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「しあわせな結婚とは、他者が他者であることを許せること」アタシ社・ミネシンゴさん×三根かよこさん ご夫婦

様々なバックグラウンドをお持ちの方の「しあわせな結婚ってなんだろう」に対する想いを伺うインタビュー連載。今回はご夫婦で出版社『アタシ社』を営まれているミネシンゴさん・三根かよこさんにお話を伺いました。

お二人は今年2月から約1ヶ月間開催されるnote投稿企画「#MarryMeを訳してみたら」の共同開催者でもあります。パートナーシップに関して様々なインタビューを続けている私たち。ご夫婦で仕事をされているお二人に、前々からぜひお話を伺ってみたいと思っていました。

どうして夫婦で出版社を立ち上げようと思ったの?夫婦で働くってどんな感じなの?お二人のお仕事や結婚に対する想いをじっくりお聞きしました。

昨年から今年にかけて起こった社会の大きな変化を受けて、今一度自分の足元を見つめ直してみたいと感じている方も多いのではないでしょうか。そんな今だからこそより響く、自分達らしさを追求しながら働き生きる、お二人のインタビューです。

夫婦出版社のはじまり

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シンゴさん:
夫婦で出版社『アタシ社』を立ち上げて6年が経ちました。出版物の刊行や編集、企画が主な仕事ですが、他にもこの『本と屯』という蔵書室カフェ、『花暮美容室』という美容室の運営をしています。うちで作る本に関しては主に妻がデザインを担当して、企画・編集は一緒にやるという形が多いですが、それぞれ個別のクライアントも抱えていて。それはそれで各々動いている感じですね。

出版社を立ち上げる前はお互いにサラリーマンをしていたんですけれど「20代の最後に自分の雑誌を作るんだ」って意気込んで、在籍中に自分たちで雑誌を創刊しました。それがすごく楽しかったのと、実数としても売れたんです。当時「一人出版社」という言葉が注目された時だったということもあって、このまま独立をしてフリーランスになるより版元になって、自分たちで作った本を世の中に売って商売をすることにすごく興味が湧きました。さらに夫婦で出版社をやるってあまり聞いたことなかったから、すごく面白さを感じて。

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▲同じ建物の1階に『本と屯』2階に『花暮美容室』があります。階段を隔てて広がる全く雰囲気の違う2つの空間。まるでワープしてきたようで、思わずワクワクしてしまいます。

かよこさん:
「夫婦でやる」ってこと自体は珍しいことではなかったんですけど、そもそも一人とか二人で出版社をやるっていうこと自体が新しく感じたんです。今いる職場を卒業して、どこかの制作会社や出版社に就職するという方向性ではなくて、出版社を自分たちで立ち上げた方がイニシアチブも取れるし、ずっと受注仕事を受け続けるよりもっと面白いんじゃないかなみたいな話になって。

それで少人数で出版社をやっている方にミネくんが話を聞きに行ったりして。全部一から調べて勉強して飛び込み営業もして…という中で出版社になっていくという流れだったんです。

三崎に拠点を置く理由は

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シンゴさん:
拠点を三崎に置いたのは、東京と適度な距離感があったから。そして何より今の場所は、商店街の中で観光地ということもあり活気があるし、街の人たちもすごくいい人たちが多くて。商いをやっている人たちの集合体なので、皆んな顔が割れているし仲間意識もすごく強いから、高校のクラスのような感じがします。「初めまして」と転校生として入ってきて、徐々に寄り添いながら、クラスメイトと仲良くなっていったみたいな。そういう感覚はすごくありました。

かよこさん:
今年は開催しないかもしれませんが、この街にはお祭りがあるので、祭りの当番も回ってきます。そういうある種の面倒さを引き受けたからこそ、街の人たちから可愛がってもらえる、トレードオフがあって。そういうのが嫌かなって思ったら意外と楽しかったみたいな感じはありますね。東京という街で匿名の存在として生きてきたけれど、この街はそうじゃなくて「三根かよこ」とか「『本と屯』の人」みたいにもう顔が割れてるから、そういう面倒さと面白さの距離の近さが、なんかいいなって思います。

