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『きみの色』前情報なしの第一印象メモ

『きみの色』観てきた。高畑勲監督の系譜だと思ってる山田尚子監督の、これは『赤毛のアン』だと思った。『リズ』を統御する心地いい緊張感とは別種の、開放感のある映画だった。あと劇中の楽曲はどこか相対性理論を感じた(と思ったらEDで永井聖一の名前を見つけた)。 サイエンスSARU作品群のなかにおける印象ということでは、終盤の展開に『夜明け告げるルーのうた』(2017年/湯浅政明監督)を思い浮かべる。この映画の「開放感」の理由のひとつは『ルー』っぽさと無関係じゃないと思う。 以上、

    • きょうは『機動警察パトレイバー 2 the Movie』公開日

      『機動警察パトレイバー 2 the Movie』の公開が夏だったことは忘れがたい――劇中はあんなに雪が印象的な作品にも関わらず。当時エアコンのない部屋にいた自分は暑さに耐えかねて避暑を兼ねるくらいの気分で池袋の映画館で朝の初回に入り、腰を抜かしてそのまま腰をすえて夜の最終まで観続けた。 以前も書いたかもだけど、たぶん自分の人生でもっとも観返した映画のひとつが『パト2』。何度観てもしばらくするとまた観たくなるこの感じは、映画というより音楽…『リボルバー』は一度聴いたからもうい

      • 『MIDNIGHT EYE ゴクウ』(新文芸坐)

         昨夜(13日)は池袋の新文芸坐にて『MIDNIGHT EYE ゴクウ』『同II』('89年リリース)一挙上映を観てきた。エンタメとしての間口の開け方と、コアなこだわりの充実が両立した、見事な川尻善昭監督作品を堪能した。  以前は思わなかったが今観ることで改めて発見したことがたくさんあった。舞台が2014年だったこととか、この時点から観ると驚くほど『GHOST IN THE SHELL[攻殻機動隊]』との親和性がある(ネットへアクセスする力、疑似記憶の悲劇etc.)とか、「2

        • ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』

           高田馬場にあった「ムトウ」は大学に通う途中にあったこともあって本当にお世話になったレコード店で、道を挟んで2店あったうちの片方にあった、半地下のようなジャズコーナーは、そこでいくつも大切なアルバムを購入した場所だった。  ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』もそんななかの一枚で、紙ジャケット仕様で何枚か集中して出たラインナップのひとつ。 #applemusic で久しぶりに聴いてみて、なるほど前後にひしめく「名盤」の間で少しばかり地味な色合いであることも納得し

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          無人島に持っていくジャズ

          無人島に持っていくジャズ――という設問を、以前は「一番好きなアルバム」くらいに考えていたのだけれど、「無人」の場所に持っていく前提を考えるなら、楽器で選ぶべき気もしてくる。例えばピアノのアルバムよりもヴォーカル……もし歌ものを選ぶのではないとしても、管楽器のあの、声の延長としての楽器が出す音を体が求めるような予感がある。 ラサーン・ローランド・カークは自分にとっての全音楽ジャンルにおけるもっとも大切な音楽家のひとりなんだけど、上記の条件にもまた、みごとに合致する。年の最後に

          無人島に持っていくジャズ

          話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

           TVアニメを「話数単位で」選ぶという方針は、どうしても、シリーズ全体としての好感のようなものを反映させにくい。映像的な突出に対する加点とはまた異なる、例えば「シリーズ構成」のようなポジションの仕事への言及もいきおい限定的なものになる。……言わずもがなのことを最初に書いたが、そういう理由で好きだった作品や、あるいはもっと漠然と「突出したクオリティを誇るというのとは違うけど、全体として何かすこく好ましい」みたいな作品は確かにあった。そして「TVアニメ」を評価するということは、本

          話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

          『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と『無敵超人 ザンボット3』の記憶について

          『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』観てきた。爽快感と安心感を充分に摂取した気分で映画館を出た。「TVアニメの劇場版」というジャンルがあるとして、その王道をいろんな意味で体現している映画だと感じた。 『名探偵コナン』の劇場版に近しい感じをもったのは、冒頭の状況説明パート(コナンの場合は小さくなった、こちらは疑似家族になった、それぞれの経緯)の組み込まれ具合と、カップルや家族連れの目立つ客層からくるものかもしれない。  アーニャの年齢相応の行動原理と疑似

          『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と『無敵超人 ザンボット3』の記憶について

          THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

          THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケの訃報は私にとって到底、すぐに消化できるような類のものではありませんでした。かといって、ずっと悲嘆にくれていたりという、そういうことでもない。 作品を介してその声を聴いてきたという関係は、肉親や友人というのとはやはり違う。残るのは、ものすごく大きな喪失感と、これから先も残された作品を聴くことでそのつど「これは一体何だろう」と考えるんだろうという、そういう予感です。 やはりすでに鬼籍の人となってしまっているアベ

          THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

          『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

          『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、観る前に“予習”が必要な映画では全くない。6期のスピンオフという建付けだから、例えば水木がちらりと出てくる1話あたりを観る、というくらいならまだしも、アニメ版『墓場鬼太郎』を事前に観るのはむしろ誤解を生みそうな気さえする。それなら原作の1話を読むとか。 『ゲゲゲの謎』の面白さは、そういう“予習”の有無とかとは離れたところに存在しているし、だからこそこれだけヒットしているのだと思う。昭和31年の空気感とないまぜになった惨劇と友情と因縁を語る、その

