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【NYY】Domingo Germánが11年ぶりとなる完全試合を達成!!!

本日行われたNYY-OAKの試合にて,ヤンキース先発のDomingo Germán(ドミンゴ・ヘルマン)が完全試合を達成しました!
MLBにおける完全試合は2012年のFelix Hernandez以来となる史上24人目の快挙。ヤンキースに限れば1999年のDavid Cone以来4人目の記録となります。

今回のnoteではGermánの偉業について,短くまとめたいと思います!興奮が冷めやりません!

ここ2試合で炎上を繰り返していた右腕

今季のヤンキースは,WS優勝に全Betするためオフに目玉投手であったCarlos Rodonを補強。加えてGerrit ColeやLuis Severinoといったビッグネームが跋扈するチーム史上最強のローテーションが形成されたかに思えました。
しかし開幕前時点にして肝入りのRodonと,5番手には惜しいほどの実績を持つFrankie Montasが負傷離脱。早くもヤンキースに暗雲が立ちこめます。

そんな中,先発ローテーションの役目が回ってきたのがDomingo Germánでありました。Germánは今季7年目を迎える30歳でありますが,これまで先発定着を果たしたといえるのは2019年のみと言えるでしょう。その2019年も,ローテーションに故障者が続出したための応急処置でありましたし,彼の立ち位置は常に「6-7番手」といったもの。

迎えた今季,開幕から5月までの10登板でERA3.98 3勝3敗という安定した成績を披露するなど順調。6月に入ってからも最初の2登板で12.2回2失点という快投を見せます。

しかし6月16日のボストン・レッドソックス戦では2回7安打7失点と大炎上すると,翌6月22日のシアトル・マリナーズ戦でも3.1回で4被本塁打8失点と燃えに燃えます。この時点での防御率は5.10まで悪化。清く正しく我慢強いNYYファンベースもこれには頭を悩ませました。

まさかのPerfect Game!!!

そういった経緯もあって,今日のアスレチックス戦で,Germánが完全試合を達成するなんて誰一人思っていませんでした。

初回,小気味よく2個の三振を奪うと4回まで52球の低燃費投球を見せます。今になって考えれば,4回裏無死からTony Kempの放ったライトフライも良いスパイスになっています。打球初速91mph・飛距離349ftというxBA.120のなんてことない飛球は,試合の行われたCounty Coliseumを含めた29球場ではライトフライになる打球でしたが,唯一Yankee Stadiumであればホームランになっていたそうです。これはアウェイに救われましたね・・。

Baseball Savantより引用

主砲Aaron Judgeが離脱して以降は特に不甲斐ない打線も,この日ばかりは違いました。4回表にStantonのHRで先制すると,続く5回表には3連続タイムリーなどで6点を追加。
思えば相手投手のJP Searsは昨年ヤンキースでデビューを果たした左腕でしたが,先述のFrankie Montas獲得のために放出した経緯があります。”もしMontasを獲得していなかったら”Germánがローテーション入りをすることもなく,Searsが今日の先発マウンドに立っていたのかもしれません。

そして5回裏,完全試合をにわかに予感させるプレーが起こります。一死からSeth Brownの放った106mphのハードヒットが一塁線を襲います。しかしそこにDiveしたのがAnthony Rizzo。いわずものがな,ゴールドグラブ賞を4度受賞している名手がここで魅せます。

このプレーがなければ,「よくある5回途中パーフェクトピッチ」として人々の記憶に刻まれることもなかったと思います。ともあれ,5回裏を終えて球数は62球の好ペース。

勝負の6回裏には直球を僅か1球にとどめ,マネーピッチであるカーブを多投。この局面で8・9番を2者連続三振で押さえつけました。この日,アスレチックスの9番に座っていたのは既に40盗塁を記録している快足Esteury Ruiz。内野安打も9本記録していただけあって,際どい打球を飛ばされると痛いところでしたが,ここも救われました。

そして7回裏には1番打者Kempを2球,Nodaを4球,Rookerも2球に抑えたことでいよいよ完全試合が現実となってきます。この時点でまだ82球。試合を通して,OAK打線の好戦的なアプローチが野手の正面を突いていたことも間違いなく助けになりました。この辺りから中継カメラがベンチのGermánを常に捉えていきます。

8回裏,4・5番打者をそれぞれ2球で仕留めて迎えたのが6番Jonah Bride。マイナー時代から売りの辛抱強いアプローチが,偉業が脳裏をよぎるGermánをじりじりと苦しめます。2球続けてZone外のボールを投じますがBrideがしっかりと見極めて2-0。4球目にも大きく外れると,この日僅か2度しかない3ボール目に。しかしここで気持ちを崩さなかったGermánが,7球目までしぶとくZone内に投げ込んだことでサードゴロに打ち取ります
Brideは2回裏にも7球を稼いでおり,間違いなく今日一番の好敵手であり,なんとか3度目の対戦を切ってとりました。

