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あの人もこの人も?現代精神医学の視点で見る偉人たちと心の病『不安なモンロー、捨てられないウォーホル』

共感必死?心の悩みと有名人

 うつ病、性別違和、ギャンブル障害、不安症などなど、一人一つの割当で歴史上の偉人とセットにして紹介されている本である。
 登場するのはアンディ・ウォーホル、マリリン・モンロー、チャールズ・ダーウィン、フョードル・ドストエフスキー、ダイアナ妃など、十二人だ。
 各人の経歴をまとめつつ、その人の言動の特徴と現代の精神医学から見た症状が語られる。境界性パーソナリティ障害など、とっつきにくい症状を、その該当する人物に合わせて紹介するのでイメージがしやすくなっている。
 教科書的で専門書では読む気がしない、だからと言って簡単すぎて内容が薄い入門書でも物足りないときに手にするといいかも。
 病歴から見た伝記としても面白いかもしれない。そんな一冊だ、うつ病やADHD、過食症などの言葉が日常に溶け込んだ今の時代を反映している。

栄華の裏に涙あり?有名人のお悩み色々

 経済的に成功しながらも潔癖症が過ぎて、生活するにもいちいちマニュアルを作成してそれに則って生活していたハワード・ヒューズ、ものが捨てられなくて自分でもうんざりしていたアンディ・ウォーホル。
 生活環境の違いからくるストレスから過食症になって、自傷もしたことがあるダイアナ妃。一般の主婦からファーストレディになったプレッシャーでアルコール依存症になったベティ・フォード、登場する人たちは誰も彼もが苦労している。
 著名なイメージの裏になんて人間らしい一面があるのだろうと、当たり前のことに感心してしまう。
 今から見れば、そうなのか、という腑に落ちる症例もあれば、それでもやっぱりよく分からないけど大変なんだなって想像するのが難しいケースもある。
 それでも読んでて共通するのは、誰もが必死にそれでも生きていたのだなということだ。
 浮き世離れしたイメージの裏で、皆必死に生きてるのが伝わってきて、対象にいいアプローチをしていると感じた。

偉大さと心の病はセットなの?

 この本に紹介されている意外でも、天才、偉人の病はある意味でステレオタイプだ。ゴッホは統合失調症だったのではないかと言われているし、数学者ジョン・ナッシュもそうだ。
 この本にはうつ病だったであろう、リンカーン大統領も登場する。偉人であるには、何かを成し遂げるには心の病はセットなのだろうか。
 一概には何とも言えないだろうな、というのが本音だ。
 人間が動物である以上、痛覚や不快な感覚からは無縁でいられないのと同じように、心も不快な感情を持たずには生きていられない。
 その複雑さと、だからこそそこから生まれる偉大な業績の数々を知る意味が少し変わる、それが大事なんじゃないかなと思った一冊だった。

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