見出し画像

【月刊Winkees】Vol.創刊号「王座奪還へのスタートダッシュ」

 不定期の「月刊Winkees」創刊号です。続くかどうかは分かりませんが毎月楽しみにしておいてください。今回はシーズン序盤のため,細かいスタッツが反映されておりませんので結構引用を省いてます。

はじめに

 今年度,MLB関連のNoteを書く上で絶対に外せないのは「試合数が60試合」という話題。選手会とMLB機構が揉めに揉め,最終的には100試合以上を削り取った60試合で合意。プレーオフも最多となる16球団が出場可能となっている。


 そうなると持て囃されるのが「優勝リングの価値」についてだろう。私の見解を述べさせていただけるのであれば「間違いなく価値は下がる」と言えるだろう。そもそも60試合程度では例年のような本当の実力に応じた順位には到底成りえない。例えば昨シーズンの王者ワシントン・ナショナルズは60試合消化時点ではナ・リーグ東地区において4位(1位と6.5G差)であり,ワイルドカード進出圏外であった。確かに今季は16チームにPS進出の機会があるとはいえ,レギュラーシーズンに戦力を温存させつつ,ポストシーズンでフル回転させることなども戦術の一つとなるだろう。そのような状況で疲れ果てた上位球団がPSにて下位球団に喰われるなんてことは往々にして起こりえると考えている。

 ただし,愚生は性格がひん曲がってるのでNYYが優勝すれば手放しで喜びますし,29球団が優勝すれば「コロナのおかげ。無価値だ。」と宣います。私はそういう人間です。

①The CLUTCH「アーロン・ジャッジ」

 8月3日(日本時間),ボストン・レッドソックスとの伝統の一戦でスイープをもくろむヤンキースは別のストロークに於いても白熱していた。「ALL RISE」ことアーロン・ジャッジの連続試合本塁打記録である。先日のボルチモア・オリオールズ戦から前日のレッドソックス戦まで4試合連続で本塁打を放っていた主砲は,波に乗っていた。

 2-0のビハインドで迎えた3回裏,内角の変化球を上手く捌き,打球はレフトスタンドへ。打った瞬間それと分かる当たりに現地実況も音割れするほどの興奮。見事5試合連続の本塁打を達成した。

 その後も7-7のイーブンで迎えた8回裏,1番打者・ラメイヒューが作った絶好のチャンスをこの男が逃すはずがなかった。軽々振り抜いた打球は刹那,ヤンキースタジアムの左中間遥かへ消えていった。これによりヤンキースは6連勝を飾り,開幕8試合を終えて7勝1敗と文句無しのスタートを見せている。

 この快進撃,なるほど新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅に遅れたことが一番の要因だろう。アンストッパブルな様相を見せているアーロン・ジャッジは昨年の怪我が3月時点では完治しておらず,復帰が6月頃と見立てられていた。後述する4番のジャンカルロ・スタントンについてもハムストリングの怪我で開幕絶望。センターを守るアーロン・ヒックスも右肘のTJ手術により後半戦以降の復帰が濃厚であった。

 それがまさかの全員開幕に間に合うという結果に。ジャッジ,スタントン,ヒックスの3名は今日までに全員が主軸で好成績を収めているのを見るに,最もコロナウイルスの恩恵を受けた球団といっても過言ではないだろう。その中でも先述のとおり,全くとどまる気配のないのがジャッジである。

 昨季は序盤に怪我によって欠場。一昨年に続き,消化不良のシーズンを過ごした為,過小評価される傾向にあったことは間違いない。今年度はその鬱憤を晴らすかのごとくバレル帯の打球を量産している。

 また,昨年は同じニューヨークを本拠地とするメッツのピート・アロンソがジャッジの保持していたルーキー最多の52HRを更新。ニューヨークの後輩に負けていられないという気持ちもあったかもしれない。

 冒頭の話にもあるとおり,今季は試合数が減少している関係上,本塁打王は多くても15~20本代と予想されている。ちなみに60試合×2.7=162試合となることから,今季20HRを放つことは54HR相当と換算される。8試合消化時点で6HRを放っているジャッジ。残り52試合で14HRを打てるかと問われれば,現状有り得る話だろう。ブレイクイヤーの2017年,開幕から52試合で18HRを記録していることからも今季のジャッジがどこまで本塁打を放てるかに注目したい。

 また今季特筆したいのがチャンスでのクラッチな本塁打である。7月31日のBAL戦では1点を追う9回,1死1.2塁の場面で登場すると高め95mphのフォーシームをレフトスタンドへ。そして今夜も勝利をもたらす一発。もともとチャンスに強い打者であるものの,今季のそれは例年の比ではないと感じる。「ホームランが欲しい場面でホームランを放てる打者」が存在するとなればこの上ないが,今のジャッジはその境地に達しつつある。