夫婦で仕事をするということ

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かよこさん:
夫婦で仕事をしていると、日常の中に仕事が溶け込みすぎているわけですよ。「プライベートと仕事」っていう感じになってないんですよね。この『本と屯』だって自分たちの店なのか、くつろげる場所なのかよく分からないっていう。なんだか、ファジーさを持って全部が溶けちゃってる。それが良かったかどうかって言われると分からないんですけれど、サラリーマンでプライベートと仕事がかっちり分かれているよりは、自分たちにはすごく合っている気はする。

私たち自身も夫婦でもありライバルでもあり、親友でもあり、仕事仲間でもあるという関係なんですよ。全部くっついちゃってるみたいな。そういう異様さはあるよね。でも楽しい…二人で船を漕いで「行け〜!」って感じ(笑)。サバイブしている感はありますよね。

シンゴさん:
二人で海外旅行に行ってっていう楽しさでは全然なくて。この企んだものが世の中に出て、僕たちの考えてたことがどう評価されるのか。それが売り上げになるのかとか。そういう楽しみとリスクを孕んで進んでるみたいなところはある。それが二人でシェアできるのは、夫婦でやっている出版社ならではというか。

かよこさん:
祭りっぽさがあるよね。仕事がもつ本来の楽しさがあります。何か目標を持ってそれが大成功したら嬉しいっていうことが家庭内に入ってきていて。それを一緒にやってる喜びはあるよね。

二人を結びつけたのは「創作したい気持ち」

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かよこさん:
私たちの出会いは11年前。超短的にいうと、mixiで私がとあるキーワードで検索した時に「ミネシンゴ」が一発目に出てきて。そこから彼のブログを見て「素敵!」と思って残したコメントに、彼からレスがきたのがきっかけです。彼が当時やっていたブログは、写真に一言添えるようなスタイル。それをコツコツやっていて、この人は素晴らしい!繋がりたい!と思ったんです。ブログの内容に惚れ込んだ、というほどのことではなかったけど…。

シンゴさん:
ぶっ(笑)!

かよこさん:
「何かを創りたいけれど場を持ってない」っていうある種のフラストレーションがお互いすごくあって。私は「会社に所属している私」でしかなくて、物を創るという仕事を自立してできている感覚があまり持てませんでした。多分彼も当時美容師としてそういうフィールドがあるわけではなくて。その中でコツコツとブログを書いていた。物を創り続ける人っていいなって思ったんですよね。

プロポーズとブライダルジュエリーがくれたもの

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シンゴさん:
4年間の同棲の後、妻の誕生日に夕日の見える海岸で、婚約指輪をパカっとしてプロポーズしました。婚約指輪を贈ったのは、分かりやすいけじめのようなものになると思ったから。「結婚すると決めた」証として、婚約指輪の代わりになるものはないんじゃないかな。

かよこさん:
そうだね。本当に婚約指輪が欲しいかというと、物体的にすごく欲しいわけじゃなくて。例えば今結婚指輪をしてるじゃないですか。なんか意味性がすごくついているんですよね。アクセサリーは「お洒落で好き」だから着けているんですけれど、婚約指輪や結婚指輪はその二人の繋がりそのものを具現化したものとして身に着けている感じじゃないですか。

シンゴさん:
代替ができないからね。他の物を失くしたら「また買えばいいや」ってなるけど、指輪を失くしたら本当に「どうしよう!」って思うよね。僕はプロポーズをして本当によかったと思います。伝える相手のためだけじゃなく、自分のためにも。自分の中でけじめがつく、自分を変える感覚がありました。言う側にも大きな意味があると思います。

かよこさん:
私たちはどちらかというと、信頼している仕事のパートナーが、何故だか同じ屋根の下に住んでいる…そんなニュアンスの関係性だと思うんです。悪い意味じゃなく自立した他人という感じが強いというか。だからプロポーズやブライダルジュエリーが、実は強力に夫婦としての証明をしてくれている感じがしますね。

しあわせな結婚とは、他者が他者であることを許せること

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かよこさん:
今まで話してきたことを総合したものが、私たちの幸せな結婚のあり方だと思うんですよ。個として生きることを選択するというか。他者が他者であることを許すというのが私の中ではいい結婚だと思っていて。
私たち、仕事の喧嘩とかもすごいんですよ。めっちゃくちゃ殴りあったりとか(笑)。でもなんか分かり合えないっていう感じがすごくあって。彼は彼で私は私だし、全然違うバックグラウンドで生きてきたから。でも一緒に暮らす中で自分も変わっていったり似ていったり、でもやっぱり変われなかったり許せなかったりっていうこともあって。その全てひっくるめて面白がるっていうのがいい結婚なんじゃないかな。

