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平成の煩悩たち(平成時代のJ-POP108)

ついこの間まで平成だったはずなんですが、偉いもんで2,3か月も経つとあっという間に過去になってしまうもんです。ということで、平成時代の自分の好きな曲を集めたSpotifyプレイリストを作ってみました。調子こいて作っていくと曲数が際限無くなってしまうので、ちょいとシャレて、煩悩の数と言われる108曲に絞ってみました。

昭和天皇崩御の時は大学生で、仙台のビデオ&CDレンタル店でバイトしていました。あの時から30年、就職で東京に出てきて管理職サラリーマンとなった今まで聴き馴染んて来た曲を割とランダムに並べてみた感じです。

"J-POP"という単語も平成の時代に世に出てきて定着したものじゃないかと思いますが、自分としての平成のJ-POPの印象を箇条書きすると以下のような感じになりました。

・和製R&Bの隆盛
ここでいうR&Bは文字通りの「リズム・アンド・ブルース」ではなく、「アール・アンド・ビー」もっと言うと「あーらんびー」端的に言ってしまえばアメリカの現在進行系の大衆黒人音楽に呼応したサウンドを持った楽曲です。その点で自分的に大きかったのはMISIAの登場でした。
もちろん宇多田ヒカルちゃんの登場は非常にセンセーショナルではありましたが、MISIAのデビュー曲「つつみ込むように」の完成度の高さには本当にびっくりしました。当時のUSのサウンドトレンドをしっかり押さえつつ、ほぼ全編日本語の歌詞をMISIAが語感をそがないように、かつグルーヴィーに歌い上げるあの曲に、明らかに何か新しい扉が開けられたような気分にさせられたのを今でも覚えています。ここから広い意味での「ディーバ」ブームが花咲き、大衆的には安室奈美恵や浜崎あゆみを筆頭として、あらゆるスタイルの女性ボーカリスト達が世に出てきた気がします。このプレイリストにも椎名林檎、bird、Double、BoA、UA、Crystal Kay、Cocco、BONNIE PINKなど女性ボーカリストの曲がたくさん入ってます。

・音楽プロデューサーのブランド化
「和製R&Bの隆盛」と呼応する部分もありますが、小室哲哉を世間的な象徴とした音楽プロデューサーのブランド化がかなりはっきり進んだ時代だと言えると思います。このプレイリストの中だと大沢伸一(椎名純平、モンド・グロッソ)、朝本浩文(UA,SILVA)、亀田誠一(椎名林檎、Do As Infinity)冨田恵一(キリンジ、冨田ラボ)、松尾潔(CHMISTRY)、小林武史(Mr. Chldren,My Little Lover)、中田ヤスタカ(Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ)が手掛けた曲が複数収録されています。こういったプロデューサー達は日本ではまだ馴染みの薄いジャンルやスタイルの音楽を巧みに提供楽曲に組み込み、日本のリスナーの耳の間口を拡げたという点で大きな功績を挙げたと思います。特に大沢伸一氏、朝本浩文氏、中田ヤスタカ氏はクラブ・ミュージックへの造詣が深く、ハウス、ジャズ・ファンク、ドラムンベース、EDMといったサウンドをボーカリストとマッチングさせることに関しての抜群のセンスと技術で何度も唸らせてもらえましたし、一方で冨田恵一氏、亀田誠一氏、小林武史氏はヴィンテージ、エバーグリーンなロックのサウンドをアップデートしてアーティストの個性をグッと引き出す匠の技で何度となく(物理的にではなく、慣用句的に)膝を打ったものです。

・音楽制作環境の急速なコモディティ化
音楽制作におけるデジタル技術の急激な進化によって、今やコンピューター、なんならスマートフォン1台あればそこそこのクオリティでのサウンドができてしまう時代になりました。これでいにしえのビンテージサウンドから最新のクラブトレンドまで技術とセンスさえあれば縦横無尽にサウンドを構築することが可能となり、海外のアーティストたちとの間のサウンドクオリティの差がほとんどなくなった(というか、国内か海外か、といった区分けそのものがナンセンスになった)と思えます。今やネットを介して世界中に音楽が共有される時代になり、言葉の壁すらぶち壊されようとしていますが、平成の30年でのこの技術の進化は眼を見張るものがあります。平成末期に現れた「ボカロP」や「音楽系YouTuber」などは象徴的な存在ではないかと思います。彼らの中から令和の時代を象徴するアーティストが出てくる事は間違いないないでしょう。

・忘れちゃいけない「渋谷系」
挙げる順番が違うだろ、と怒られそうですが「渋谷系」です。未だ賛否入り乱れるこの「渋谷系」と言われる括りですが、平成の世に来てそれまでの日本の音楽リスナーの中に根強くあった「洋楽コンプレックス」のようなものを、何かどうでもよいものにした(決して打ち破った訳ではない)功績は無視できないと思っています。パクリかオマージュかサンプリングなのかよく分からない、臆面もない軽薄な本歌取りも多く、眉をひそめる音楽有識者も多かったようですが、そうやって生み出された数々の楽曲が結果的にリスナーたちの価値観からフィルターのようなものを排除し、時代を追うごとに細分化されていくサウンドスタイルが受け入れられる素地を作ったのではないかと思えるのです。フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴを筆頭にオリジナル・ラブ、ラヴ・タンバリンズ、このプレイリストにいないアーティストでもヴィーナス・ペーター、エスカレーターズ、ブリッジ、もう少し広げるとスチャダラパーなんかも入れられたりするかも知れません。結果的に一時的局地的かつ現場ではなくメディア主導のブームだったことは否めませんが、「徒花」扱いするには勿体ない要素が沢山詰まったムーブメントだったと思います。

なんてなことを考えたり、考えなかったりしながら作ったプレイリストです。曲数も多いので、お掃除するとか何かする時のBGMでも流し聴きして頂けると幸甚です。

※たまに1,2曲入れ替わるときがありますが、中の曲が急にサブスクから取り下げられたか、もしくは新たにサブスク解禁された曲に取って代わられたかのどちらかです。