 昨年の優勝チーム,ナショナルズを見てもPSのここぞという場面で本塁打を沈めたソト,レンドン,そしてケンドリックという打者がいたことからも,ただ本塁打を量産するだけでは超えられない壁があることは事実であるため,ジャッジのような一発を放てるプレイヤーが今季の試合の中で増えていくことを期待したい。

【小ネタ】
60試合×2.7=162試合となるのだが,例えば2001年に73HRを放ったバリーボンズは開幕60試合で33HRを放っている。数式に当てはめると年換算が算出できるのだが,いざやってみると33HR×2.7=89HR(年換算)という結果に。やっぱりステボンズは至高だね。

②復活を遂げた大艦巨砲「ジャンカルロ・スタントン」

2017年オフ,日本の至宝であった大谷翔平の獲得に失敗したヤンキースは禁じ手に出る。その年のMVP・本塁打王(59HR)・打点王を獲得したマイアミ・マーリンズの主砲であったジャンカルロ・スタントンを獲得したのである。『野球界に申し訳ない』という名(迷)言とともにピンストライプに袖を通したG砲は2018年,ジャッジ不在の中でチーム最多の37本塁打を放ち,なんとかニューヨーカーの溜飲をギリギリで止めていた。しかし2019年。開幕直後に右肩を負傷すると6月まで離脱。しかし復帰後数試合で再度怪我で離脱すると9月まで彼の姿が戻ることはなかった。ポストシーズンでは4番を務めるも剛球アストロズの前に三振マシーンと化し,「お前の存在が申し訳ない」「お前が謝れ」と言われる始末。年俸の高さも相まって,テキサスの暴行犯を彷彿とさせる不良債権となりはじめていた。

 そんなスタントンが今年は絶好のスタートを切っている。Natsとの開幕戦ではマックス・シャーザーから特大のアーチを放つと,次の試合でもムーンショット。そこから本塁打は止まっているものの,昨年まで顕著であった「無駄な凡退」がかなり減ったように思える。「無駄な凡退」というのは外角のスライダーに3球投じられて三振という様式美を指すが,今季はこのボール球にピクリとも反応していない。(それでも結構振ってるけどネ)その影響か,今季は6三振を喫しているものの6四球をもぎ取っているため,出塁率は.469という数字を残している。

 確かにまだ10試合しか消化していないものの,この傾向は今後のヤンキースにとって恐ろしくも心強い存在となる。ジャッジがこのまま好調を保ったとしても,後ろを担うスタントンがブンブン丸では勝負を避けられるのは必然。今のスタントンを見て「ジャッジとの勝負を避ける」といった考えをする投手はいないだろう。(だからこそ3番を担うトーレスの復調は必須)

 まだまだスタントンを信じ切れるフェーズではないものの,4番に座るのは彼以外いないのだとヤンキースファン全員が思っていることだろう。彼が2017年のような輝き,はたまたそれ以上の活躍を見せる時がヤンキース王朝復権の時であると確信している。

コラム:ブーンの愛人采配に物申す

 開幕7勝1敗とはいえ,完全に満足のいく試合は2.3試合のみ。ラインナップの組み方や継投については言いたいことが沢山あるが,ここでは1つだけ触れさせていただこう。

 昨季,ジオ・アルシェラという三塁手が突如覚醒し,負傷者多数のヤンキースを救った。また,時を同じくして,ロッキーズから獲得したマイク・トークマンという男が攻守で目覚ましい飛躍を遂げ,87試合でrWAR3.6を残す衝撃を与えた。

 開幕からアルシェラは三塁手に就き,OPS1.035と絶好調。ここまでは良い。しかし同じように昨季活躍したトークマンは未だに粗雑な起用をされており,全ヤンキースファンが激怒しているのだ。(ソースはない)

 ブーン監督がトークマンを差し置いて使用しているのはブレット・ガードナーとミゲル・アンドゥーハ。ガーディーは昨季28HRを放っており,出塁率も高く,起用するのはまだ分かる。(それでも5番起用は本当に謎)ただし今季は不振にあえいでおり,守備についても近年は低下の一途を辿っている。
 そして後者のアンドゥーハ。三塁守備失格の烙印を押された男が何故レフトを守れると思ったのか。本日はレフト前の打球をレフトフェンスへスルーパス。BOSの10人目の野手と思わせるような活躍を見せた。

 それに比べ,僕らのトークマンは昨日3安打2盗塁を見せると,本日はレフトのアレの代わりに守備から出場。1点を追う8回裏2死から四球を選び,盗塁。ラメイヒューの中前打で同点のホームを踏むなど影のMVPと呼んでいいくらいの活躍。別に誇張して書いてないよほんとだよ。

 もう結論はたった一つ。トークマンを使えと。これが優勝への近道です。DRS+16の外野手よりレフトでトンネルしてる選手を優先する気概がよう分かりませんわ。なにより昨年6盗塁だった男が2試合で3盗塁している時点でトークマンの闘志に気づいてほしいですよ。

【月刊Winkees 創刊号 完】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?