KAYOKO TAKAYANAGI|ruff|19th Century Modern
シャーロック・ホームズの名前を知らない人はいないのではないか。
それほどまでにこのスノッブでシニカルな英国生まれの探偵は、この国でも愛され続けている。原作の小説のみならず、TVシリーズや映画で出会ったという人も多いだろう。実直で真面目な相棒のワトスン博士との掛け合いは、バディものの元祖といっても良い。
霧深い19世紀ヴィクトリア朝ロンドンのベイカー街。難事件を鮮やかに解決するこの個性的なキャラクタは、今も我々を魅了し続けている。
今回の展覧会のメインビジュアルを飾るのは、主役の二人、ホームズとワトスンを描いたruffの作品だ。背中合わせに立つダンディな二人の姿に、シャーロキアンならずとも釘付けになるに違いない。
コラージュの手法を用いたスタイリッシュでスマートなruffの作品は、その洗練された格好良さで大変人気がある。モノクロームやシルバーを印象的に用いたその画風は、知的で隅々にまで張り巡らされた美意識がとても心地良い。
ホームズの鳥打帽とインバネスコートは、お馴染みのアイテムだ。ワトスンの山高帽に口髭も、如何にも英国紳士らしい。
画面上に散りばめられた数字やアルファベット、そして「The Dancing Men」。謎めいたそれらは物語と呼応して、我々を事件の只中に放り込んでくれる。
そしてホームズが手に持つパイプと二人の虹彩が、菫色に染まっているのに気付かれただろうか。
そう、ホームズとワトスンは、時空を超えて遥か東方のここ菫色の部屋に降臨したのである。
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ホームズとその宿敵であるモリアーティ教授。
この二人は合わせ鏡のような存在だ。その優れた頭脳も稀有な能力も、使い方次第であることを我々に教えてくれる。
光の世界に生きるか、闇の世界に生きるのか。
自らの分身のような相手に対する愛憎半ばする感情は、あり得たかもしれないもう一つの自分の人生に対するものなのかもしれない。
トランプの札のように対照的に配置された、ホームズとモリアーティ。同じ菫色の瞳をもって描かれた二人の火花が散るような頭脳戦を、ruffのこの見事な構図から読み取ってほしい。
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目を閉じて沈思黙考するホームズ。そのもの静かな外見とは裏腹に、彼の頭の中には明晰な思考がめまぐるしく流れている。
推理とは、既知の事実をもとに未知の事柄を導き出すことである。推測や推量のように根拠に乏しい不確実な判断ではなく、ましてや憶測のような当てずっぽうなどではない。推理とは、あくまでも観察した事実や判明した事柄に基づいて、まだわかっていないことについての結論を導き出す論理的理性的な思考であるのだ。
ホームズの推理により全ての謎が解き明かされるその瞬間が、もうすぐ訪れる。
現代も色褪せぬ探偵小説の金字塔。
ruffによって19世紀のベイカー街から21世紀のモーヴ街へと呼び出された、ホームズにワトスン、そしてモリアーティ。
19世紀はいまアップデートされた。
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ruff | イラストレーター →Twitter
鉛筆や絵具、箔押しなどのアナログとデジタルを組み合わせ、モードとアンティーク、仄暗い雰囲気の世界や住人を描く。
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作家名|ruff
作品名|I'll leave it to you.
インクジェットプリント・箔押し
作品サイズ|24.7cm×16cm
額込みサイズ|37.7cm×29cm
制作年|2021年(新作)
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作家名|ruff
作品名|Uncover with light / Create darkness
インクジェットプリント・箔押し
作品サイズ|24.7cm×16cm
額込みサイズ|37.7cm×29cm
制作年|2021年(新作)
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作家名|ruff
作品名|reasoning
インクジェットプリント・箔押し
作品サイズ|16cm×16cm
額込みサイズ|28cm×28cm
制作年|2021年(新作)
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