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【DJ漂流記】メキシコ編 Vol.2-Ensenada(エンセナダ)

ロサリトで思い出したこと

ロサリトからカミオン(バス)でバハカリフォルニア半島を南下。外の景色を眺めていたらふと「ロサリト」って地名を過去に聞いたことあったような気がした。映画「アメリカングラフティ」にも出演していたラジオDJのWolfman Jackがロサリトのラジオ局から強力な電波でアメリカ向けに番組「Wolfman Jack Show」をやっていたことだった。
実質上海賊放送扱いで60年代当時、まさに映画「アメリカングラフティ」で描かれているあのシーンはこの地のラジオ局での出来事だった。実際に起こったエピソードをもとにあのシーンが作られた。
インターネットが発達するまでってラジオのDJってどんな顔してるのかな?みたいなミステリアスな部分があって、Wolfman Jackなんてあんなクセの強い喋りのDJなんか当時みんな「どんな奴なんだろう?」と思っていただろう。

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道中はずっとこんな感じの風景ばかりだった

自分の母親も音楽好きでラジオ好きであったので子供の頃、FENで放送されていた「Wolfman Jack Show」を家で聴いた思い出があるし、2005年位からインターFMで再放送されていたからよく聴いていた。(またやってほしい)
インターネットってすごいなと思うのが60年代当時の「Wolfman Jack Show」のエアチェックがYoutubeに落ちていて、それを聴きながら外の景色を眺めてみる。
「ああこんな所から当時この放送やってたんだ、、、。」
えも言われぬ現代なんだか?過去なんだか?一体ここはどこなんだか?
不思議な気持ちになった。



エンセナダに到着

「Wolfman Jack Show」を聴いている間にバスはエンセナダに到着する。
ティファナよりは街は大きくないが港町でクルーズ船なんかがよく寄港するらしく海沿いの観光地だった。クラブも観光客向けの大規模なクラブもあったりしてイメージ的には六本木によくあるようなDISCOのようなCLUBで、「ハメ外して大騒ぎしようぜー!旅の恥はかき捨て!」みたいな感じの店が一つのエリアに集中していた。
自分がDJするクラブはそのエリアの外れにあり客層は「ハメ外して大騒ぎしようぜー!」が苦手なタイプの客が来ているようだった。

到着当夜DJをする現場は「EURO BAR」と言うお店でこの界隈では落ち着いた雰囲気の店でサウンドシステムの音もいい音だった。

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生ビール頼むと「TECATE」のこのサイズのみだった。

落ちついた雰囲気に合わせ選曲をしていく。ガチな上がり方せずに、小高い山をじんわりじんわりゆっくりゆっくり上り詰めていくように、途切らせずフロアの様子を見ながら選曲していく。
薄暗いフロアをよく観察すると小刻みにブレイクダンスをするお客さんがチラホラ目立つようになる。
店のオーナーは営業的にもっと踊らせたいみたいだったがガチにあげてしまったら他の店と一緒になってしまうと思い、もうちょっと我慢って感じで山の8合目あたりまで来たところで、徐々に頂上に向けてペースアップしテンションを保ったまま2山くらい超えたところでまた徐々に落として山を作り、4山目で朝を迎える。

オーナーに「ドリンク結構売れた?」って聞くとニコッと親指立ててギャラを弾んでくれた。この街にDJで日本人が来ると言うことで結構注目されてたみたいでゆっくりテンションの時は他の店に移ってしまった客もいたみたいだが、2山目あたりで徐々にお客さんが入り、ピークを迎えた頃には入りきれず外で飲んでいるお客さんもいた。
DJをやるのはこの日のみで後は五日間ほどここに滞在する予定になっていた。

うるさいアレックスという男

明けて2日目からは遊びモードで観光をすることにした。ここバハカリフォルニア半島はワインの産地でタクシーでシャトー巡りができるらしく行くことに決めた。

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広大な葡萄畑があちこちにあり無数のシャトーが存在する

シャトー巡りのタクシーの運転手がチーチ&チョンのチーチマリンに背格好も顔もそっくりでユーモラスな奴だった。バギーレースをやっているのをアピールするためにレースの写真を持っていて「どうだすごいだろ?」ってアピールの直後に山道でタイヤ鳴らしながらカーブを抜けたり。
なんか憎めない感じで「これぞメキシカン!」って感じの愛嬌のある親父だった。

一通りシャトー巡りし酔っ払って街までタクシーで戻ってくると、降りるや否や一人の男が近寄ってきた。顔は人相を悪くしたジローラモみたいな感じでアレックスと名乗っていた。俺の顔を見るなり鼻をヒクヒクさせて「いらないか?」という仕草。すぐに察知したので「ワイン飲みすぎたからいらない」と断ると今度は「女はどうだ?」と誘ってきたので「そっちもいいわ」って断るが「一回だけ。一回だけでも見たってや。ボインボインのボニータがおんで!」とマシンガントークでしつこく食い下がる。一緒にいたサルジャンも呆れ顔になり
「こいつうるせーから入って見てすぐに出ようぜ。」とついて行くことに。
「ここだよ。」中に入ると「Ora!」とメイド服を着たバボちゃんみたいな体型の女の子が出てきた。一瞬唖然としたがすぐに出た。アレックスがすぐに追いかけてくる。「今のダメか?他のところもあんでこっちやこっち」。「お前もしかしてナメてるのか?もう俺たちに構うな。」って感じで足取り早めに歩き出したら急に態度が弱々しくなりシュンとしながらもまだついてくる。それでもまだ執拗に「他にもまだボニータおる店あんで。後悔させへん。絶対満足させるさかいに信じてや。あきませんか?」みたいな感じで俺たちの前後をうろちょろする。
サルジャンは「まずいなーこいつにホテル知られたらつきまとわれるぞ」と小声で言ってくるがもうその角曲がればホテルに着いてしまう。

ホテルの前を素通りしようとしたらドアマンが俺たちの顔覚えていて「おかえり」みたいな感じでスッとドアを開ける。
「あちゃー!」入らないわけにはいかずアレックスにもヤサがバレる。
それ以降3日間ホテル前で待ち伏せ状態で裏口から出入りせざるおえない状態になる。朝起きて部屋の窓から通りを見下ろすとタバコをふかして待ち伏せ。夜は夜で帰ってくるのを待ち伏せ。完全にロックされる。
「マイネーム イズ アレハンドロ! コール ミー アレックス!」って自己紹介されて女郎屋について行く時、首のところに「ALEX」っていうTATOOが入っているのが見えてなんか笑ってしまった。うざいし関わりたくないんだけど、なんか愛嬌を感じるっていうか憎めないっていうか、、、。
最終日ホテルをチェックアウトし荷物をタクシーのトランクに詰めているとアレックスがやってきた。
「もう帰りはるの?まだ一度も一緒に遊んでないやんか。もう一泊しはったらどないだす?ええボニータおまっせ!ちょっと高こつくけど最高や!」

俺はアレックスの肩にポンと手をやり「いい街だったよ。またな。」と言った。アレックスはため息を大きくつき首を振り肩を落としてその場からさって行った。ふとサルジャンの顔を見たらなんかニヤけていた。

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この通りで待ち伏せされる

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地元の人たちも多いが基本的に観光の街

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港に行くと野生のアシカの群れが休息中だった

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