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狂える純粋

こんな日だから戯れの贅沢に、ワックスのかかってないレモンを一つだけ買って帰ろう。

ザク切りにしてそのまま冷凍庫に放り込み、ひと欠片ずつ氷がわりにジンか焼酎に入れるのもよし。グラスの中で溶ければそのまま皮ごと囓ろう。

かつて、東京には空がないと看過した女性は狂人だった。

心がこの世の柵から解き放たれている、それが故にその感性だけではなく、その存在のすべてが純粋で美しく、詩人は生涯をかけて彼女を愛しんだ。

手前勝手にそのことに想いを馳せ、レモンと愛の相関関係について、ただ連連と考えるこんな日があったっていいとオレは思うんだ。

パイナップル(手榴弾)のように食べかけの檸檬を投げこむべき外濠も、デッサン素材を模した時限爆弾の如く確信犯的に陳列平台の上へレモンを置いて立ち去るに相応しい老舗の画材屋もこの手近にはないことだし…。

https://4seasons-poetry.com/archives/1041978552.html


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