          『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

          ミッシェル・ガン・エレファント

          「だがべつに、ミッシェル以外に多くのロックバンドが登場して盛り上がったわけではない。ミッシェル・ガン・エレファントという一つのバンドの力で、それが起きたのだ。」/山崎洋一郎の「総編集長日記」 https://rockinon.com/blog/yamazaki/208246 人もあろうに山崎洋一郎がこういう言い方をしたことが悲しい。 ミッシェルが「一つのバンドの力で」あのときのロックの熱気を作った――そんなことはない。例えば一体、ブランキー・ジェット・シティはどこへいっ

          ミッシェル・ガン・エレファント

          地図の予感を封じ込めたパンフレット――「toony」(かねひさ書房)――

          かねひさ和哉さんの同人誌「toony」が届いた。時間がなくまだパラパラしたのみだけど、ほんの拾い読みしただけでもすごく充実感がある。64頁という分量のなかにまとめられたフライシャーの魅力……そう、自分がこの本を手に取ったときの充実した気持ちの理由のひとつは、この本のボリューム感にある。 フライシャーというテーマに絞った、いわば「窓」を用意したことで、その「窓」の向う側に巨大に広がっている「アニメーション史」全体への、最初のとっかかりを与えてくれるような、そんなパンフレットに

          地図の予感を封じ込めたパンフレット――「toony」(かねひさ書房)――

          最近とみにもの忘れがひどい、とお悩みのあなたへオススメしたい3冊(2017.09.23「シミルボン」投稿)

          《もの忘れがひどい》という悩みに対する解 決策にはどんなものがあるだろう。やはり何 にせよ、まず優先順位をつけてみてはどうだ ろうか。映画『メメント』('00米)に登場する、 記憶が10分間しか保持できないハンデを抱え た主人公は、"忘れてはいけないこと"を自ら の肌に刺青で刻みつけていた。もの忘れ対策 としてはなかなか過激なこの手段をまんま真 似ることは難しいとしても、それほど優先度 の高い"忘れてはいけないこと"があるのだと 自覚するのには意味があるだろう。一体、そ れこ

          最近とみにもの忘れがひどい、とお悩みのあなたへオススメしたい3冊(2017.09.23「シミルボン」投稿)

          アーマッド・ジャマル死去

           アーマッド・ジャマルの訃報に接して、自分の上っ面なジャズ史知識でお茶を濁すようなことはやっぱり言う気にならないし、それよりはもうちょっとだけ、ジャマルの演奏は私の内側に食い込む形で鳴っていたことに改めて思い至っている。  自分にとってのジャマルはと考えていて、迷った末に選んだのは、やっぱりこのアルバムだった。まだジャズの知識がほとんどなかった大学生の時分、通っていた大学の通学路になっていた高田馬場にあったレコード店「ムトウ」の、半地下みたいな妙な間取りのジャズコーナーで、

          アーマッド・ジャマル死去

          『新世紀 エヴァンゲリオン』最終話について

          今日、このあとTOKYO MXで放映する『新世紀 エヴァンゲリオン』再放送が最終話を迎える。考えてみると、自分にとっての『エヴァ』が「無類に面白い、全部ベットしていいと思えるアニメ」であった期間は、1話を見始めた瞬間から、この最終話を見終るまでの、今にして思えば結構短い間だった。 逆にいうなら、この最終話を見終えてから、『ジ・エンド・オブ・エヴァンゲリオン』を渋谷で観て映画館を出るまでの間というのは、『エヴァ』が「無類に面白い」を超えて、屈託とか、憎悪とか、ほとんど呪いに近

          『新世紀 エヴァンゲリオン』最終話について

          ウェイン・ショーター死去/『Adam's Apple』より〝Footprints〟

           突然のウェイン・ショーター死去の報にふれて、やはり何かを聴きたいという思いにかられた。メッセンジャーズ、マイルスグループ、ウェザー、それらを縫うように存在するソロ……ショーターの遍歴はジャズがエレクトリック化しフュージョンを準備する流れとがっつり重なるものなので、どの時期を選ぶかで「その人にとってのショーター」が浮き上がる。そういう意味ではマイルスと並ぶくらいに「ジャズというジャンル自体みたいな人」だったんだなあと改めて思う。映画『ブルーノート・レコード』は、そんなショータ

          ウェイン・ショーター死去/『Adam's Apple』より〝Footprints〟

          『機動戦士ガンダム 水星の魔女』12話「逃げ出すよりも 進むことを」感想

          『水星の魔女』12話、アバンのプロスペラのつぶやきを聴いたとき、彼女が「母親としての碇ゲンドウ」であることを改めて思う。そしてゲンドウがシンジをエヴァに乗せる方法と、プロスペラがスレッタをエアリアルに乗せる方法の差異は、両者を隔てている時間以上の、大きな意味をもつんだなあって。 内面の世界へ逃げ込むことだけは禁じられた、紛れもない他者がそこにいる複数の物語であることにおいて、『水星の魔女』は『(TV版)エヴァ』的でもあるいは『ウテナ』的でもなく、こういってよければ、やはり紛

          『機動戦士ガンダム 水星の魔女』12話「逃げ出すよりも 進むことを」感想