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後悔

後悔がある それは 警察を全面的に信頼していたことだ
「何かおかしい」と感じても 異を唱えず黙って従った
彼らに余計なストレスを与えず スムーズに仕事をしてもらうことが
解決への唯一の道だと信じた
彼らにとって恰好のカモになった
愚かだった

現場到着後 火を消してくださった消防関係の方に頭を下げた後は
何はともあれ できるだけ多くの現場の写真をとっておくべきだったのだ
彼らに嘘をつかせないために

昼過ぎまでパトカーに籠もり
聞き取り・調書作成の相手をしている場合ではなかったのだ

60km 離れた日南から実家に来る前に
もう一人の遺体について 家族 親戚 友人
思い当たる全てに連絡を取り 「該当者なし」を伝えている
実はそれさえも急いで伝える必要はなかったのだ

そこにいるただ一人の当事者として
しっかり現場を守らなければならなかったのだ

実家と道を挟んだ隣の家に停めたパトカーの後部座席で聞き取り調書作成がされた
「どんな家族だったか」聞かれた
「仲の良い 家族でしたよ」と差し障りのない大人の会話をして1分で切り上げれば良かったのだ
内側から見た家族を誠実に伝える
誠実に伝えると誤解が生じる
誤解がないように説明するのは難しく時間がかかる

「どんな兄だったか」聞かれた
「いい兄でしたよ」と差し障りのない大人の会話をして1分で切り上げれば良かったのだ
弟として兄を誠実に語る
誠実に語ると誤解が生じる
誤解がないように説明するのは難しく時間がかかる

愚かだった 誠実に応える必要など全くなかったのだ

「兄はバイクに乗っていたか?」聞かれた


何を求めているかわからない 意味があるのか?
「昔はバイクがあったが・・」
我が家のバイクの歴史を語った
最後のバイクはスクラップ化していた
気にしていなかったが 何年前だろうか  姿を消した
「バイクがあった時には 乗らなくはなかったと思うが・・」

「兄はヘルメットを持っていたか?」聞かれた


何を求めているかわからない
なぜそんなことを聞くのか?
「持っていなかった・・・・・・・・」
頭を捻り 思い出す
「いや 持っていたか・・・持っていましたね・・」
「持っていましたか・・」
「持っていましたね・・」
「どんなヘルメットでしたか 色とかは・・」
「色は黒っぽい・・というか藍よりは黒いというか・・」
一旦は「そうですか」 と黙ったO巡査部長だったが
しびれを切らした意を決した素振りを抑え
「形は?・・例えばフルフェイスヘルメットではなかった?」
「いやいや 違います 趣味のカイトサーフィンで使うやつだから」
と笑って否定した

「それは何か火事に関係があるんですか?」
「いえ 大したことはないです・・一応」
言葉を濁し答えなかった  不愉快だった

「私は可能な限り全力で答えている 信頼しているからだ
信頼にまともに応えず 隠し事をする
隠し事をし 必要なものだけ取る
一方的に利用するだけの者は信頼に値しない 協力できない」
当然のことを彼らに伝え
パトカーから出て彼らからの2次被害を防がなければならなかったのである


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