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NPO法人O・H・S(One Hapiness and Smile)代表理事宮本 一幸氏


NPO法人O・H・S(One Hapiness and Smile)
代表理事宮本 一幸氏

自身の過酷な体験から現代日本社会における子ども養育の問題点を見出す。その問題を解決すべく「NPO法人O・H・S」を立ち上げ、虐待が起きたときに解決するのではなく、虐待を未然に防ぐ支援を展開。親が余裕のある子育てをすることが、子どもが伸び伸び育つカギ!?

被虐待者だったからこそ見える視点で、これからの児童養育を支えていく!!

「大人が笑えば、子どもも笑う」


Q1.宮本さんが代表理事を務めるNPO法人O・H・Sは、どのようなご活動をする団体なのですか?

A:「大人が笑えば、子どもも笑う」をコンセプトとして掲げた新しい体系の子育て支援をしております。当団体が運営する家庭総合支援施設「心笑(ここわ)」では、預かり教育・アフタースクール事業を行っています。

「被虐待児として過ごした幼少期」


Q2.子育て世代にとって、ありがたい支援サービスですね。なぜ、このような事業を始めるに至ったかについてお聞きしたいです。まず、宮本さんの幼少期から教えて頂けますか?

A:私は、生まれて間もなく乳児院に預けられました。3歳のとき、一時的に親元に戻されますが、父親からの虐待を受けて過ごしました。3人兄弟の真ん中だったんですけど、自分ばかり暴力を振るわれていました。

そのような中にも関わらず、7歳になるときに母が失踪してしまったんです。それを機として、児童養護施設に保護されました。

Q3.なぜ、宮本さんばかり虐待されたのでしょうか?

A:父としては、望んでいなかった出産だったようです。兄と自分は、年子なので、育児によるストレスもあったのではないかと思われます。その矛先が、私に向いたのでしょうね。

Q4.お母さんが失踪したとのことですが、お父さんとも会わなくなったのですか?

A:いえ、父は、施設に面会に来ていました。でも、来るたびに、理不尽な暴力を受けていましたね。母の失踪をはじめとした上手くいかないことを僕のせいにしていたのかもしれません・・・

「しつけ」と「虐待」の違いとは?


Q5.なぜ、そこまで酷いことをしたのでしょうね・・・。「しつけ」と称して暴力を振るう人もいるようですが、宮本さんは、「しつけ」と「虐待」の違いをどのようにお考えですか?

A:無論、暴力はいけないと思います。ただ、暴力の善悪については一旦置いておき、「しつけ」と「暴力」の違いがあるとしたら、自己都合なのか子どもを思っての行為なのかの相違だと思います。

例えば、子どもが「遊んで~!!」と言ってきた時に、自分自身に余裕がなく、身勝手かつ一方的な理由で殴ったとしたら、それは虐待にあたるでしょう。自分の感情に任せて、力の弱い子どもに暴力を振るうなんてあってはならないことです。しかし、子どもが、悪意をもって他の子にイジワルなことをしたときなどには、分かりやすく「しつける」こともあるのかもしれませんね・・・ただ、やはり恐怖や痛みを与えるようなやり方は間違っていると思います。

Q6.子どもは、感情任せに怒られたり、殴られたりしたら、善悪について学ぶより「コワかった」「痛かった」という印象しか残らないでしょうからね?

A:そうですね。育児だけでなく、仕事や家事などを抱え過ぎていると、イライラする気持ちになるのは当然かと思います。なので、いかに余裕を持つことができるかが大切なのでしょうね。

虐待は、身も心も殺す


Q7.宮本さんは、虐待を受けたときにどのようなお気持ちでしたか?

A:当然辛かったですし、理不尽さに腹立たしさも感じました。

また、それだけでなく、ずっと存在を否定されるようなことばかりされてきて、誰一人味方になってくれる人がいないと思っていたので、「なんで自分は生まれてきたんだ!?」「俺なんかどうせ必要ない人間なんだ・・・。」といったネガティヴな感情に心が支配されていました。

Q8.誰一人として味方がいない・・・?

A:実際には、理解しようと努めたり、温情をかけてくれた人もいたのですが、そのような人たちにも心を閉ざしてしまっていました。

10代の大半の時期は、荒れていましたね。周りの人たちどころか、自分の存在価値すら疑っていました。

Q9.荒れていた時期を抜け出す出来事があったのですか?

