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博物館資料保存論レポート2023年度

「博物館における資料の保存と活用に向けた取り組みと社会的役割」

①はじめに
今回のレポートでは、博物館における資料の保存と活用に向けた具体的な取り組みの調査を通して、保存と活用という矛盾する活動を行う上で博物館が果たすべき社会的役割について考察する。
②博物館資料の保存について
博物館法第4条によると、「学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」と明記されており、博物館に保管された資料、つまり文化財の保存も学芸員の職務の一つとされている。文化財と一口に言っても、捉え方によってはありとあらゆるものが文化財とみなされる。モノそれ自体は存在するだけで歴史的価値を帯びているからである。そこで、今日の日本では文化財を公的に価値付ける文化財保護制度が導入されている。本制度では、現在において文化財としての価値が高いものを文化財保護の対象に指定しているが、指定されていない文化財であっても、未来の評価基準や学術的発見によって価値が高まる可能性を孕んでおり、そうした文化財についても博物館による積極的な収集と保管が望まれる。現在の文化財保存の考え方として、劣化や損傷を防ぐための環境づくりを基本としている。具体的には、博物館における防虫防カビ対策や温湿度の管理、光の照明設定などが挙げられる。

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