見出し画像

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

 個人的に今年は、日本の商業アニメというジャンルが今ある状況を象徴するような出来事が連続した年だったという印象をもっていて、そしてその印象や出来事は、この10選には(少なくとも直接は)反映していません。

   ∞∞∞

『王様ランキング』第14話 第十四話 王子の帰還 (1/21)
 きつそうな見た目の継母が作中の誰よりも優しく主人公を抱擁する人間であって何が悪いとばかりに、キャラクターたちの生き生きとした魅力が横溢する。よくある「記号的役割」どおりに生きることを、アニメとはいえ、そんなことを強要されるいわれはない……「悪役令嬢もの」の増加は、そういう抵抗が物語の原動力になることの周知によるものかもしれない。

■『鬼滅の刃 遊郭編』第10話 第十話 絶対 諦めない (2/6)
 2022年現在TVアニメのビジュアルはここまでやれます、というメルクマール的達成。

■『パリピ孔明』第1話 孔明、渋谷に降り立つ (4/5)
 孔明が現代日本の渋谷に転生して歌手志望の女の子のブレーンになって知謀を巡らせる……というかなりぶっとんだ内容の作品であっても、その「ぶっとび具合」を成立させるために原作者やアニメスタッフが注いだ「原典を大事にする」姿勢は矛盾せず同居していて、それはちゃんと伝わるんだなあと思った。とりわけ1話は「説明」を魅力的に物語に組み込ませるその語り口の冴えが素晴らしい。「説明」を「説明的」と感じさせずに語りのなかに溶け込ませる手腕はTVアニメのなかでとりわけ大事な技術であることを再確認。

■『SPY×FAMILY』第4話 MISSION:4 名門校面接試験 (4/30)
 間然とするところなし、コメディもシリアスもないまぜにした語り口のみごとさ。観ているあいだじゅう「完璧なTVアニメの1挿話」って感覚が、最初から最後まで充満している。

■『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』第9回 1年生 春/かぐや様の文化祭/石上優の文化祭 (6/4)
 TVアニメという枠組みが負荷でギイギイ音を立ててるみたいな、演出意図を荷重搭載した画面設計によって語られる過去と笑い。何気ない会話シーンを切り取る手付きに張り詰めた緊張感(渚目線の三人と石上目線の渚における異様さ!)。絵コンテ:畠山 守。納得しかない。

■『OVERLORD IV』第10話 Chapter 10 最後の王 (9/6)
 アインズは、自分を支配者然と見せるために内なる鈴木悟を隠さなければと腐心しているわけだけど、4期におけるアインズとこの世界の住人による「対話」の魅力をみていると、当人のコントロールされた自己から、はみ出したところにある魅力も、わりとしっかり相手に伝わっているんじゃないかなあという気がしてくる。1話のアインザック然り、この話におけるザナック然り。そして最後にアインズが見せた怒りの芝居における日野聡の素晴らしさ!

■『モブサイコ100』第8話 008 通信中② ~未知との遭遇~ (11/24)
 心情を吐露する芝居を丁寧に作画すること、それらを囲む風景を繊細に描写すること、それらをどういう語り口にまとめるかという設計。それらが高いレベルで歩調を合わせると、例えばこんなことができてしまう、という達成。

■『ぼっち・ざ・ろっく!』第8話 #08  ぼっち・ざ・ろっく (11/27)
 緊張とか重苦しさとかを振り切るためにギターをかきならしはじめる主人公。あそこが、2022年の個人的瞬間最大風速だったかもしれない。例えば『覆面系ノイズ』の最後のライヴのような、つまりほんとにほんとのロックがアニメと混淆する瞬間。

■『魔入りました!入間くん(第3シリーズ)』第12話 願いを弓に (12/24)
 今進行中のフィクションの中でもとりわけ思い入れている作品のひとつ。主人公の周囲にいるのは悪魔ばかりで、そしてその悪魔たちの、なんという人間臭さ。そのことを、自分の居場所を、はっきりと自覚する、最重要エピソードのひとつ。

■『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第11話 第11話 地球の魔女 (12/25)
 言葉のやりとりをしながら、同時にそこにはさまざまなアクションが描写されていて、それが発せられる言葉の「意味」の厚みの描写にもなっている。「生活感」を獲得するための、アニメの歴史が蓄積してきた語り口の実践を画面に見つけることは、いつも嬉しい。例えば『逆襲のシャア』がまさにそういう作品だったことを考えると、どれだけ道具立てが新機軸にみえたとしても、『水星の魔女』はきわめて「ガンダム」的な作品である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?