履歴書にボランティア歴もふつうに書いていいって素敵だ


2012年の夏にイギリスのオックスフォードに来ました。
わたしは若い時に将来外国に住もうと考えたことも特になく、英語の勉強を頑張ったわけでもありません。なので英語はまだまだで、バスに乗ったり、買い物をしたり、外出して迷子にならずに帰宅することはできたけれど、込み入った会話では聞き返してシンプルな表現で言い直してもらったり、会話中に「ちょっと待って」とお願いしてタブレットの辞書で単語の意味を調べたり、という感じでした。

そんなわたしに社会参画の機会を与えてくれようとお考えになったのかどうか、子どもたちの通う小学校の校長先生がある日、
「お願いがあるんです。」
と話しかけてきました。
「週一回、お昼休みに低学年のクラスで折り紙クラブをやってくれませんか?」
わたしはよろこんで引き受けました。ボランティアです。
オックスフォードシャー州当局によるクリミナルチェックで過去に犯罪歴がない確認(あるわけないんですけども)ののち、正式に学校のスタッフとして登録されました。名目は「クラスルームアシスタント」です。
そして毎週1回、麻のショッピングバッグに折り紙と折り紙の作り方のコピーを入れて、小学校に通うようになりました。これが定期的に社会と接点を持つ初めての機会となりました。
ちなみにこの「おりがみくらぶ」というサイト(ツイッターで教えてもらった)は非常に役立ちました。多言語に切り替えられる優れたサイトです。

子どもたちは英語がおぼつかないわたしにも遠慮なく話しかけてくれ、わたしの多分わかりにくい英語にもじっと耳を傾けてくれ、いつも楽しいひとときをすごさせてもらいました。
「これはどういう風に言えばいいの?」子どもたちに英語を教わることもありました。のちに折り紙だけでなく、他の曜日に編み物クラブもやりました。
それがイギリスでの1年目。
この校長先生からのお申し出がなければ家にばかりいる日々になっていたかも知れません。
わたしのイギリスでの社会参画はこうしてボランティアから始まりました。

次の年にはオックスフォードブルックス大学の日本語の教授のアシスタント(ボランティア)もしました。
あるとき小学校の校長先生が、ボランティアも正式に履歴書に経歴として書いていいんですよ、と教えてくれました。
「へえ、それはすごい!」
カルチャーショックでした。

その後日本食レストランで週2〜3日、寿司シェフのアルバイト(日本人スタッフが多く、仕事そのものは日本語中心でした)をしたり、マーケットでお買い物中にショップのオーナーからスカウトされて海苔巻きを納品するようになったり、だんだんと活動範囲が広がっていきます。
子どもたちの学年も上がっていき、少しずつ英語にも自信がついてきて、そろそろパートでもしようかなと思い始め、週20時間程度のパートタイムジョブを探し始めました。
就職活動でいちばん重要なのはもちろん履歴書です。

↑これは日本のコクヨの履歴書。学歴や職歴を書いていきますね。
イギリスの履歴書に決まった書式はなく、志望動機をしたためたカバーレターと、年表式のプロフィールを数枚にまとめて提出します。手書きはしません。パソコンで作り、プリントアウトしたものを送るかメールに添付して提出します。

小学校の校長先生に教えてもらった通り、経歴の年表には、日本でのボランティア、たとえばUNWomenやガールスカウトの団委員長や、自殺防止電話相談員、PTAの会長をつとめたこと、イギリスで経験させてもらったおりがみクラブ(クラスルームアシスタント)や大学授業のアシスタントも、どんどん書きました。面接でもそれらについて職歴と区別せずに質問されるのでした。収入に結びつかないものであっても、それらの経歴はなんらかの形で社会参画をしてきた証として評価されるって素敵だと思いませんか。

おかげさまでその後、ある研修施設に週20時間のパートタイム正規職員として採用されました。そのほかに日本食のケータリングの仕事もしています。

人生にはときどき様々な理由や事情(子育て、介護、その他)で学校や仕事の在籍期間がしばらく開くことがありえますよね。
でもその間だって、ひとは一生懸命に生活しています。地域のコミュニティや何かの団体で無報酬の仕事を担ったり、ボランティア活動を頑張ったり、それらは無報酬ですが、社会にとって大切であることに変わりはないのです。
ボランティアも経歴の年表に書き込んでよいイギリスの履歴書と面接での受け止め方は、そのひとの存在をきちんと認め、評価しようという姿勢が伝わってくる、嬉しいかたちだな、と思いました。

今日も最後までお読みくださりありがとうございました。
よい1日をおすごしください!

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