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東日本大震災の震災遺構を巡って ~宮城県山元町 震災遺構中浜小学校~

今回投稿するのは、宮城県亘理郡(わたりぐん)山元町(やまもとちょう)にある、宮城県山元町震災遺構 中浜小学校です。
こちらには、今から2年近く前の2022年8月に訪問しました。

山元町は宮城県の最東南端に位置し、太平洋に面しています。

2011年3月11日の東日本大震災では、最大震度6強を観測しました。

中浜小学校の外観

中浜小学校は1964年に開校されました。
東日本大震災当時の在籍児童数は59人、教職員数は14人でした。

東日本大震災では高さ10メートルに及ぶ津波の被害に遭いましたが、校舎屋上に避難した児童・教職員と保護者、地域住民ら合わせて90人は無事でした。

屋上へ被害したものの、あたりは津波の被害により自由に身動きが取れず、寒さが険しくなる厳しい状況でした。
体育館に保存されていた非常用毛布を用いて防寒に使ったり、皆で励まし合ったりしながらそのまま屋上にある屋根裏倉庫で一夜を明かし、翌3月12日に自衛隊のヘリコプターで無事全員救助されました。

中浜小学校はその後、内陸にある坂元小学校と併設される形で再開されましたが、その坂元小学校と統合され、2013年に閉校となります。

そして、宮城県南部に残る唯一の被災建築物である校舎としての保存・活用が決定され、2020年9月26日より震災遺構として一般公開が始まりました。

校舎前に残された、津波により倒された時計台
津波により流された石碑
倒された銘板などもあります。
校舎1階。窓ガラスは割られ、流木などが残っています。
崩れ落ちている壁や天井
校舎内1階の中庭より。津波は2階天井近くまで迫りました。
校舎内の様子
校舎外観の様子
手前にあるのは、「3月11日の日時計」と呼ばれる震災モニュメントです。震災翌日、このあたりに救助のヘリコプターが到着しました。
校舎屋上にある倉庫。この場所に避難し、一夜を明かしました。
(写真:山元町震災遺構 中浜小学校ホームページより)

津波や台風などの自然災害時の避難の考え方としては、水平避難と垂直避難がしばしば例に挙げられます。

津波災害時で言えば、海や川からより遠く、より高くへ避難するという考え方が水平避難。
一方、津波到達時刻が迫り、水平避難ができない時は堅固な建物の上階に避難するという考え方が垂直避難にあたります。

中浜小学校の場合で言えば、後者の垂直避難でした。

当時の校長先生の話では、
被災直後、校舎内でテレビをつけると「10分後に6メートルの津波がくる」との情報が流れ、やがて10メートルに修正されるようになったそうです。

最寄りの避難場所までは児童の足では徒歩20ほどかかること、また、2階建ての中浜小学校の校舎の高さは8メートルでありましたが、1989年に改築された際、敷地全体を2メートル程度嵩上げされていたことを知っていたことを踏まえ、校舎内に留まり、校舎屋上へ避難することを決定したのです。

実際に津波が来たのは地震発生から約1時間後ではありましたが、結果として90人の命を守り抜いた決断となったのです。

前回、以下の浪江町立請戸小学校の紹介をしましたが、こちらは校舎から離れる水平避難を判断して安全が確保されたケースです。

東日本大震災のような巨大地震の直後は、テレビやメディア、SNSを含むインターネットの情報は錯綜していて正確な情報を把握するのは容易ではありません。

そうした状況で一刻を争う判断をする必要があるのです。全員が助かるためにはどうしたらいいのか、極限の状況で判断を迫られるのです。

当時の中浜小学校の校長先生であった井上さんは、とっさの判断で屋上を避難場所として決定したものの、「それが正しい判断だったとも言い切れない」とも語っています。津波は屋上近くまで迫っていて、もし2メートルの土地の嵩上げがなければどうなっていたか……。

ただ、最善策が明確でない中でも、状況を迅速に判断し責任を負う覚悟で行動することが、命を守ることになるということは記憶に留めておきたいと、私自身感じています。

そのために、平時からの備えや訓練、想定外も含めた想定を巡らせておくことが迅速な判断に繋がるのだということ。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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山元町震災遺構 中浜小学校についてはこちら(ホームページ)

参考文献等

・河北新報 「今できることプロジェクト 震災伝承新聞」 2022年2月11日発行

・国立教育政策研究所 「震災を乗り越えて 宮城県山元町立中浜小学校」
https://www.nier.go.jp/06_jigyou/kyouiku_sympo_h23/5_siryou.pdf  


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