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距離感が合わなかった大家さん

相手の方が私を純粋に心配してくれているのか、ただの野次馬根性でこちらの事情を聞きたいのか、分からない時ってないだろうか。

この間、きゅうりのお裾分けをもらった話をnoteに書いた。

このきゅうりをもらった時「野菜のお裾分けなんて久々だなぁ」と思った。
久々っていつぐらいぶりだろう…と考えていたら、少し苦い出来事を思い出した。

若い頃、仕事の都合で引越しをした。
小さなアパートだったが、大家さんの家の敷地内に建っていて、駅近・築浅で設備が充実している割には家賃が安く、とても良い物件だった。
不動産屋さんの担当者さんから「大家さんの人柄も良いよ」とお墨付きだったので、契約した。
大家さんご夫婦はご年配のおじいさん、おばあさんで、ものすごく良くしてくれた。
実際に入居してからは、わざわざ大家さんが手土産を持参してくれて挨拶してくれたり、その後も畑で取れた野菜などのお裾分けもよく貰っていた。
生活リズムが違うので、そこまで頻繁に会うことはなかったが、会ったらいつも嬉しそうに話しかけてくれて、なんていうかチャーミングな方達だった。

そんな大家さんが少し鬱陶しいと思ってしまった出来事が起こった。
私の母が倒れてしまい、病院に入院した。
当時は母の意識が全く戻らず、私も実家に戻っていた。
2~3週間は自分の家には戻らず、そこから会社に通っていた。
母の意識がなんとか回復して、とりあえず一旦私も家に戻ろうと思った。
帰ったらアパートの前で大家さんの奥さんに遭遇した。
「最近姿を見なかったけど、どうしたの?」と聞かれたので、母が倒れた旨を説明した。
当時の私は誰かに話を聞いてほしい気持ちも多少あったかもしれない。

家に帰ってゆっくりしていると「ピンポーン」とインターホンが鳴った。
こんな時間に誰だと思ったら、大家さんが奥さんから話を聞いて心配して訪ねてきてくれた。
正直疲れてたので、ほっといて欲しかったが、わざわざ訪ねて事情を聞きに来られたので、私は丁寧に対応してしまった。
これがダメだったのだと思う。
その次から会うたびに母の容態を聞いてくる。
私は全く求めていなかったが、大家さんの知り合いで同じ様な症状で倒れた方の病例を引き合いにして、色々とアドバイスとかをくれた。
会社に行く時も帰った時も、大家さんに遭遇したら母の話になる。
話してしまった私も悪かったが、こちらの状況を逐一確認したがる大家さんの存在はかなり鬱陶しかった。
単純に私を心配している気持ちなのか、野次馬根性なのかは分からない。
とにかく状況を聞きたがる。
それから大家さんをできるだけ避けるようにした。
会っても「急いでるんで…」と早々に立ち去る対応はした。
明らかに避ける態度を出している私に対して、それでも母の容態を尋ねてくる大家さんの「知りたい気持ち」は凄いと思った。

結局私は実家の近くに住むために引越しをした。
家を引き渡す時、大家さんの家の敷地内のアパートだし、色々とお世話になったので、大家さんにも挨拶に行くべきだと思ったが、どうしても足が進まなかった。
最後は管理会社にお任せして終わった。
ごめんなさい、大家さん。

この経験からあまり親しくない人間には家の事情をべらべら喋らない方がいいということを学んだ。
少し考えたら分かることなのに、若い頃の私はそれが分からなかった。
大家さんも純粋に心配してくれてただけだと思うが、あの時の私にはありがた迷惑だった。
人との距離感を考えるきっかけにはなったので、良い勉強になったと思う。
私も相手側から話題に出さない限りは、あまりプライベートな事情には突っ込まないように気をつける。

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