シンゴさん:
他者が他者であることを許すっていうことに、僕はすごく尽きる。だって育てた親も違うわけで。だからそれは衝突も起きます。仕事したら余計起きます。でもそれをね、常にどこまで許して、どこまで許さないかっていう駆け引きをしてるんですよ。それで最終的には結局許し合って、ほんのちょっとだけ分かり合ってっていうことの繰り返し。だからそういう繰り返しなんだっていうことをちゃんと分かっていて、半ば諦めておくことも多分大事だと思うんですよ。それが日々の営みが長く続いていくコツみたいなものなのかな、多分。

かよこさん:
「私が押し付けていたから」ということで自分が変わるのか、っていうことが日々起こり続けている。家族の中から、特に他人同士の結婚から、人は変わっていけるというところがあるんですよね。出会って10年、私たちも変わったよね。

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シンゴさん:
すごく似てきていると思うんですよ、なんか顔も似てきてるし。似たようなもの食べてるし、同じ場所にいるから、そうやって衝突してても、なんとなく似てきちゃうっていう。

かよこさん:
似てくるというか、お互いの中のテンポ・速度みたいなものが合っていく調整作業があって、いつしか二人のテンポが生まれていくっていうイメージだよね。

シンゴさん:
そうだね、漫才師みたいな感じですよ。コンビ結成の時はイマイチだけどね、最近ちょっといい感じに面白くなってきたというかね(笑)。

かよこさん:
出会った時は20代前半で「何者でもない自分」を持て余していて…。そこから10年で「背伸びしても意味はない。自分が持っているもので戦っていく」っていう覚悟がついてきました。そこから全体的によくなったよね、仕事もプライベートも。あの時もう何者にもなれない自分たちが…今もまだ途中ですけど…でも色々な不安がある中で二人で決断を重ねていって今日があるということ、ふと振り返ると胸が熱くなりますよね。

シンゴさん:
うん、たくましくなったよね。

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ミネシンゴ
夫婦出版社 アタシ社代表。
美容文藝誌 髪とアタシ発行人/編集長。
美容師4年、美容専門出版社で月刊誌の編集2年、HOT PEPPER Beautyの企画営業を経て独立。
クリープハイプ「もうすぐ着くから待っててね」「イト」の写真担当。
渋谷のラジオにて「渋谷の美容師」MC。三崎の蔵書室「本と屯」店主。
花暮美容室、三崎の「泊まれる仕事場TEHAKU」なども運営。
三根かよこ
1986年生まれ、千葉県出身。リクルートにて制作ディレクターを6年経験し、その後、桑沢デザイン研究所に入学・卒業。夫婦出版社「アタシ社」創業後は、自社出版物の書籍や雑誌のデザインを担当。2017年に社会文芸誌『たたみかた』を自ら創刊し、編集長を務める。2017年秋より三崎に暮らし、三浦三崎をテーマにした写真集や小説の出版をおこなう。2020年には観光WEBサイト『gooone』を創刊。

【お二人の考える「#MarryMeを訳してみたら」】

ひとりで生きていけるけど、ふたりで生きたいのです。

【お二人の「今ならこれを贈りたい」BRILLIANCE+のブライダルジュエリー】

婚約指輪

※こちらの商品は販売終了いたしました※

指輪を選ぶときはいつも直感に任せています。たくさんのデザインをわーっと見比べたときに、「目が合った」ものを選びます。これは指輪に限らず、いろいろなものを買うときにもそうかもしれません。そこから細かいデザインや雰囲気、身に付ける人がつけたときをイメージして「その人らしい」か想像します。その想像がなんとも楽しんですよね。
このデザインは極限までにシンプルなシルエットで、シンメトリーな形に惹かれました。シンプルがゆえに飽きることなく、力強さも優しさも孕んだバランスに、一目惚れしました。

結婚指輪

※こちらの商品は販売終了いたしました※

未来へ一歩一歩、共に歩む二人の歩幅をイメージして『ステップ』と名付けました。
このコピーを読んで、ぼくらにぴったりなイメージだと感じました。同じ形の台形が反転して、ひっくり返ったり、また元に戻ったり。夫婦の営みをデザインから感じられる素敵な指輪だと思います。

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