世界中の野球ファンがGermánの雄姿を観るために中継を視聴し始めますが,ここぞとばかりにヤンキース打線が得点を重ねて11-0と大量点差に。ぶっちゃけ,みんな「はよ攻撃終われや」って思ってたでしょ。僕ですら思ってたし。

そして最終9回裏。球数は93球であり,記録は悠に狙える位置にいました。
7番Diazは変化球でカウントを作ると,4球目は92mphの速球で仕留めにかかります。ここをショートゴロに抑えて1アウト。
8番Shea Langeliersは昨年,有望株のオールスターこと”Futures Game"にて特大アーチを放ちMVPに輝いた強打の捕手。

ただ,今日はヤンキースのマスクを担うHigashiokaのリードが一歩先を行き,初球を打たせてセンターフライ。早くも2アウトをものにします。

最後の打者は快足Ruiz。緊張が張り詰める中,Ruizも初球を捉えます。間を抜くハードヒットや,内野安打になるボテボテのゴロが怖い場面で,80mph程の”ちょうど良い”打球が三塁側へ。これをサードのJosh Donaldsonが丁寧に捌きRizzoへ送球。これによって,11年に渡って動かなかった歴史の針が,ついに歩みを進めました。

投じた投球数は僅か99球。100球以内での完封を,かつての大投手に準えて”Maddux(マダックス)”と呼びますが,今日のGermánは精密機械そのものでした。99球のうち,ストライクボールは72球と大半を占めており,常にストライク先行で優位に立っていたのが印象的。キャリアを通じてコマンドにプライドを持っていた彼が,究極の栄誉を手にしましたよね。

この日,投球割合の52%を占めたカーブボールは彼にとって最大の武器であり,平均2679rpmを誇ります。以前どこかでまとめたかもしれませんが,このカーブの回転軸が全方向に延びており,非常にユニークなものとなっています。(これは基本的に打者へジャイロ回転で推進しているために軸を横平面で切り取るとこういう風に写るという認識でいいの?誰か教えてくれると嬉しいです。)

BaseballSavantより引用

Germánの過去。そして苦難。

Germánの旅路を考えると,今日の完全試合は少し胸に来るものがあります。
2019年,ローテーションの穴を完璧に塞いだGermánは9月までに18勝を挙げる活躍ぶり。間違いなくこの年のエースはGermánでした。
しかし9月19日,妻へ暴行を加えたことが発覚し,シーズンシャットアウト。結局81試合の出場停止処分が下されます。また,翌2020年は短縮シーズンであったために1試合も登板できずに終わります。

また,その年の7月には自身のInstagramにて野球から身を引く趣旨の投稿を行い,騒然となります。結局数日後に引退を撤回し謝罪。しかしGermánのメンタルが追い込まれていることは誰の目から見ても明らかでした。

翌2021年2月にはチームメイトのZack Brittonにすら非難されており,当時公式ツイートされていた投手陣のみの写真にて,Germánだけ距離を空けられていたのを覚えています。

"Sometimes you don't get to control who your teammates are, and that's the situation. I don't agree with what he did. I don't think it has any place in the game or off the field at all."【原文】

Britton「チームメイトを誰にするかはコントロールできない。私はGermánの行為に同意できない。試合中やフィールド外で彼の居場所は全くないと思う。」【筆者翻訳】

Yankees' Zack Britton on return of Domingo German: 'You don't get to control who your teammates are'より引用

昨年夏には,当時盤石であったローテーション左腕のJordan Montgomeryをトレードで放出。そこでローテーション入りしたのがGermánであったことで,ヤンキースファンの非難の対象となっていました。
とはいえ,8月・9月はともに好投を見せて外野を黙らせたのは立派。ニューヨークにとっては忘れることのできない9月11日の試合では,試合前に星条旗を手にグラウンドを駆け巡りました。これは元シカゴ・カブスなどで活躍したSammy Sosaへのトリビュートも込めていたでしょうか。
この件はヤンキースラジオにて,NY出身のKZillaさん(@TokYorkYankees)に解説していただき,感銘を受けたのを覚えています。

5月には右手についていた粘着性物質が原因で退場。これも物議を醸しましたよね。
このように何度も大きな批判を食らいつつも,その都度立ち直り,今日このマウンドで輝きを放ったGermán。心から大きな拍手を送りたいと思います。
実は2日前に叔父が亡くなっていたとインタビューで述べており,さまざまな苦難を乗り越えての完全試合でありました。

まるでWS優勝を果たしたようなチームメイトの輪は,ヤンキースファンにとって,目頭が熱くなるような瞬間でした。本当におめでとうGermán。

最後に

これを観たCashmanが「NYY,コンテンドいけるやん!」ってなることだけが不安。NYMのように勝機を逸したなら売り抜くべき。というわけでGermánは先発不足のコンテンダーに売り抜け。さようなら。

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