A:17歳のとき、知り合いの小学2年生の女の子が、ファミレスにて1人で食事をしていたんです。「1人で食事してるの?どうしたの?」と聞くと、「親は、仕事でいない。だから1人なの。」とのことだった。

こんな寒い夜に、小さな子がたった1人でご飯は食べているのがショックでした。しかも、その子の家族だけでなく、レストランの人たちも気にしている様子がなかったんです。

この状況を見たとき、「親や社会はどうなっているんだ!?」という怒りが芽生えたんです。

自分に与えられた使命


Q10.そのことをきっかけとして、「児童福祉」について学び、子どもに関わるお仕事を志すようになったのですか?

A:そうです。荒れた生活もやめて、里親家庭へ入りました。そして、福岡工業高等学校の定時制、こども専門学校と近畿大学豊岡短期大学通信学科を卒業し、幼稚園教諭・保育士・社会福祉主事等の資格を取得しました。

そうして、将来を具体的に描き始めていた18歳を迎えたある日、生き別れになっていた母からメールが届いたんです。内容は、謝罪の言葉や近況について綴られていました。

Q11.お母さんへは、どのような感情を抱いていますか?許せないという気持ちでしょうか?

A:許すとか許せないと問われたら、許せてはいます。きっと母も大変だったのだろうと・・・ただ、こちらも辛かったので、複雑な気持ちも拭えませんでした。

Q12.資格取得後は、どのようなお仕事に就かれたのですか?

A:最初は、児童養護施設で働きました。

それから、視野を広くもつべきと考え、海外でも活動していました。

フィリピンへ語学留学し、カンボジアでは教育支援活動(幼稚園教育のプログラムづくり)、オーストラリアでワーキングホリデーを経験しました。

こちらは、スマイリーフラワーズさんのサポートにより実現できました。

Q13.海外で見聞を深めることにより、どのような気付きがありましたか?

A:ある貧困国にて、日本の貧しさとは比較にならないくらいの絶対的貧困家庭ばかりの集落で活動したことがあるのですが、そちらの子ども達の目がキラキラしていたんです。

日本のように近代的なオモチャなんてなく、手作りのボロボロになったボールを追っかけ回して楽しそうに遊び、食事もみんなでワイワイ食べていたんです。

「なんでみんな笑顔で楽しそうなんだろう?」と考えてみたら、家族単位でなく街全体で子ども達を見守っていたんです。

海外を巡る中で、人の目の輝きや人間同士の繋がりの強さと大切さを感じました。

現代日本社会が抱える育児の問題点


Q14.現代の日本社会では、近隣の人たちや地域コミュニティとの繋がりは希薄な気がします。これにより、育児をはじめとしたあらゆる悩み事を自分だけで抱え込んでしまう人も多いでしょうね?

A:はい。それにより虐待をしてしまうという負の連鎖もあるかと思います。

多忙かつストレスフルな生活を送り、「誰にも頼れない、助けてくれない。」という状況であったら、心の余裕も奪われていくでしょう。

見方を変えてみたら、虐待してしまう親も被害者なのかもしれません。

Q15.大半の日本人には、「人に迷惑をかけてはいけない」というマインドがあるのも「人に頼ることができない」一因かもしれませんね。どうしたら、そうした悪い連鎖に歯止めをかけることができるでしょうか?

A:被虐待児や虐待した親のケアも大切ですが、そのような状況になる前になんとかフォローしなくてはなりません。そのためには、親や子どもではなく、子育てをするための社会構造を変えていく必要があると考えています。

重要なポイントは、「未然に防ぐ」ということです。

そこで、O・H・Sでは、積極的な「子育て支援」を行うことで、親子共に心の余裕を持ってもらえるように支援しています。

Q16.虐待が起きる前に、親のフォローをすることができれば、児童養護施設に入所する子どもも減らすことができるでしょうね?

A:はい。児童虐待をするのは親というケースが多いですが、虐待を生むのは社会だと思います。

「横の繋がりをもつ、頼ることのできる人がいる」ということで安心して子育てができる社会をつくることができると思います。

私は、「大人が笑えば子どもも笑う。」と思っておりますので、親子双方への支援をしていきたいです。

宮本さんがつくりたい未来


Q17.宮本さんの今後の展望をお聞かせいただけますか?

A:「心笑」を必要としている人たちのためにも、全国的に展開していけたらと考えております。親が、余裕のある子育てをできれば、子ども達も伸び伸びと成長することができますから。

そして、いつの日にか笑顔の絶えない家庭の中で子ども達が健全に育っていける環境が整ったら、「心笑」がなくなっても、みんなが心から笑えますよね。そんな日が来ることを心から願っております。

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