見出し画像

成長とは何か#6

子どもの成長にとって創作活動はどんな意義があるのでしょうか。
創作活動は子どもをどのように成長させるのでしょうか。
子どもの成長のために大人は何ができるのでしょうか。
そんなことを考察していきたいと考えています。

今回は、成長とは何か、どんな成長があるか、その目的は何か、
と言った話を書いていこうと思います。


生物学的成長

元来、成長という言葉は生物学用語であり、生物が生まれてから
成体になるまでの間に、遺伝子に組み込まれたプログラムに従って
体の大きさや構造を変化させることを指します。
その目的は、生命を維持し、危険を回避し、子孫を残すために
必要な資質を強化・獲得することです。
これは自然の営みの一部であって、個体の意思と無関係です。

この意味では、人間は20歳くらいに成長のピークを迎え、
そこから死を迎えるまで老化し続けます。
しかし人間は、生存欲求を満たすという目的の他にもさまざまな
目的で、成人した後も死ぬまで成長し続けようとします。

では、他にはどんな目的の成長があるのでしょうか。

社会的成長

群れを形成する生物は多く存在します。
群れを作るのは、外敵から身を守り、食糧を安定的に得るためです。
群れに属すと、生き延びるための負担が軽くなる一方で、
群れの中で生きていくための社会性が必要になります。
仲間と意思疎通を図るためのコミュニケーションスキル、
与えられた役割を果たすための知識や技能などのテクニカルスキル、
を強化・獲得する必要に迫られます。これが社会的成長です。

その中で、人間は複数の群れと交流し、家族<村落<都市<国家へと
集団を肥大化させ、より複雑な社会へと群れを変化させました。
ただ、生物の知的レベルによって群れや社会の大きさや複雑さが変化し、
それに応じて社会的成長の内容も変化すると言うだけのことで、
特に有意な違いはありません。

群れに所属するかどうかで個体の意志が入る余地がありますが、
所属してしまえば社会的成長が義務的に課されます。

人間的成長

人間が他の生物と決定的に異なることは何でしょうか。

それは、生きながらえることが当たり前になり、ただ生きるので
はなく、よく生きることを求めるようになったことです。
それは、生活の質・人生の質を高めたい、人間らしい生活を送り、
自分らしい人生にしたいと願うことです。
そして、他の生物とは異なる人間らしい生活とは何か、
自分らしい人生とは何かを追求し、自分の行動を自分の意思で決定し、
生活のあり方を自由に選択しようとすることです。
それを実現するために人間が生まれつき備えているのが人間性であり、
これを成熟させることが人間的成長です。

人間性とはその人固有の内面的な性質のことです。
理性、感情、意志の特徴によって個体ごとに異なる人間性を形成し、
それが自分らしさの素になります。

人間性が未熟だと、不安/怒り/嫉妬などの負の感情が強くなった時、
期待/喜び/愛情などの正の感情であっても過剰に膨れ上がった時、
理性がうまく働かずに冷静な判断ができなくなり、自分の価値観とは
一致しない意志決定・行動を起こしてしまうことがあります。
自分の心の状態や問題の本質を正しく理解しようとせずに、
ただ自分を責めて自己否定したり、他人に責任転嫁したり、
何の解決にもならないお門違いな反応をしてしまいます。

人間性が成熟するというのは、感情を理性でうまくコントロール
して、自分の能力を最大限に発揮させるためのエネルギーを生み出し、
自分の行動に責任を持ち、自分らしさや意志を貫き通せるようになる
ということです。

人間的成長は、必要に迫られたからするものではありません。
誰かに強制されたり、誰かに言われた通りにするのでもありません。
誰に言われたわけでもなく、上達しなくても困るわけじゃないけど、
好きだからこそとことん打ち込める、そう言うものを持つことが、
人間的成長のスタート地点なのだと思います。

まとめ

  • 成長には3つの種類がある。

  • 生物学的成長の目的は生き延びるため、
    全ての生物に起こる自然の営み

  • 社会的成長の目的はより安全で安定した生活のため
    群れを作る生物に課せられた義務的な成長

  • 人間的成長の目的は自分らしい人生を追求するため
    人間だけの主体的で自由選択的な成長
    成長の1歩目は、とことん打ち込めるものを持つこと。

よろしければサポートをお願いします。 いただいたサポートは創作材料や研究資料購入などに使わせていただきます。