らく彼女も僕も重度の厨二病患者であることが原因でしょう。

特に大学生にもなって厨二病が全く寛解の兆しを見せていないというのは相当希少価値ですから、彼女としてはそういうちゃらんぽらんな大人が物珍しくて気に入ってたんだと思います。
なんかそんな感じのことを、今日の白饅頭尊師のマガジンで思い出したのでした。

最後に僕の授業がどれだけ適当だったかを紹介しておきましょう。
「犯罪や非行のない地域を実現させるにはどうすればいいか」という作文の宿題についてどう書けばよいか質問された時、僕の回答は

「犯罪や非行をなくすのは無理だけど、そもそも犯罪、非行という概念がその地域から消滅すればテーマは達成できるので、犯罪も非行も取り締まることはせずなんでもアリの地域ということにすれば結果『犯罪』も『非行』もなくなる」

という詭弁も甚だしいものでした。

ただ僕もAちゃんもこういう詭弁は大好きだったのでその授業は大層盛り上がったのですが、彼女がその内容を嬉々として塾長に喋ってしまったせいで僕は後々無事絞られ、結局無難な内容で宿題をまとめ上げたAちゃんは学内で賞を貰ったのでした。ちゃんちゃん。

②も書きました

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