ニーズ

大勢の前で男が言った。

「独り善がりの情報発信では誰も見てくれません。それは単なる自己満足です。求められているのは役立つ情報です。まずは、相手に " give " することを考えましょう」

その場にいた誰もが大きく頷いた。メモを取る者もいた。

さて、求められているものとは？

ちょっと小綺麗で、それでいてスマートで、1分で理解できるほど分かりやすくて、シンプルに問題を解決してくれて、出来れば、時間も脳みそも使わずに楽に金を稼げて、努力もせずに望みが叶えられて、何でも無料で手に入れられて、有名人と友達になれて、周りから羨ましがられて、簡単に理想の恋人が出来て、ちょっと何か発言すれば周りから賞賛されて、どこからか儲け話が勝手にやってきて、いつの間にか経営者になってて、ジャンジャン金が入ってきて、勝手に豪邸が建ってて、思いつきですぐに海外に逃亡できて、働かなくても、一生困らないほどの金があって・・

会場の一人が手を挙げた。講師が彼を差す。

「はい、質問どうぞ」

「要するに、札束でほっぺたを叩けばいいんですよね」

その質問に、会場は沈黙した。

その日を境にセミナーの参加者は減少していったと言う・・・