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水槽の彼女〜カバー小説【7】|#しめじ様

この短篇小説は、しめじ様のnoteからインスパイアされてカバー小説にさせて頂きました。

↓ ↓ ↓



🌿これまでの話🌿



▶6話(1〜5話収録)



《登場人物》



・僕…34歳。ひとり暮らし


・彼女…ハイティーン。崩壊星collapserの瞳をしている。異国のpapaから離れたがっている。


・異国のpapa…世界的な画家。


・りら…彼女の齢の離れた父親の違う妹。
「彼女」を母親だと思っている。



―――


《6話 ハイライトシーン》


「―――取り敢えずさ。飛び出して来たわけだから、このままじゃまずいよ。

携帯が無いならGPSで割り出されはしないだろうけど、捜索願いを出される前に、安否について伝えたほうが・・・有った」

絵葉書数枚と、無地の葉書が1枚出てきた。無地のほうを彼女に渡す。

「これでpapaにまず謝って、君が無事なことを書いておこう。

(中略)

書き終わったら、出来るだけ遠くの大きな街へ出て、投函しよう。

そうしたら、此処まで中々たどり着けない筈だから・・・」


彼女の目が緊張で少し見開かれた。
黒い瞳の中の崩壊星は、もう何処かへ消え、光が宿り始めていた。

「水槽の彼女〜カバー小説【6】」




【7】


僕は、彼女の書いた葉書を持って、車を走らせた。彼女は僕のマンションに残ってもらった。



今日は心身ともに疲れただろうし(まあ、それは僕も同じだが)、県庁所在地ふたつくらい先の街へ行くつもりだったから、帰りが遅くなるに違いなかった。


幾つもいくつもの信号を越えて、目当ての場所に着いた。そこは古い市街地で、駅前のロータリーは人影もまばらだった。





赤く四角いポストが、何か意志を持ったキャラクターのようにたたずんでいた。車を止め、ポストの口に葉書を入れた。


(――頼むから、変なトラブルにならないでくれよ・・)



ポストが神様であるかのように、軽く片手で拝む。


消印は、僕の住所と全く違う街。


これで、papaは当面彼女を探し当てられないはずだ・・・。






ようやく帰宅した。テレビがついたままになっていて、彼女はソファでタオルケットをかけたまま眠りこけていた。


パステルカラーのカットソーの部屋着を着て、素顔の彼女はまだあどけなく見えた。テレビに映っていたのは、「ハリー・ポッター」のDVDだった。


(本棚を探したんだな、)


その様子を想像したら可笑おかしくなって、ふっと忍び笑いを漏らした。タオルケットを、首元まで上げてやった。


(待つ気でいたんだ。でも、まだ子どもだな・・・)




それから、彼女との奇妙な暮らしが始まった。


彼女は家ではずっと僕にくっついて、物の在りや使い方などを覚えようとしていた。


外には出たがらなかった。
合鍵なら有るし(前の彼女のものだった)、窮屈じゃないのか、と訊くと、


「急に私みたいなのが出入ではいりしたら、目に付くでしょ?」と言うのだ。


名前は優愛ゆあだと教えてくれた。

「ゆあとか、りらとか、何か似てるでしょ。mamaの趣味ね・・・」


そう言うときの優愛は、眉をしかめてちょっと辛そうだった。やはり、母親の死は心に影を落としているのだろう。




優愛は何が何処どこにあるか分かると、
「家でごはん作ってたから・・」と言って、(朝はパンなので)夕食を毎日あれこれ用意してくれた。


「今日はカレー」

「今日はチャーハンと餃子。あとスープ」

「ナポリタンとサラダ」

・・・といったふうに。何でも、「住まわせてもらうお礼」なのだそうだ。



家のドアを開けて「ただいま」と言う。(優愛が来るまでは無言だった)
優愛が奥から早足で出て来て、嬉しそうに「おかえりなさい。お疲れさま」と言う。退屈を持て余していたのだろう。


・・・まるで、【おままごと】みたいだった。



優愛とふたりで向かい合って、毎晩ごはんを食べた。やはり口数は少なかったが、日を重ねるうち、優愛から僕へ話しかけることがだんだん増えていった。


ある日、優愛が「いちばん好き」という太刀魚の焼き魚を突付いているとき、躊躇ためらいがちな様子で、僕に訊いてきた。


「―――あの・・・

どうして、私を連れてきてくれたの?
見ず知らずの、他人なのに・・・」


優愛はお箸を宙に浮かせていたが、箸置きにカタン、と揃えて置いた。


僕もお箸を置いた。お皿に渡してだったが。


(そりゃそうだ・・・気になるよな。下心あるんじゃないか、って・・)


話す前に背筋を伸ばした。急に煙草を吸いたくなったが、食事中なので諦めた。


「―――僕はさ、孤児院を出てるんだよ。

君の様子を初めて見ていて、瞳がくらいのを感じたとき、

まるで昔の僕と・・・

いや、僕が其処そこに居るような気がしたんだ。それだけさ」


優愛は僕の瞳をじっと見つめ返した。



ふたりの瞳の中にあったのは・・・
もしかしたら、くらい焔のようなもの、だったかもしれない。



【continue】



▶Que Song

スタンダロン/Dios




はい、今日はここまで。次回は「僕」の過去と「優愛」の過去篇の予定です。


ふたりにどのような共通点があるか?
関係が深まっていくのか?


今後の展開をお楽しみにお待ち下さい😊



🌟Iam a little noter.🌟



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